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6年生の今月の本


少年動物誌 タイトル 少年動物誌
著者 河合 雅雄
出版社 福音館書店
 

 この物語の主人公は、兵庫県にある丹波笹山(たんばささやま)という町にくらす小学生の男の子です。豊かな自然に囲まれたこの町で、少年が毎日のように心動かされるものは、テレビでもなければゲームでもない、すぐそばにいる小さな生き物たちとのふれあいでした。

■「蛇わたり」・・・少年は十姉妹(じゅうしまつ)をつがいで飼っていた。卵もあり、ヒナがかえるのを楽しみにしていたある日、シマヘビがやって来た。鳥かごを見て、少年はぎょっとした。止まり木の端に「異様な物体」がからみついていたのだ。それは、孵化(ふか)寸前のヒナ鳥のむざんな姿だった。その横で、鳥かごから逃げようとした蛇がのたくっていた。飲み込んだ親鳥がつかえて、金網を抜けられないのだ。
「一羽はまだ胸のあたりにいる。いま呑み(のみ)こんだばかりかもしれないよ。蛇を裂く(さく)と、助かるかもわからん」 
 少年は怒りにまかせてナイフで蛇の腹を切り裂いた。

 けれども、もう遅かった。十姉妹は体が半分とけかかった状態で蛇のお腹から出てきたのだ。少年と弟の道男は、それを見た母親にひどく叱られる。

「そんなむごいことをして。いくら蛇だって、あつかいようがあるわ。あきれた子たち」
「そうかて、こいつジュウシを二羽とも呑んでしまったんやもの。それに、卵はもうすぐかえるとこだったんや。卵は割れて、ヒナは死んでしもうたんや」

  その後、今度はシマリスが狙われた。リスは助かったものの、少年たちのところへは二度と戻って来なかった。蛇という蛇が憎らしくなった二人は、ついつい残忍な復讐(ふくしゅう)をくり返す。そんな彼らの前に、ある日、フシギな光景が……。

■「タヒバリ」・・・「タヒバリは、自分の存在をちっとも主張せず、腐りかけた稲の切株と、枯草が続くさむざむとした愚湯の田んぼに、だれの厄介(やっかい)にもならずにひっそりとくらしている。」

  山刀と弓矢をもって山を駆けめぐる毎日を想像し、「猟師の子どもに生れていたら、どんなに楽しいことだろう」 とうっとりする少年が夢中になったのが、この「タヒバリ」だった。ひっそりと、まるで忍者さながらに草むらに身をひそめ、人間の行動をつぶさに観察している 「タヒバリ」。何もかも見透かしたかのような小さな瞳。あの鳥を必ずしとめてみせる――。愛用の空気銃に 「猟人の精神」 をこめて(本当は吹矢(ふきや)かとりもちで獲りたかった)、少年は3日間片時も離れず「タヒバリ」を追った。冬枯れの田んぼの中、誰も相手にしない小さな鳥と向き合ううち、しだいに少年の心に”ある変化”がおとずれる。

【 作者で、この物語の主人公でもある河合雅雄(かわい まさお)さんは、小学生の頃は体が弱く、学校にもあまり行くことが出来なかったそうです。けれども、そのおかげで自然と深くつきあい、豊かなイマジネーションをやしなうことができました。「動物学者」としてアフリカへ探検や調査に行くようになった現在の自分があるのは、そんな子ども時代があったからこそだ、と河合さんは言います。

「学問の分野だけではなく、あらゆる分野での創造的な活動の原動力となるもの」……それが、「豊かなイマジネーション」です。私立中学校の入試素材文としても使われたことのある短編集です。ほかに、8つの作品がおさめられています。ぜひ、読んでみてください。】

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