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5年生の今月の本


なぜ、おとなになるの? タイトル なぜ、おとなになるの?
著者 アリベルト・リハーノフ
出版社 偕成社
 

 車椅子の少女レーナは、家での生活に息がつまりそうでした。レーナは今まで、自分と同じように体に病気を抱えた仲間たちが学ぶ寄宿学校にいたのですが、肺炎にかかったのをきっかけに、自分の家へ戻ってきたのです。学校で、レーナは先生にこんなふうに言ったことがあります。
「あたしたちをかわいそうだと思わなくていいのです。」

 いつも毅然(きぜん)として人に甘えたりしない自分のことを、レーナは誇り(ほこり)に思っていました。けれども一人で家にいると、どうすることもできない悲しみや苦しみが自分にのしかかってくるのがわかるのです。

 そんなある日、レーナは伝書バトを飼う(かう)一人の少年と出会います。フェージャという名前のその少年にも、深い悩みがありました。彼の父親はひどいアルコール依存症(いぞんしょう)にかかっており、母親はそのためにすっかり疲れはててしまっていたのです。すっかり生きる希望を失った両親の前に、フェージャのはげましの言葉はむなしく響くばかりです。けれど、フェージャはあきらめません。

 両親を立ち直らせ、自分の家庭にもういちど光を取りもどすこと。大人になることへの不安に負けず、自分を受け入れること。

 フェージャとレーナはお互いを心の支えにして、それぞれの人生に立ち向かうため懸命(けんめい)に努力しつづけます。

 しかし、そんな二人の前にさけて通ることのできない現実が立ちふさがります。自分たちの力では、どうすることもできない問題にぶつかったとき、二人は何を思い、どんな道をえらぶのでしょうか。

【 このお話はロシアの物語で、原題を『日食』といいます。明るく輝く太陽の光をとつぜん奪ってしまう「日食」。でも暗闇の時は必ずおわり、太陽はまた輝きはじめます。人生のつらい時はこの「日食」と同じようなもの、とフェージャは言います。将来への不安や大人社会の矛盾(むじゅん)に心を痛めながらも、純粋に人を好きになる気持ちを守ろうとする二人のまっすぐな生き方が印象的です。ちょっと悲しいお話ですが、物語の最後には明るい希望も感じられます。教室によっては貸し出しできるところもあるので、ぜひ読んでみてください。】

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