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4年生の今月の本


七草小屋のふしぎなわすれもの タイトル 七草小屋のふしぎなわすれもの
著者 島村 木綿子
出版社 国土社
 

 標高二千メートルをこす山々がつらなる白貝山地の中にある七草ケ岳に冬が近づいてきました。七草ケ岳の中腹には七草小屋という登山客を泊めたり、コーヒーなどを出したりする山小屋がありました。

 草介は、大学を卒業して、今年の四月からこの七草小屋でアルバイトをしていました。

 夏の間は、たくさんの登山客の相手をするため、ベテラン小屋番の町田さんといっしょに働いていましたが、冬の間はお客も少なく、町田さんも病院に通わなくてはならないため草介はひとりで七草小屋の小屋番をすることになりました。

 ある日の朝、
“ジルルルルルルルルル”
と、けたたましい音が小屋にひびきわたりました。びっくりした草介が音の発信源をさぐりあてると、その音は、小屋を利用したお客さんたちの、わすれものが入っている箱からなっていました。箱の中には小さな緑色の目覚まし時計が入っていました。それが音の主でした。

 草介が時計のスイッチをおしこむと、音はぴたりととまりました。でも、草介は時計をみて首をかしげました。

「あれ? この時計……、動いてないぞ」

 何年もわすれもの箱に入っていたのですから、とまっている方がふつうです。いったいどんなはずみで時計がなったのでしょうか。草介はいぶかりながらも、山小屋の仕事にもどりました。

 次の日の朝、ずんぐりとした体つきの男性が七草小屋にやってきました。手ぶらでなんの荷物も持たないのに小屋に泊めてほしいというのです。いくら小屋に泊まるといっても、手ぶらで七草ケ岳に登るなんて登山客として考えられないことでした。ひとりで小屋番をまかされたそうそう、おかしな客がきたものです。

 今日の泊り客はこの佐藤さんというおかしな男性だけでした。

 佐藤さんは夕食をとてもおいしそうに食べてくれました。あんがい、いい人かもしれないと草介は思いました。夕食後、佐藤さんは七草小屋のバンダナを買い、草介と七草ケ岳の自然の話をひとしきりしました。

 その話が終わった後、佐藤さんは昨日の音のもとになったもののことを草介にたずねてきました。そして、それが目覚まし時計だと知るとしきりにそれを欲しがったのです。

【 七草小屋のふしぎなわすれものと山にまつわる心温まるお話が六つ載っている短編集です。続編に「七草小屋のふしぎな写真集」があります。】

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