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2年生の今月の本


ちいさなおはなしやさんのおはなし タイトル ちいさなおはなしやさんのおはなし
著者 竹下 文子(作)こがしわ かおり(絵)
出版社 小峰書店
 

 あるところに、ちいさなおはなしやさんが、ちいさなねこと すんでいました。ちいさなみせに、ちいさなかんばんを だして、ちいさなおはなしを うって くらしていました。
 おはなしやさんの いえのうらには、ふるいおはなしのきが いっぽんありました。おはなしのみは、とてもかたくて すっぱくて、そのままたべても おいしくはありません。おはなしやさんは、みをきれいにあらって、おなべにいれて、おさとうをいれて、ことことにます。
  ピップル パップル しゃっくり とっくり おいしい おはなしに なあれ
おまじないのことばを かけながら、しゃもじでかきまぜると、とろりとやわらかく おいしくなるのです。ねこは? ねこは なんにもてつだいません。そばでみていて、ごろごろ、のどを ならしているだけです。
 そうして できあがった おはなしやさんのおはなしは、どんなおはなしかって? それはね、かったひとが、いえに もってかえってからの おたのしみ。なにしろ、ちいさなおはなしやさんの おはなしは、つくるたびに、ぜんぶ ちがうのです。おはなしのびんの ふたを ぽんとあけると、ふわあん……なんて いいにおいなんでしょう。スプーンで ひとさじすくって、くちにいれ、そっと めをつぶると……ほうら! あまずっぱい くだもののあじといっしょに、うっとりするような きれいなおはなしや、くすくす わらいたくなるような ゆかいなおはなしや、どきどきするような ふしぎなおはなしが、みんなの くちのなか いっぱいに ひろがっていくのです。だから、ちいさなおはなしやさんの おはなしは、むらの人たちに とても にんきがあって、いつも、つくった そのひのうちに、うりきれてしまうのでした。

●とろりとあまくて、口に入れるとお話が広がっていくなんて、おはなしやさんのお話がどんなおいしさなのか、ぜひ味わってみたいものです。さて、ある年の秋のこと、ひどい雨がふって、「ふるいおはなしのき」がぽっきりと折れてしまいました。困りました! お話の実がないと、お話を作ることはできません。

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