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6年生の今月の本


どろぼうの神さま タイトル どろぼうの神さま
著者 コルネーリア・フンケ
出版社 WAVE出版
 

 「大人はよく、子どものころはよかった、という。それでまた子どもになることを、夢見たりもする。でも、ほんとに子どもだったころは、いったい何を夢見ていたんだろう? なんだと思う? 早く大人になりたい、そう思っていたんじゃないかな……」

 「月の都」とよばれるヴェネツィアは、イタリアが世界に誇る美しい町だ。運河(うんが)の水に反射した太陽の光が、古い家々のかべを金色にそめている。風は塩からい海の味がした。12歳のプロスパーと、5歳になる弟のボーは、このヴェネツィアにある、もう使われていない映画館の中でくらしていた。

  プロスパーとボーの母親は死んでしまった。親戚(しんせき)のハルトリープ夫人は、まるで天使のようにかわいらしい外見のボーだけを引き取り、プロスパーを孤児院(こじいん)にあずけてしまったのだ。2人は引きはなされるのなんか、まっぴらだった。そこで2人は家出をし、ドイツからはるばるヴェネツィアまでやってきたのだ。

 古くてかびだらけの映画館「星のかくれ家」には、プロスパーたちのほかに、3人の子どもが住んでいる。読書が好きで、しっかり者のやさしい少女ヴェスペに、茶色い髪の毛がつんつん立っている、甘いものとマンガが大好きなリッチオ、それから、機械いじりに目がないモスカ。みんな孤児院からにげだしてきたり、身よりがなかったりするが、昔の話はきかないのがルールだ。

 そしてみんなのリーダーは、スキピオという少年だった。スキピオはいつも、ぬすんだものを袋いっぱいにつめて、この「星のかくれ家」に持ってきてくれた。そのおかげで、5人の子どもたちは道ばたでふるえながら寝なくてもいいし、はだしのままで冷たい道をあるかなくてもいい。スキピオは「どろぼうの神さま」なんだから。

 スキピオはいつも黒い仮面(かめん)をつけて、かかとの高いぴかぴかの黒いブーツをはき、黒いコートをはおっていた。コートのすそは、ひざ下までとどいていた。それぐらいの背たけしかなかったんだ。でも、彼はよく大人のふりをしたがったし、町のやつらはみんな、スキピオのことを大人だと思っているにちがいなかった。そんなわけで、毎日は楽しくて、とても自由だったのだ。

けれど、大人にじゃまされることのない子どもたちだけの楽しい生活に、暗雲(あんうん)がかげりを見せはじめた。ハルトリープ夫人が、ボーを探してくれるよう、探偵(たんてい)・ヴィクトールにたのんだからだ。スキピオの作戦で、一度はやりこめたものの、ヴィクトールは「星のかくれ家」を見つけてしまう。おまけに、伯爵(コンテ)とよばれる老人から、きみょうな依頼(いらい)がスキピオに届き、やがてスキピオのとんでもない秘密(ひみつ)が明らかになる……。

【 みなさんは、早く大人になりたいと思いますか? それとも子どものままでいたいと思いますか? 子どもであるために弟のボーを守ることができないプロスパーは、早く大人になりたい、と強く願います。そして「どろぼうの神さま」スキピオも、大人になることは自由になることだと言います。みなさんはどうでしょう? 大人になることは、一体どういうことなのでしょうか? 大人になることと子どもであることは、もしかしたら同じくらい大切なことなのかもしれません。

「早く大人になりたい」と思うあなたも、「いつまでも子どもでいたい」と思うあなたも、ぜひ読んでみてください。】

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