2020 年 2 月 のアーカイブ

弊社受験生 国公立一貫校の入試結果と進学状況 

2020 年 2 月 25 日 火曜日

 県内の中学入試終了後、弊社には会員受験生家庭から入試結果の報告書が次々に各校舎へ寄せられています。この報告書には進路の選択結果も書いていただいています。すでに一部私学を除きあらかた確認済みですので、もうしばらくすると主要対象校の全てに関して、弊社会員の進路選択状況をご報告できるのではないかと思います。

 今回は、近年人気が高まっている公立一貫校の入試状況と、以前から高い人気を維持している国立の広島大学附属中学校の受験結果と合格者の進路選択の様子をピックアップしてご報告してみようと思います。なお、記載している人数に関しては確定ではありません。参考程度にしていただけたら幸いです。

 まずは、合格状況と進路選択状況をご紹介します。

国・公立一貫校の合格・進路選択の状況  ※数字は人数

学校名 定員 志願者数 弊社合格者数 進学者数
広島大学附属中学校 120 男子   外部563 男子25 38 男子13 22
内部29
女子 外部452 女子13 女子9
内部30
県立広島中学校 160 912 男子10 32 男子8 21
女子22

女子13

 

県立叡智学園中学校 40 285 男子2 4 男子2 3
女子2 女子1
広島市立中等教育学校 120 511 男子6 24 男子1 8
女子18 女子7

 

広島大学附属中学校

 まずは、広島大学附属中学校から見てみましょう。このところ同校の人気は高値安定で、弊社会員の受験対象校の中で合格を得るのが最も難しい学校となっています。特に女子は、外部からの受験生は452名のなかで合格発表数は僅か55名と、非常に高い倍率となっています。

 したがって、弊社の女子会員の合格者は残念ながら13名に留まりました(全員が外部からの受験生)。非常に高いレベルでの競争となっており、1教科でも穴のある受験生は合格できません。これは毎年のことですから、次年度以降もおそらく大きな変動はないと思われます。配点が低いということで理科・社会の軽視は禁物です。附属志望の女子受験生は、どの教科もバランスよくしっかりと学力を整えておきましょう。なお、女子は例年補欠からの繰り上がり合格はほとんどありません。(今年も弊社からはありませんでした)

 女子の弊社合格者13名のうち、9名が附属へ進学し、残る4名は清心に進学する予定です。昨年よりも清心の選択率が上がっていますが、昨年は特別附属の歩留まりがよかった年でした。今年は以前に近い結果になったとみるのが妥当でしょう。

 附属男子のほうですが、こちらは外部からの受験生563名に対し、合格者数は105名と女子の倍近い数の合格者が発表されています。しかしながらそれでも相当な倍率であり、しかもこのところ合格者の歩留まりがよくなっているため、補欠からの繰り上がりは期待できません(今年、弊社からの補欠繰り上がりはありません)。なお、弊社からの合格者25名は全員が外部受験生です。

 弊社の男子会員の場合、広島学院を第一志望にする受験生は附属と重複合格を得た場合、大半が広島学院に進学していました。しかしながら、ここ2~3年徐々に附属の歩留まり率が上がり、今年は半数が附属に進学します(合格者26名全員が広島学院との重複合格者でした)。理由ははっきりとはわかりませんが、経済情勢なども影響しているかもしれません。数が大きくないので、たまたま今年が極端な結果になったとも考えられます。

広島県立広島中学校

 今や県立広島中学校はすっかり人気校の一つとなっています。今年の志願者数は912名で、去年よりも100名以上数を増やしており、「なかなか受からない学校」としての認知を強めています。ただし、弊社会員の場合は女子にやや人気が偏っており、男子は広島学院や修道、附属の人気に追いつくにはまだ当分はかかりそうです。広島市域の受験生で県立広島の受検を予定していたものの、前述の志望校に合格した段階で受検をキャンセルした受験生が相当数見られました。欠席者を除くと、受検者は男子が30名前後、女子が60数名でした。

