失敗は学びのチャンス。失敗を糧にできる子どもに。

2019 年 9 月 9 日

 あるとき図書館で教育関連の書物を手にし、読むべき本かどうかを検討するために章ごとのタイトルを何とはなしに眺めていたら、次のような著述が目に留まりました(筆者はそうやって、ときどきブログのネタを探します)。

 「失敗とは転ぶことではなく、そのまま起き上がらないことです」

 ほかにも目を引く言葉がいろいろあったのに、なぜこの言葉に注目したのかというと、これこそ小学生の受験勉強のありかたを語る貴重な示唆に他ならないと思ったからです(ただし、本文の内容は筆者の予想とは少し違ったものでしたので、ここでは割愛します)。

 人間のやることに失敗はつきものです。失敗の繰り返しが人間を育てます。あらゆるジャンルにおいて、「成功者に、失敗経験のない人間など一人もいない」と言っても過言ではないでしょう。よくスポーツの世界で大成した人の言葉や経歴を紹介した記事が、ウェブ画面や雑誌誌面に掲載されていますが、そのほとんどにおいて失敗の繰り返しを糧に研究を重ね、より高いレベルへと到達するための方法を編み出し、たゆまぬ努力で自らを高みへと導いていったエピソードが語られています。また、優れた科学研究の業績を残した人について語られた本を読むと、おびただしいほどの失敗のプロセスがあったことが紹介されています。「失敗は成功の母」という諺(ことわざ)がありますが、まさに人間が何らかの分野で成功するうえでの核心を突いた言葉だと思います。

 ところで、本ブログをお読みくださっている保護者の方々にとって、現在の最大の関心事は「わが子の中学受験」であろうと思います。みなさんのお子さんの受験勉強の様子はどんな具合でしょうか。小学生の子どもはものの考えかたが楽観的で、今の勉強で十分かどうかの判断も甘いものです。弊社が1週おきに実施しているマナビーテストへの備えにしても、「何をどれだけやっておけば、テストで好成績を得られるか」を見通すこともせず、漫然とした取り組みのままテストに臨み、その度に残念な結果に至っているお子さんもおられるのではないかと思います。これは、先ほどご紹介した言葉に照らすと、「転んだのに、そのまま起き上がろうとしない」のと同じで、単なる失敗を繰り返しているに過ぎません。失敗と向き合い、何をどう変えればうまくいくかを考えることこそ、成功への転換を図るための第一歩になるのではないでしょうか。

 おたくではどうでしょう。テストで失敗したということは、点を失った箇所が多数あるということです。その点を失った箇所を一つひとつチェックすれば、その原因・理由が当然見えてくるはずです。

 上図のように、テストで50点だった場合を考えてみましょう。ものは考えようで、半分はちゃんととれていたということに他なりません。どうしてその50点がとれたのかを点検することも意味があります。それが、できなかったところをできるようになるために生かせるからです。そして、失った50点の検証です。上図以外にも、点を取れなかった理由はいろいろあるでしょう。それらをつまびらかにし、必要な対策を講じれば必ず失点はかなり減ることでしょう。

 前回、卒業生のコメントをご紹介しましたが、それらの言葉のなかにも失点を減らしたり、実力を養ったりするうえで有効なものが多数あるように思います。たとえば、「覚えたいことを紙に書き、ドアや壁に貼って眺める」「うっかりミスをなくすため、ゆっくり書く、見直す、を実行する」「夜やったことを、翌朝チェックする」――これらは、忘却対策やうっかりミス対策に有効ですね。「復習しやすいようノートを工夫する」「教科ごとの勉強法を箇条書きにする」「苦手教科こそ、伸びる余地が多いと考えて取り組む」「こつこつ投げ出さずに続ける」――これらは、地道に学力を伸ばすうえで随分効力を発揮する勉強法です。

 保護者におかれては、ただ「こうしなさい」と指示や命令をするのではなく、お子さんと現状を一緒に振り返り、いかにしたら問題点を改善できるかについて子どもに考えさせ、そのうえで必要なアドバイスをしていただければ幸いです。

 無論、お子さんなりに努力し取り組んでも歯が立たない問題があるものです。それについては、現段階では無理に克服しようと時間や労力を投じる必要はありません。重要なのは、今努力すれば改善できることをしたり、ミスなどの不用意な失点を減らしたりすることです。それが成績を安定させることにつながり、それによって自信や意欲を取り戻すことが先決です。この流れができれば、少々難しいことに対してもチャレンジし食い下がっていく意欲や能動性も生まれてくるでしょう。

 あるとき、男子の地元私立最難関校の先生が保護者や子どもたちにこんなことを語っておられました。

 勉強は楽ではありません。大変なものです。そのことについてうちの生徒がこんなことを言っていました。「大変という字は“大きく変わる”って書きますよね。つまり、大変なときというのは、自分が“大きく変われるチャンス”ってことじゃないですか」――勉強は大変かもしれませんが、ポジティブに考えて取り組めば、大変=辛いには必ずしもならないものです。

 テストで失敗をし、残念な点を取るのは誰しも辛いものです。しかし、その残念な点を取る経験こそが、自分を成長させるために欠かせないものなのです。そこから今ある問題点を見出し、同じ失敗をしないよう努力すれば、間違いなく一歩前進することができるでしょう。失敗しても失敗しても不屈の精神で立ちあがる。その姿勢が人間を変えるんですね。大切なのは受験生活を通してわが子が成長すること。保護者の方々におかれては、わが子が失敗を恐れず、失敗に学ぶ姿勢をもった人間になるよう導いてあげてください。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子育てについて

プラスのイメージが残る受験生活を!

