三年二組の教室で、さいごの係が決まりました。「じゃあ、坂島さんは落とし物係だな」みゆは がっかりしました。ほんとうは 小さい先生係とか、生き物係とかの もっと楽しそうな係になりたかったな、とみゆは思います。
　落とし物係は、教室に落ちている落とし物を落し物ボックスに入れて、帰りの会で「これは だれのですか」とみんなに聞きます。落とし物が たくさんあると、何回も聞かなくてはいけないので、みゆは うんざりします。
　ある日の休み時間、みゆは凛ちゃんに、「係って、すきなことじゃないと つまらないよね」といいました。でも、凛ちゃんは、「けいじ係は楽しくなってきたよ」といって、にっこりわらいました。「けいじ係って、ドラマに出てくる けいじさんみたいで かっこいいじゃん」凛ちゃんは、指でけんじゅうの形を作って、うつまねをすると、教室の後ろの、画びょうが はずれたポスターに、さっと画びょうを さしなおしました。凛ちゃんの、すばやい動きが かっこよくて、みゆは思わず、「おおー」と感心しました。「わたしの落とし物係も、そんなふうに かっこよく ならないかな」みゆが いうと、凛ちゃんは こういいました。「なれるよ。みゆちゃんは落とし物をさがす、『名たんてい』になればいいんだよ」「そっか、名たんていかぁ」みゆは、虫めがねで手がかりをさがす、名たんていを想像して、ちょっと楽しくなりました。