 弊社の場合、地元東広島市の受験生にとって最大の人気校になっており、4~5年生の時点での調査では、8割以上が第一志望校にしています。特に女子には人気が高く、東広島市のみならず、海田、矢野、瀬野など、JR沿線に住まいのある女子受験生は第一志望校にしているケースがかなり見られます。

 合格者の地域的な特徴をみると、男子の合格者10名のうち、8名が地元東広島の受験生でした。あと2名は広島校の受験生でした。いっぽうの女子は様相が異なります。弊社の全ての校舎から合格者が出ていました。いちばん多かったのは広島校の7名、地元東広島校から6名、呉校から4名、己斐校から3名、五日市校から1名といった具合です。

 冒頭で、「男子の人気はまだまだ」といったことを書きましたが、それでも男子の歩留まり率は徐々に高まっており、今後この傾向は強まるかもしれません。特に同校は高校からの大学進学状況に目をみはるものがあり、そういった実績が吸引力増強の要因になる可能性は高いと思われます。

県立叡智学園中学校

 全寮制の公立一貫校という新しいコンセプトで昨年開校し、全国的な注目を集めた県立広島叡智学園中学校ですが、今年は応募者の数が落ち着き、初年度よりは少なくなっています。弊社会員の合格者は男女とも2名ずつの合計4名で、昨年の8名よりも数は減っています。

 同校の選抜内容は独特で、1次試験(面接中心)で定員の約倍の数に絞り、2次試験(グループワークなど)で定員ぴったりに合格者が発表されます。2次試験は都合3日かかるため、全寮制と相まって、特別同校に興味がある受験生に応募が限られる傾向は今後も続くのではないかと思われます。また、高校からの入学者が卒業する段階になり、大学への進学状況などの情報が入ってくると、同校への評価も定まってくると思われます。弊社会員については、まだ進学ターゲット校になるまでのポピュラリティを獲得していないというのが現状でしょう。

広島市立広島中等教育学校

 こちらもまだ歴史の浅い公立一貫校ですが、高校からの募集をしない中等教育学校であるという点が大きな特色です。このところ応募者は500名前後を推移しており、定員120名ということを考えると、決して入り易い学校ではありません。また、共学志向の受験生にはその点も魅力でしょう。

 弊社からの受検者の特徴は、県立広島と同様に女子に人気が偏っているということでしょうか。女子は男子の約2.5倍の応募者がおり、合格者も男子が6名に対し、女子が18名と女子のほうに偏っています(弊社からは男女合わせて40数名が受検した模様です)。男子の応募者が少ないのは、市内中心部や南部の人気私学にも通える受験生が多いため、そちらを選ぶ傾向が強いからでしょう。いっぽう、女子受験生には「公立一貫校」「共学」というのが魅力で、それが吸引力となっているものと思われます。清心や広島女学院と重複合格している受験生が、同校を進路に選んでいるケースが見受けられます。

 同校は、広島市北部にあるため、安佐北区、安佐南区に在住の受験生が中心となっており、交通の便という問題もあってか遠方からの受検者は多くありません。しかしながら、それでいて500名強の応募者を集めているということは注目に値します。おそらく、同校の近隣地区在住の教育熱心な家庭のお子さんが、「市立広島に行きたい」と、同校に的を絞って受検しているケースが多々あるのではないかと思われます。ただし、選抜のための適性検査の内容をみると、読解力、思考力、分析力、判断力、表現力などが、ある程度バランスよく備わっている必要があります。同校進学に興味をもっておられるご家庭におかれては、しっかりとした基礎学力を身につけるとともに、適性検査への対策も手抜かりのないようにしておく必要があるでしょう。


<弊社の公立一貫校進学対策>

 既にご存知かと思いますが、公立の6か年一貫校では私立や国立の中学校入試の学力検査とは異なり、「適性検査」という呼称の入学者選抜が行われています。これらの中学校のホームページを閲覧されると、どんな課題が出されるのかお確かめいただけるでしょう。