2019 年 9 月 2 日

 今回は、前回の続きをお伝えしようと思います。今回は過去の受験生が書き記している言葉をもとに、前向きな学習姿勢を築いて受験を迎えることの重要性についてともに考えてみたいと思います。というのも、受験生活の在りかたは、受験の結果もさることながら、先々の人生の歩みにも影響を及ぼします。この点をご理解のうえ、この記事をお読みいただくとうれしいです。

 中学受験で最も大切にすべきは、子どもの人間的な成長を引き出す体験にすることです。志望校に合格できるかどうかはさほど問題ではありません。それが高校や大学への受験との大きな違いだと私たち家庭学習研究社は考えています。結果が全てではない。このことをご理解いただき、ともに連携しながら望ましい受験生活の実現に向けてがんばってまいりましょう。

 中学受験を終えたあと、受験を振り返ってどんなことが思い出されるかについて、受験を終えた子どもたちが受験体験記GET(ゲット)に書いている言葉をあげてみましょう。

 たとえば、ある年の体験記を見ると、勉強についてはこんなことが書かれていました。


覚えられない用語は、紙に書いてトイレのドアに貼って繰り返しそれを眺めた。
うっかりミスが多いことを反省し、ゆっくり書く、見直す、を心がけた。
入試が終わっても、決まった時間に勉強する習慣がずっと崩れなかった。
6年生の初めまでは何となく塾に行っていたが、夏休みからは自分で納得できる勉強をしようとがんばれるようになった。夏休みが転換点になった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後で見直し(復習)をし易いよう、ノートづくりを工夫したのがよかった。
夜覚えたことは、朝再び確認して、記憶に残すような勉強を心がけた。
辛いこともあったが、志望校に合格して制服を着ている未来の自分を想像してがんばった。
教科ごとの勉強法を箇条書きにし、どの教科にも共通する重要事項(復習する、わからないことは質問する、苦手箇所のチェック、テストのやり直しをするなど)も書いて確認しながら勉強した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

苦手教科の復習をしなかったことを反省し、6年の夏から過去のテキストを必死になってやり直した。
課題が多くても投げ出さずにコツコツやっていく勉強を最後までやり通せた。
「あのとき、もっとがんばっていれば」という反省でネガティブになると、勉強に身が入らなくなるので、「でも、前にできなかったことはできた」とポジティブに考えるようにした。
苦手なことをやるのはいやだけど、逃げてはいけない。苦手だからこそ、やれば点が伸びる。

 以上はほんの一部をご紹介しているにすぎませんが、いずれのコメントも「大切なのは、前向きな気持ちで勉強することだ」ということを教えてくれているように思います。また、理想的な受験生活を経て合格する子どもはそういるものではないということも、おわかりいただけるでしょう。

 満足できる成績をあげられなくても、決めたやりかたをコツコツ継続した子どももいれば、自分のよくない点や苦手な点を克服するために、ある時点から工夫を凝らして受験を乗り越えた子どももいます。受験生活の過去を反省し、遅まきながらも必死でがんばって結果を引き出せた子どももいます。このようなプロセスを経て入試に臨んだ子どもは、入試の結果がどうであろうと、おそらく先々もちゃんとやっていけるだろうと思います。

 なぜなら、受験や勉強に対してネガティブなイメージを染みつかせていません。ものの考えかたが健全で建設的です。入試が望んだ結果ではなかった場合でも、「何がいけなかったのか」を振り返り、以後は改めようとする姿勢をもっています。また、首尾よく受かった場合でも、自分なりの反省点があることをよくわかっています。

 受かっても、勉強に対する受け止めかたや取り組む姿勢が間違っていたとしたら先が心配です。やればできる。うまくやれないのは努力が足りなかったからだ。――わが子がこういう考えかたのできる人間になることこそ、親が望んでいることであろうと思います。こういう受験を体験すれば、どの中学校に進学してもちゃんとやっていけるに相違ありません。

 受験体験記には、しばしばおとうさんやおかあさんの励ましやサポートの様子が記されています。また、ともに競い合い、励まし合った友人やライバルへの感謝の言葉が目立ちます。塾に通っての受験生活を楽しい思い出として受け止めているお子さんもたくさんおられます。

(週3日コースに変わったとき)はじめは「週3日も通うのか~」といやいやでしたが、そんな気持ちは太平洋のかなたまで飛んでいきました。それほどまでに、先生方の授業や、友達と過ごす休憩時間、そして補習の時間は楽しいものでした。


第一志望校に不合格だったことを知ったとき、おかあさんが「だいじょうぶ、辛い思いは時間が解決してくれるよ」と、励ましてくれた。この言葉はほんとうだったんだ。


父は成績がよいときは喜んでくれ、悪いときには「問題を解き直してみなさい」と励ましてくれた。

 このような環境に恵まれた子どもは幸せです。無用のプレッシャーに押しつぶされることなく受験生活を最後までがんばり通せるからです。少なくとも、受験をしたことがマイナスに作用しませんし、中学生になってからも新たな目標を見出して、努力を続けていけることでしょう。最後に紹介する受験生のコメントは、受験を終えたときの子どもの感想としてとても清々しさを感じさせてくれるものです。すべての受験生の子どもたちがこんな感想を胸に中学校へ進学できますように!

