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5年生の今月の本


キツネ山の夏休み タイトル キツネ山の夏休み
著者 富安 陽子
出版社 あかね書房
 

 ひさしは夏休みの間、稲荷山のおばあちゃんのところですごすことになりました。稲荷山へ行くのは四年ぶりです。ひとりでいなかへ行く電車を待っていると、ひさしに話しかけてきた女の人がいました。稲荷山の近くに住む妹に、手紙をわたしてほしいと言うのです。
「それなら速達で出せばいいのに」
というひさしに、女の人は何だかんだと理由をつけて手紙をおしつけ、消えてしまいました。

 電車にのったひさしは、変な男の子に気がつきました。よれよれのランニングシャツ、するどくとがったあご、細い目……。

 男の子はひさしに話しかけてきました。
「おまえ、どこ行くんだ?」
「稲荷山」
「なにしに行くんだ?」
「おばあちゃんちに行くんだよ」
「おまえのおばあちゃんて……ひょっとして、お松ちゃんのことか?」

――たしかにひさしのおばあちゃんは松子という名前です。でもどうしてこの子が、おばあちゃんのことを「お松ちゃん」なんてよぶのでしょう。
「おれは、オキ丸。そのうち遊ぼうな」

 そう言って男の子は、目を大きく見開きました。金色の目でした。そして、床にうつるその影法師は、人間というよりキツネみたいでした。

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