 公立一貫校の適性検査は、教科ごとに行われる学力試験とは明らかに異なります。しかしながら、一定レベルの学力がないと対応できません。そこで弊社では、国・私立一貫校進学希望者も、公立一貫校進学希望者も、「まずは確かな基礎学力を」という考えに基づいて、6年生の春までは基礎学力強化のための指導を行っています。

 公立一貫校対策の指導は、希望者を対象に夏休みからインターバルを置きながら受検直前まで行っています。「期間の短い簡便な対策で受かるなら、そのほうがありがたい」というお考えの保護者もおありかもしれません。しかし、どういう形態の中学・高校へ進学しても、6年間で学ぶべきことは同じであり、さらに大学受験では条件は一緒です。そのことを見通すと、「児童期に身につけた基礎学力」の違いは、後々の学力形成に大きな影響を及ぼすのは間違いありません。中学・高校・大学で学力を伸ばせるかどうかは、児童期に培った基礎が土台となるのです。

 以上のことをご理解いただき、先々公立一貫校への進学を検討しておられるご家庭におかれても、ぜひ弊社の教室に通学していただきたく存じます。よろしくお願いいたします。

お詫び:当初広島大学附属中の合格者を26名としていましたが、確認作業のミスが判明し、25名と改めました。また、本文中に男子の補欠繰上り者が1名と記載しましたが、0名の誤りでした。申し訳ありません。

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カテゴリー: お知らせ, 中学受験

中学受験を生涯続く親子関係の記念碑に!

2020 年 2 月 17 日 月曜日

 今回の記事の表題に「えっ?」と思われたかもしれません。これは、保護者に中学受験を「志望校への進学のため」とは別の側面から考えていただく機会になればと思って掲げたものです。早速話を進めてまいりたいところですが、低学年児童をおもちの保護者にぜひ参加いただきたい催しがありますので、その案内をまずはさせてください。

 直前になってしまいましたが、2月21日(金)に弊社が導入している「玉井式国語的算数教室」の創始者である、玉井満代先生の教育講演会を開催します。詳しい案内は本HPに載せていますので、ご確認いただき、興味をおもちいただいたならぜひお越しください。

 玉井先生は50代後半の女性ですが、次々と子ども向けの画期的な学習教材を提案され、民間教育に新たな息吹を吹き込んでおられるスーパーレディです。そして、仕事に追われる日々を過ごしながらも二人の娘さんを立派に育て上げられた、すばらしい子育て名人でもあります。そのうえ、外国の社会情勢や教育の現状についても通暁されており、現在お子さんの子育てにあたっておられる保護者の方々によき指針を提供してくださると思います。

 子どもをもつ親は、どなたもわが子の将来に大きな期待を寄せておられるでしょう。ただし、子育てのどういうところに重きを置いたらよいのか、わが子に対してどう接したらよいのかについて、確たる信念をおもちのかたは少ないのではないでしょうか。特に近年はグローバリゼーションの進展により、伝統的な日本の子育てを継承するだけでなく、「世界の新しい趨勢に対応していける人間に育てる」という視点も求められつつあります。

 子育ては、親という生身の人間が、わが子という生身の人間と毎日生活を共にしながら営む行為であり、しかも一日たりとも休むことが許されません。互いの距離があまりに近いために、親は感情抜きにわが子に接することは難しく、さらには子どもの側には甘えや我儘がつきもので、親子間の葛藤のない子育てなどあり得ないのが現実でしょう。成長途上の子どもは日に日に変わります。「昨日のわが子は今日のわが子とは違っている」――そういう驚きや戸惑いを感じた保護者も多数おられるのではないでしょうか。

 そんな保護者の方々、特におかあさんがたに、子育てにまつわる確かな指針を提供し、「わが子を立派に育てよう!」という元気を吹き込んでくれる存在。それは、探してもなかなか見当たらないものです。玉井先生は、そうしたニーズに応えてくださる貴重な人物です。今回の講演会では、グローバル社会の到来をふまえ、「これからの子育てはどうあるべきか」という視点から、様々な情報や指針を提供してくださいます。ぜひ参加してみてください。

