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3年生の今月の本


ネコのタクシー タイトル ネコのタクシー
著者 南部 和也
出版社 福音館書店
 

 トムは、のらねこでした。(だれかぼくのことを飼ってくれる人がいたらいいのに)トムはいつもそう思っていました。トムの特技は、だれよりも速く、遠くまでつかれないで走ることでした。だから、トムはこの特技を見せて、だれかに飼ってもらおうと考えました。でも、足の速いネコなんて、だれが飼いたいと思うでしょうか。
「ぼくを飼いませんか。足の速いネコですよ」
 トムが話しかけても、だれも答えてはくれませんでした。

  ある日、トムはランスさんの家の前を通りかかりました。ランスさんはタクシーの運転手さんです。
「ぼくを飼ってみようとは思いませんか? きっと役に立ちますよ」
 トムは、ランスさんに話しかけました。
「わしは、一人暮らしが好きなんだ。相棒は、このタクシーで十分だよ」
とランスさんは答えました。

 トムは、自分のことを飼いたい人なんてだれもいないんだ、と思うと、とても悲しくなりました。トムの悲しそうな顔を見たランスさんは、思わず声をかけました。その日から、トムとランスさんの生活が始まったのです。

  ある朝のことです。
「いたたたた」
 ランスさんのさけび声が聞こえました。階段の下で、ランスさんがたおれています。足をふみはずして階段から落ちてしまったのです。
 夕方、足にギブスをつけたランスさんが帰ってきました。
「トム。足の骨がおれてしまったよ。これじゃ運転はできない。こまったぞ、お金がなくなってしまう」
 それを聞いたトムは言いました。
「ぼくが、ランスさんのかわりに、タクシーを運転するよ!」

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