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5年生の今月の本


ぼくのひみつの庭 タイトル ぼくのひみつの庭
著者 クライド・ロバート・ブラ
出版社 文研出版
 

 その日、9才の誕生日をむかえたグレゴリーはふきげんでした。お父さんもお母さんも家のひっこしでいそがしくて、自分の誕生日をいわってくれる人がだれもいなかったからです。あたらしい家は、まえに住んでいたところより小さくてかべのペンキもはげていました。グレゴリーのお父さんが失業してしまったので、一家はここへ引っこしてきたのです。でもベランダを改造(かいぞう)して作られたグレゴリーの部屋は、グレゴリーのお気に入りでした。

 よく朝、グレゴリーはスケッチ帳に赤い屋根の家を描きました。もう一枚に黄色いひまわりも描きました。ちょっと小さすぎる気もしましたが、壁にはると絵はグレゴリーの部屋をとてもすてきにみせてくれました。グレゴリーはちょっと元気になりました。ところがその日家に戻ってみると、マックスおじさんが来ているではありませんか。20才になるおじさんはギターで曲をつくるのが仕事ですがあまりうまくいっていません。それで、これからしばらくグレゴリーの部屋でいっしょにくらすというのです。

「やあやあ、天才グレゴリーのお帰りだね!ちびっこ絵かきのお帰りだ!」

 グレゴリーはいつも自分だけがえらいと思っているようなこのおじさんが苦手でした。部屋に行ってみると、グレゴリーの描いた二枚の絵は、おじさんの張ったポスターの下に隠れて見えなくなっていました。

 次の日、グレゴリーはあたらしい学校に行きます。図画の時間に自分の描いたお城の絵を、アイビーという少女がちょっと指でさわりました。それがどういう意味なのかはわかりませんでしたが、グレゴリーは、アイビーと、彼女の描く絵に心ひかれるものを感じました。けれども学校にきて一週間、だんだんうちとけてなかよくなれるだろうと思っていた新しいクラスメイトとの生活は、あまり進歩したとはいえません。

 家にも学校にもなんとなく自分の居場所といえるものがないグレゴリーがある日見つけたのは、家の裏にあるチョーク工場の焼け跡でした。屋根はもえてなくなっていましたが、おおきな真っ黒い壁が三方に残っていました。見上げると、頭の上には真っ青な青空だけがぽっかりとひろがっています。

(ああ、ここはなんて静かでおだやかなのだろう。)

 黒い壁、残された白いチョーク。だれもいない忘れられたこの場所に、グレゴリーはあるすばらしいものを作り出すのです……。

【 絵を描くことがなによりも好きな少年がみつけた大きな大きなキャンバス。誰もいない工場の焼け跡で心のおもむくまま自由にチョークを走らせる少年の姿と、晴れわたる青空が印象的です。シンプルで短いお話ですが、読み終わったとき、きっとみなさんの心の中にも、さわやかな青空が広がっていると思います。ぜひ読んでみてください。】

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