 中学受験は、家族全員を巻き込む一大イベントであり、親の協力やサポートは成功に向けて不可欠と言えるほど大きな作用を果たします。それだけに苦労や心配も並大抵のことではありません。また受験生はまだ子育ての終わっていない成長途上の小学生です。だからこそ、親が受験勉強をどう位置づけるか、わが子にどう関わるかが受験の結果だけでなく、子どもの成長にまつわる様々な面に影響を及ぼします。

 そのことを視野に入れるなら、中学受験を「わが子の成長を引き出す場にする」という発想からとらえ直すことも、大いに必要なことではないでしょうか。また、受験生の子どもの側に立ってみると、中学受験の思い出が「苦しく辛いばかりの毎日だった」「親にいつも叱咤激励されて嫌だった」というネガティブなものになるか、「充実感のある楽しいものだった」「親はどんなときもあきらめず、温かく見守ってくれた」というポジティブなものになるかで、学問に向き合う姿勢や家族との信頼関係、ひいては人生の歩みも随分違ったものになることでしょう。

 テンプル大学(アメリカ)の心理学教授であるローレンス・スタインバーグ氏は、「人間のほとんどは人生のどの時期よりも青少年期(10~25歳)のことをよく覚えている」と著書で述べておられます。この現象は多くの心理学者が認めていること(「レミニセンス・バンプ」と呼ばれています)です。なぜこのような現象が生じるのかですが、記憶力がこの年齢期に強いからではありません。スタインバーグ教授が紹介しておられた一般的仮説は次の三つです。

1.青少年期のことを他の時期よりも頻繁に思い出すのは、他の時期よりも
  初めてのできごとが多いからである。
2.青少年期に起きる典型的なできごとは、たいていより重要で感動するも
  のだからである。
3.青少年期は人間が初めて一貫したアイデンティティ感覚をもつようにな
  る時期で、この年頃に起きた出来事を自分とは何者かを定義するために
  使う傾向があるからだ。

 氏は、「これらはどれもつじつまが合っているように感じるが、どれも誤りだ」と述べておられます。研究者の調査においても、やはり確たる根拠はないという結果が導き出されています。インパクトのある珍しい体験はどの年代の人間でもよく覚えているものです。青少年期に限ったことではありません。では、青少年期のできごとがありふれたことでさえ多く記憶に残されるのはどうしてでしょうか。これについて、氏は次のように述べておられます。

 (前 略)人が青少年期の出来事をそれほど思い出しやすいのは、環境に対する脳の感受性が増幅されているために、経験をより深く、より細かく、そしてよりしっかりと符号化するからだ。青少年期が、非常にたくさんの自分史やフィクションで取り上げられ、第2の誕生期として盛んに描かれてきたのは偶然ではない。小説家や、劇作家や、哲学者や、大人になる年齢をテーマにした回想録の作者は、この時期の神経生物学的な背景は意識していなかったかもしれないが、青少年期が人格形成にいかに重要かということを言いたかったのは確かだろう。

 最近まで神経学者たちは、発達可塑性はおもに早い年齢の特徴だと信じていた。脳がこの段階で急速に発達するのはわかっていたし、この時期に視覚など多くの基本的な能力が増進し、言語能力などが出現し、粗大運動機能などが強化されるのだから、そう思うのも無理はない。人間の脳はこの時期に、他のどんな時期よりも多くの部分が「形成」されるのだ。

 (中 略)今では、青少年期も同じくらい驚異的な脳の再構築と可塑性が生じる時期だとわかっている。この発見は、若者たちをいかに育て、教育し、扱うかにまで関わってくるので極めて重要だ。もし青少年期の脳が経験に対して特に敏感であるなら、大人たちは、この時期に若者に与える経験について、特別に心を配り注意を傾けなければならない。

 長い文章を少し強引にカットしたので、わかりにくい面もあったかと思います。しかし、青少年期は幼児期までの年齢に匹敵するくらい人格形成において重要な時期だということはおわかりいただけたのではないかと思います。

