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6年生の今月の本


泣けない魚たち タイトル 泣けない魚たち
著者 阿部 夏丸
出版社 ブロンズ新社
 

 6年生の春、さとるは転校してきた無口な男、岩田こうすけと友達になった。 こうすけはさとるに魚のことを何でも教えてくれた。 川と魚のことに関して彼の右に出るものは、この町にいなかった。

  といっても、こうすけは学校のなかでは誰とも口をきかない。友達もふやそうとしない。 ある時不思議に思ったさとるがたずねると、こうすけは言った。

「『おれ、じいちゃんにいわれたことがあるんだ。十人の友だちより、一人の友だち。 一人の友だちより、自分自身だって』

(そんなの、まちがっているよ)
 そういいたかったが、それはできなかった。 だって、こうすけの一人の友だちというのは、 ぼくのことだし、僕は、それがうれしかった。学校では、口をきかなかったけれど、 こうすけを独りじめした優越感を、みんなに対してもっていたかったからだ。

  そんな僕が、ちがう、などといえるわけがなかった。
『さとる。じいちゃんがいってたんだけどな、地震とか、台風がきたときに、友だちがたくさんいたって、仕方ないんだよ。 自分自身を守れなきゃ、ほかの人だって守れないんだぜ。それに……』
『それに?』
『何人守れるかじゃなくて、だれを守れるかが大切だろ』」

……こうすけはそういう男だった。

 ただ「河童森」の秘密のかくれがと、釣りだけが二人の友情の証だった。そんなこうすけ自身の秘密も、やがてあきらかになる。
……鮎が川に上ってきたら風でわかる。なぜなら、鮎はどことなくスイカの香りがするから。
……魚に触るときは、手を冷たく冷やしてからでないとだめだ。なぜなら、魚にとって人間の手はやけどしそうなほど熱いから。

「魚は、泣けるか泣けないか」
「でも、魚だって泣きたいときはあるんじゃないかなあ」
……
 少年の忘れられない夏がすぎていく。

【 ザリガニを取って食べたり、ウナギを売ってお小遣いを稼いだり、時には金魚屋を釣堀(つりぼり)がわりにしてみたり……物語の中には 少年たちならではの遊びがたくさん登場します。男の子はもちろん、女の子も、釣りのことなんて魚のことなんて何にもわからない、 という人もこの話を読み終わるころには、魚のことが大好きになっているはず。ちょっとほろりとさせられるお話です。

  ふだんは他人を寄せつけない一匹狼的存在のこうすけが持っている、 心の強さ、やさしさ、生きることに対する真摯(しんし)な姿勢には、学ぶものが大きいと思います。ぜひ、手にとってみてください。】

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