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5年生の今月の本


長い長いお医者さんの話 タイトル 長い長いお医者さんの話
著者 カレル・チャペック
出版社 岩波書店
 

 “おとぎ話”の主人公になるような人たちって、どこかの国の王さまだとか王子様、魔法使いや妖精だけだって思っている人、多くない? でも、この物語に出てくる人たちは、ふつうの町で働くふつうの郵便屋さんだったり、マジメな警官(けいかん)だったりするんだ。 そんな彼らが、いったい全体どうして物語の主人公になれるのかって?それでは、「郵便屋さんの話」についてちょっとだけお話しよう。

 郵便局はみんながよく知っている場所のように思うかもしれないけど、じつは魔法のお城と同じくらいふしぎなところなんだ。

 でも、あの部屋の中で、本当はどんなことが起こっているのか知っている人はいなかった。配達屋のコルババさん以外は。

「じぶんのしごとに少々いやきがさしていた」コルババさんは、ある日すっかり元気をなくしたまま、郵便局のストーブの前で眠りこんでしまった。

 真夜中ちかくになって、ネズミが走るような物音に目をさました彼は、見てしまう。「郵便局の妖精」を……。妖精は、ハツカネズミくらいの大きさで、アゴに真っ白いひげをふさふさと生やしている。それでいて何というか、とってもかわいらしいんだ。

  コルババさんはかたずを飲んで小人たちの様子を見守った。

 ひとりの小人は、あすの朝コルババさんが配達するはずになっていた手紙の束をひっぱりだすと、やがて一枚一枚、たんねんにしらべはじめました。そうかと思うと、もうひとりの小人は、しきりに郵便物をよりわけています。それどころか、ゆうゆうと座って「お金のかんじょう」をしているのもいます。

「こんなことだろうと思った。やつめ、また一ハレージュまちがっている。なおしておかなくちゃだめだ。」
などとつぶやきながら。

……その向こうでは一心に電報を打つ小人の姿が。

「『コチラハ妖精一三一番。報告、コチラハ異常ナシ。ストップ。マツラフフォゥセク氏ハ、カゼノタメ欠勤、タダシ憂ウ(うれう)べき病状ナシ、以上。」
こんな具合に。

  やがて手紙をトランプに見立ててあそび始めた小人たち。一番弱い「札」は、ウソばかり書いてある手紙。次に弱い「札」は、仕方がないから書いたお義理(ぎり)の手紙。その次は、ただていねいなだけの手紙。

… …とこうきて、一番強い「札」はというと、それは「人が、まごころをこめて書いた手紙。」

 それだけじゃない、小人たちは触れただけでその手紙がどんな手紙かわかるというんだ。しかもその力、なんとコルババさんにも宿っていた。気持ちのこもった手紙は温かく、そうでない手紙は冷たく感じるようになったんだ。そして、ある日とっても温かい手紙を見つけた。けれど、その手紙には宛名も差出人も書いてない。小人たちは言う。これはある青年が、一人の少女に向けて書いたプロポーズの手紙だ、と。さあ、大変だ、なんとしてもこの手紙を配達しなければ。コルババさんの、長い長い旅が始まる。


【 あれ?妖精が出てきたじゃないかって? そう、もちろん話の中には妖精だのカッパだの(時にはヒドラなんてものまで登場します!)人間ならざるものたちが続々と登場します。でも、人間たちだってなかなかのもの。すました顔で彼らと通じ合ってしまうのです。本の中には、ほかに6つのふしぎな話がおさめられています。あなたの心に残る話はいったいどれになるでしょうか。チャペックのお兄さんが描いたユーモラスなさし絵もステキです。】

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