 ただでさえ、大きなエネルギー投入を余儀なくされる中学受験ですから、そのプロセスにおける様々なできごとの記憶は、脳に刻み付けられて年を取っても忘れ去られることはないでしょう。しかし、それに加えて青少年期の経験は人格形成においても大きな関与をするのです。そのことに思いを致すなら、「中学受験をめざした学びの生活を、わが子の人間としての成長につなげていこう」という発想から、受験生活を見守り応援することは大いに意義があると思います。

 なによりも、中学受験後も長く続く親子の関係をより信頼に満ちた望ましいものにすることができるでしょう。筆者自身、息子が社会人になった現在になって、中学受験生時代のことを思い出すたびに、思うに任せない息子の勉強ぶりに癇癪を起さず接したことを、「あれでよかった」とつくづく思います(男の一人っ子だったせいか、考えや行動が成熟するのに時間がかかったのだと思います)。

 お子さんの中学受験を、永遠の親子関係の構築に向けた記念碑にしませんか? それをめざした中学受験はよい結果をもたらすだけでなく、お子さんにとって貴重な原体験として脳に宿り、人生の様々な局面において大きな力になることでしょう。家族の方々にとっても共有すべきよい思い出となり、全員に幸福な人生をももたらせてくれるだろうと確信します。

※引用部分は、「15歳はなぜ言うことを聞かないのか」ローレンス・スタインバーグ/著(日経BP社)によります。

 

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カテゴリー: お知らせ, ジュニアスクール, 玉井式, 行事のお知らせ

受験生活のスタートに向けて ~よい習慣づくりから道は開ける!~

2020 年 2 月 10 日 月曜日

 中学入試の余韻が残るなか、次年度講座の開講日が近づいています。とは言え、通学生の募集活動はまだまだ続きます。これから学習塾選びをされるご家庭もおありでしょう。弊社の各校においては「入会ガイダンス」という呼称の入塾説明会を繰り返し実施しています(開催日程は当HPにご案内しています)。この催しにぜひ足を運んでいただき、どんな学習塾かをお確かめいただければ幸いです。

 弊社の高学年部門(小学4~6年生対象)の新年度講座は、いずれの学年も2月29日(土)に開講する予定です。新年度性の募集は昨年11月から行っていますので、すでに入会済みで開講に向けて待機しておられるご家庭も多数おありでしょう。そこで今回は、受験を成功へと導くうえで最も基本となる保護者の役割についてお伝えしようと思います。

 弊社が保護者にまずもってお伝えしたい役割は、学習の「習慣づけ」に関わるサポートです。4~5年生には、勉強の内容に関わるサポートもある程度求められますが、それよりも遥かに受験の結果や将来の歩みに影響するのが、「学習習慣」を定着させるための保護者の働きかけです。というのも、学力は“継続”と“積み重ね”の産物であり、いくら資質に恵まれていても、長い期間にわたる学習を絶やすことなく行っていかないと、宝の持ち腐れに終わってしまいかねません。望ましい「学習習慣」は、自己の才能を開花できるかどうかを決定づけるきわめて大きな作用を果たします。

 習慣がいかに重要かを物語る例が、ある書物に紹介されていました。ご紹介しておきましょう。

 ある成績優秀な高校生が、俗にいう一流の大学に合格した。両親の学歴は低く、生活はといえば青果物を扱う店で多忙な生活を送っていた。したがって、子どもの勉強に気を配るゆとりはなかった。しかし、子どもが幼稚園や小学校から帰ってくると必ず実行させることがあった。その一つは、母親が子どもと向かい合って座り、子どもの話を聞くことであった。

 二つ目は、必ず机の前に座らせることで、それは10分から30分そして1時間と伸ばしていった。それが終わると子どもはおやつを食べ、遊びに行くことになる。親がしたことといえば、これだけの話である。しかし、これは含蓄のある話であり、そこに教育的・神経科学的な意義を見出すことができる。

 これを読みになったかたのなかには、「教育的・神経科学的な意義ってどういうことなの?」という関心をもたれたかたが少なくないと思います。その部分を引用すると少し長くなりますので、手短にご説明していきましょう(以下の太字部分はそのまま引用した箇所です)。

