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6年生の今月の本


ゴールキーパー タイトル ゴールキーパー
著者 大塚 菜々
出版社 石風社
 

 だから、最初っから、ゴールキーパーなんていやだったんだ。男子対女子のサッカーの試合、まともにやっていたら勝負にもならなかったはずなのに、男子みたいな女子の奈月に一点入れられてしまった。耕平は、調子にのって勝手にハンデを約束しておいて、そして一人でおこっている。だれが聞いてもわがまま放題の言い分に、いいかげんむかむかする。

「うるさい!ぼくがあれほどいやだっていったのに、おまえが勝手にキーパーなんかにさせたんじゃないか。おまけに点を入れられたらなんでもいうことをきく、なんていう約束をしたのも、みんな自分じゃないか。いつまでもぶつぶついってんじゃないよ!」
と、どなりつけてやりたい。

 それでもぼくは、やつの前に出ると、急に弱気になって「ごめん。」と頭をさげるしかなかった。ぼくは成績には自信があった。このクラスではダントツのトップだ。耕平も成績は悪くないけど、ぼくとは勝負にもならない。でも、ぼくたちくらいの男の子にとって、運動神経がにぶい、というだけで、それはすごく大きなハンデになってしまうんだ。耕平は、地元のサッカー少年団のエース、サッカーのセンスは抜群だった。おまけに球技はなんでも得意、走るのも速い。すらりと背が高くて、まっ黒に日焼けしている耕平と、中肉中背よりちょっと太り気味、眼鏡をかけているぼくとは明らかにタイプがちがう。

 六年生全体をみわたしてみても耕平は何かと目立つ存在だった。いつも男子に文句ばかりいっている女子も、耕平にだけはあまかった。六年生にもなれば、どんなににぶいやつだって、そういう待遇のちがいというのがわかるようになる。耕平とぼくでは、あきらかにポジションがちがうのだ。

 これでも、むかしぼくと耕平はよくいっしょに遊んでいた。いわゆる幼なじみってやつだ。でも、今のぼくらを見ていたら、ぼくと耕平が友だちだったなんて、だれも想像できないだろう。別にさみしくなんかない。六年生ともなれば、受験の準備も本格的にしなくてはならない。朝から晩まで、わいわいと遊びまわることしか頭にない耕平たちといっしょに行動しているひまなんてない。ぼくは、なるべくやつらとかかわらないように、めんどうなことはさけるように、それだけを考えて学校生活を送っていた。

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