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6年生の今月の本


ポッパーさんとペンギン・ファミリー タイトル ポッパーさんとペンギン・ファミリー
著者 R&F・アトウォーター
出版社 文渓堂
 

 ペンキ屋さんのポッパーおじさんは、スティルウォーターという静かなこじんまりした町の通りを、仕事を終えて家に帰っていくところでした。ポッパーさんは、一度もスティルウォーターを出たことはありませんでした。ときどき、奥さんと出会って家庭をもつ前に、外国でなにかを見ておきたかったなあ、と考えることがあります。インドでトラ狩りをしたこともないし、ヒマラヤの山にのぼったことも、南の海にもぐって真珠取りをしたこともありませんでした。そして、なによりも、北極と南極に一度も行ったことがなかったのです。それが、ポッパーさんのいちばんの心のこりでした。

 ポッパーさんは、極地探検の本を山ほどよんでいましたので、そういうことについては、大変な専門家でした。仕事を終えた午後のひととき、きれいにかたづいた部屋でイスにゆったり腰かけ、地球のてっぺんとそこにある、あの寒い地方の話を楽しむのが、ポッパーさんのいちばんすきな時間でした。

 ある日、ポッパーさんは、南極を探検しているドレイク提督に手紙をかきました。探検を記録した映画の感想を送ったのです。するとドレイク提督は、南極からラジオの放送を通して、ポッパーさんによびかけてくれたのです。
「こんにちは、ポッパーさん。お手紙をくださってどうもありがとう。返事を楽しみにしていてください。でも、手紙ではありませんよ。ポッパーさん、きっとびっくりするでしょう。通信終了、通信終了……。」
ラジオをとおして、あのいだいなドレイク提督から話しかけられたことで、すっかり興奮したうえに、提督のなぞのメッセージが気になって、その夜ポッパーさんは、あまりよく眠れませんでした。

 次の日の午後、げんかんの呼び鈴がなって、運送屋さんがやってきました。南極からの航空便でした。ポッパーさんは、受け取りにサインすると、箱を確かめました。「開封厳禁」「要冷蔵」など注意書きがかかれています。箱のあちこちに空気あながあけられています。これこそドレイク提督がいっていた「びっくりするもの」にちがいありません。そのとき、箱の底から「アー」という声が聞こえたのです。

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