 まず教育的意義ですが、「両親は、教えることはしなかったが、自主的に学ぶ態度を育てた」ということです。長い期間にわたって繰り返したしつけの効果に他なりません。「こうした幼い頃の他律的なしつけは、やがてこれが内面化され自律的な行為に転化していく。事実、子どもは学校から帰ってくると、自律的に一度は机の前に座らなければ気がすまないようになった」のです。習慣として学習が定着すると、これが長期にわたる積み重ね効果を引き出してくれるのですね。

 もう一つの神経科学的な効果とはどういうものでしょうか。幼児や小学生までの子どもは、まだ自己の価値観を確立するまでには至っていません。勉強についても、まだどうすべきかを自分で判断し実行に移すのは難しいといえます。そこで、大人が導いて毎日机に向かう行為を反復させるわけですが、それが「子どもにある価値の神経回路をリセットする」ことになります。つまり、机が目に入ると自然に勉強に対する神経回路が呼び出され、リセットされるようになります。「こうした回路のリセットとは、少ない心的エネルギーを使い、努力という言葉が不要になることである」と著者は述べておられます。

 以上を簡単にまとめてみましょう。大人がうまく導いて学習の習慣化を図れば、

という効果が引き出せるのですね。

 「勉強は苦痛で億劫なもの」「勉強は辛く大変なもの」という観念が消えてなくなるわけですから、長い目で見ると大変な違いがもたらされるのは間違いありません。

 以上のことは、中学受験をめざして勉強している児童にも大いに当てはまります。毎日の家庭学習を習慣づけることに成功すると、長い受験生活が苦痛に満ちたいばらの道にならずに済みます。親はイライラを募らせたり、無用な手出しをしたりする必要がなくなります。これがどんなにうれしく安心なことかは、実際に受験生活が始まってみるとよくおわかりになることでしょう。

 2月29日(土)には開講式(オリエンテーション)が行われます。そのときに、これから使用するテキストや副教材のほか、「学習計画表」を配布します。学習計画の作成にあたっては、添付する見本を参考にして、それぞれのお宅の生活サイクルにあった計画を作成してください。新4~5年生であれば、スポーツや習い事もおありかもしれませんね。そういったスケジュールも加味し、親子で相談しながら計画を立ててください。

 学習を習慣づけることで、自立した学びの生活が実現する。毎日の勉強が負担でなくなる。この流れを想定するわけですから、くれぐれも親が一方的に命令して学習計画を立てることがないようお願いしたいですね。また、初めから全開状態での勉強を塾から要求されることはありませんから、無理のない計画を作成することが大切です。

 弊社においても、開講当初は「学びかたの指導」や「受験生活に慣れるための指導」に重点を置き、勉強が負担にならないよう配慮しています。開講してしばらくは、勉強にとりかかる時間になったらお子さんの様子を見守り、遅れがちであったら「あっ、時間になったね」などと声をかけるとよいかもしれません。共働きの家庭であれば、予め取り組んだノートを親が確認する約束をしておき、1日の終わりにあたって目を通したうえでシールやスタンプなどでちゃんとやった印を残してやるなどのフォローをするとよいでしょう。

 なお4年生については、お子さんが取り組んだ問題の〇つけをお願いしていますので、保護者によるノートチェックは必須です。まだ親の承認や激励が意欲につながる年齢ですから、お子さんが励みを得て前向きに取り組むよう上手にサポートしていただくようお願いいたします。

 受験生活が、自律へと成長していくプロセスをたどるか、受け身の姿勢が染みついて親がいつもバックアップさせられることになるか。これによって、受験の結果のみならず中学進学後の歩みに大きな違いがもたらされます。今なら受験生活の出発点ですから、焦ることなく流れを築くことができるでしょう。

 勉強は楽なものではありません。お子さんがやりたがらないときもあるでしょう。しかし、だからといって子どもに無理矢理やらせる姿勢で臨むと、勉強はますます辛いものになっていきます。いっぽう、「やるのが当たり前」にもって行けたなら、辛いものではなく、やらずにはいられなくなっていきます。また、習慣づけることでしだいに勉強の面白さや醍醐味もわかってくるものです。どちらに傾くかで、子どもの勉強に対する価値観は全く正反対になっていくことでしょう。親はどちらをわが子に望み、どうサポートするべきか。それはもはや言わずもがなでしょう。

 お子さんが勉強から得られる手応えを味わいつつ、充実した受験生活を送られますことを心より念じています。どうぞよろしくお願いいたします。

※今回の記事の引用部分は、「脳力を伸ばす学び方」(高井高盛/著 ちくま新書)によります。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 家庭学習研究社の特徴

家庭学の「体験授業会」にぜひ!! <小1~小5対象>

2020 年 2 月 3 日 月曜日

 2月を迎え、すでに大半の中学校の入試合格者が判明しています。弊社の会員受験生の合格状況は先週土曜日(2月1日)に当HPで公表したほか、同日に開催された各校舎の「入会ガイダンス」(入会説明会)においても保護者にお伝えしていますので、すでに確認しておられるかたもおありでしょう。

 弊社の主要ターゲット校の合格状況について見てみますと、男子校の広島学院、修道の合格者数は若干増えているいっぽうで、女子校のノートルダム清心、広島女学院はやや減っています。と言っても特筆するほどの大きな変化はなく、総じていえば例年並みだったと言えるでしょう。その理由としては、主要中学校の応募者数がこのところ横ばい傾向を推移していること、入試の制度に大きな変更がなかったこと、弊社の男女会員数もほぼ昨年並みであったことなどによるものだと思われます。

 2月3日現在確認済みの合格状況は以下の通りです。

 広島学院65名、修道144名、広島城北145名、ノートルダム清心74名、広島女学院137名、安田女子101名、広島なぎさ133名(男子84名、女子49名)、広島大学附属39名(男子26名、女子13名) ※県立広島の合格状況は、現在確認集計中です。

 城北の合格者の増加(昨年112名)は、同校への弊社受験者が昨年より多かったためと思われます。増えたのは同校の近隣に在住の受験生ではなく、市の西部や呉など遠方の受験生でした。おそらく今年の入試日程が作用したのでしょう。なぎさの男子合格者が増えているのは、同校のおひざ元にある弊社五日市校からの男子受験生が、例年よりもだいぶ多かったことによるものです。安田女子の合格者が昨年よりも多い(昨年74名)のは、城北と同様に今年の弊社からの受験生が増加したためであろうと思います(入試方法の変更によるものかもしれません)。増えたのは、主に三篠校、己斐校、広島校など同校の近隣地区の受験生でした。

 なお、合格者の最終的な進路選択状況については、今後進路報告書の提出が終了した後にお伝えする予定です。また、受験の動向で来年以降の受験生の参考になりそうな情報があればご報告しようと思います。

 さて、そろそろ今回の記事の本題に移ろうと思います。弊社は例年新年度の講座の開講前に、「家庭学がどんな塾なのか、どんな指導をしているのか」ということを知っていただくために、1月末~2月にかけて各校舎で「体験授業会」を実施しています。文字通り、弊社の授業を体験していただく催しです。そのおおよその内容と日程は以下の通りです(すでに開催済みの校舎・学年もあります。ご了承ください)。

① 玉井式国語的算数教室「体験授業会」のご案内 《新小1~小3対象》

 弊社の小学校低学年部門には、オリジナル講座の「ジュニアスクール」と、外部より導入している「玉井式国語的算数教室」があります。前者の「体験授業会」はあらかた終了しています(己斐校のみ未開催(2月8日)で、これから予約されれば参加可能です)。そこで今回は、玉井式の「体験授業会」についてご案内させていただきます。

 ご存知のように、算数には感覚的な素養、いわゆる「閃き」や「センス」がものを言う単元があります。こうした方面の才能に恵まれた子どもは、目を輝かせて算数・数学の学習に取り組みます。できるなら、そんな子どもにしたいものですね。玉井式国語的算数教室は、こうした領域の才能がどのように芽吹き、花開くのかを研究し、そこに的を絞ったプログラムを開発して成功し、注目を集めています。

 たとえば、図形の識別や空間把握、展開図、速さなどの単元で求められる素養は、幼児期から9歳前後までの遊びや学習の体験を通して磨かれるものです(あたかも生まれつきの才能のように思われがちですが)。玉井式では、子どもたちを惹きつける魅力的なアニメーションを生かした独特な指導法で、この領域の才能開発に貢献しています。

 また、講座名に「国語的」という表現があるように、国語の要素も取り込んでいるユニークな講座です。算数の長文課題を通して読みの習熟に貢献しています。その手法ですが、アニメーションで楽しんだ物語の続きを長文課題にすることで、子どもの読もうという意欲や、著述場面のイメージ想起を促す効果を引き出しています(文章読解は、文字で描かれた場面をイメージすることでもあります)。

 アニメーションと算数・国語学習の融合。このユニークで斬新な手法を用いた玉井式の授業をお子さんに体験させてみませんか?楽しいこと請け合いです。保護者には、玉井式の内容を簡単にご説明したうえで、授業の様子を参観いただきます。お子さんの集中する様子をぜひご覧ください。なお、この催しは己斐校と五日市校では実施しません。これらの校区にお住まいで、本催しに興味をおもちいただいたかたは、誠に申し訳ありませんが三篠校もしくは広島校の体験授業会にお申し込みください。

② 「冬の体験授業会」のご案内 《新小4~小5対象》

 弊社の中学受験指導の特色は、「授業」と「家庭学習」を組み合わせることで、子どもたちが自立した勉強の方法を獲得しながら志望校への進学の夢を果たせるよう導いていることです。家庭での一人勉強は、小学生にとっては難しいと思われがちですが、学びのスタイルを繰り返し指導し浸透させていけば、強固な姿勢として定着し、一生モノの財産にすることができます。

 そのための指導の軸となるのが「授業」です。どういうことかというと、弊社の授業は単元ごとの基本となる考えかたを子どもたちに教え、家庭学習でそれを深めていく(専用テキストで自学自習をする)ことを繰り返していきます。

 したがって、毎回の授業は演習形式(問題を解いて、解法説明をする)でなく、単元を代表する基本課題をもとに、子どもたちの興味・関心を引き出すことから授業を始め、一緒に考え、解き明かしていくプロセスの楽しさを全員に味わわせるよう導いていきます。この形式をくり返すことで、授業を大切にし、家庭学習で理解を深めていく姿勢が培われていきます。「全ては例題が基本となる」ということを学び、躓いたらそこから学び直す。それが個々の学びの基本形となります。中学校進学後も同じ勉強法で学力を大いに伸ばすことができるでしょう。

 子どもは未知のことを知るのが大好きです。中学受験の課題には、どの教科にも子どもの好奇心を駆り立てる要素がたくさんあります。それをうまく生かせば、授業は大変盛り上がります。みんなで一緒に考え、突破口を見出すプロセスは楽しいものです。このような授業は、高いレベルの学びを志向する小学生の頭脳の育成に貢献するし、学問に飽きることのない人間を育んでくれます。そのことの価値は、年齢が上がるほどにわかってくるものですが、大人になってからでは時間を巻き戻すことはできません。受験勉強には時間も労力もかかりますが、だからこそ身につけたものは一生失われません。

 弊社の「授業」をお子さんに体験させてみませんか? みんなで学ぶ場が楽しくなる。勉強の面白さがわかるようになる。一度の授業体験でそこまで漕ぎつけることは難しいですが、その一端は味わってもらえると思います。家庭学習研究社に通って受験勉強をする。そのことをお子さんが受け入れてくださるためのきっかけにもなるでしょう。

 この催しは全校舎で実施します。無料ですので、最寄りの校舎でぜひ授業を体験してみてください。

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カテゴリー: お知らせ, ジュニアスクール, 中学受験, 小学1~3年生向け, 行事のお知らせ