 

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: がんばる子どもたち, アドバイス, 中学受験

学びに向き合う‟姿勢”と‟気持ち”を大切に!

2019 年 8 月 26 日

 夏休みが終わり、学校が再開しました。これに合わせ、私たち家庭学習研究社の後期講座も開講となります。

 学校が始まる、塾の勉強も始まる。こうしたことで、お子さんの様子に何らかの変化は見られませんか?学校や塾の再開を楽しみにされるようなら心配ないのですが、なかには嫌がったり拒否反応を示したりするお子さんもおられるかもしれません。

 というのも、夏休み期間中に塾への通学はある程度あるものの、普段と比べると子どもたちは自由に使える時間をたくさん手にします。やりたいことを気の向くままやれる夏休みの生活に浸かってしまうと、時間や行動に制約が多い学校や塾での時間を苦痛に感じるお子さんも出てきます。特に、勉強がもともと好きでなかったお子さんが、夏休みを自堕落に過ごす生活に陥ってしまうと、こういった状況になりがちです。おたくのお子さんはどんな様子でしょうか。

 もしも、夏休み明けからの塾通いや受験勉強に対して、お子さんが「気乗りしない」「嫌だ」「勉強なんてしたくない」といったようなネガティブな気持ちを抱いているように感じられたなら、このような心理状態からお子さんを解放してやる必要があるでしょう。というのも、受験生はまだ人間形成途上の小学生です。「志望校合格のために、自分のできることを精いっぱいやろう」というところまで気持ちが定まらず、「親が言うからしかたなくやる」といった受け身の勉強を、ダラダラと続けることになりかねません。それはお子さんの将来にとって決して望ましいことではありません。

 少子化が進行した今日は、合格を巡る競争も随分緩和されています。しかも、私立一貫校や公立一貫校の受け皿も増えています。一部の難関校は例外としても、中途半端な受験勉強でも志望校の一つに合格できる可能性は十分にあります。しかし、学びに向かう姿勢も気持ちもできていない勉強で受かって、果たして中学進学後はだいじょうぶなのでしょうか。少なくとも言えるのは、中学、高校、大学、社会への参入まで目を向けると、相当な苦労を強いられることが予想されます。

 いっぽう、人間形成途上の段階にある子どもの受験であるということを踏まえ、保護者がわが子の受験準備のプロセスを上手に応援されたなら、お子さんはこれから待ち受ける先の見えない高度化社会を生き抜くために欠かせない重要な資質を手にすることができるでしょう。そういうと難しい話になりそうですが、簡単に申しあげると、「叱ってやらせる受験生活」から抜け出し、「子どもなりに工夫しながら前向きに取り組む受験勉強」へとシフトしていくことが、お子さんの将来につながるということです。

 親はわが子の勉強となると、どうしても黙って見ていられず、いろいろと命令や口出しをしがちです。しかしながら、それを続けると、いつまでも子どもの勉強は前向きになりません。小学生の勉強は欠点が多いものです。しかし、それを見かねてこまごまとコントロールするよりも、ときどき一緒に考えてやり、解きかたの糸口を見つけたときの喜びや、推論することの楽しさを味わう経験をさせることのほうが、遥かに子どもの学びに有意義な変化を引き出すことになります。

 「わが子が勉強に前向きでない」という悩みをもっておられるなら、今からでも遅くありません。お子さんに勉強の楽しさを味わわせることから、受験に向かう態勢の巻き直しを図ることをお勧めしたいですね。それをきっかけに、子どもの人生の歩みが大きく変わることすらあるからです。以下の文章は、以前もご紹介したことがありますが、望ましい勉強のありかたを教えてくれると思います。ある脳科学者の文献から引用しました。

 

 一般に、人間が頭を働かせているときの主役は、確固たる論理や客観的な知識ではないらしい。最近の脳科学によると、脳の複雑な思考や情報処理を支えているのは、主観的で気まぐれな情動の心だという。脳の働きの部位で言うなら、知性の座たる「前頭前野」ではなく、最も古い脳部位、すなわち「脳幹部」(大脳辺縁系を含む)ということになる。大脳辺縁系や視床、視床下部を含む古い脳は、外部情報と内部情報の接点であり、「好きか嫌いか」「愉快か不愉快か」などの価値判断と、喜怒哀楽のような情動をつかさどる。

 なぜ情動の脳が「主」で、理論的な新皮質が「従」になるのかといえば、発生の順にしたがって生命の維持にとってより大切なほうが主導権を握るようにできているからである。これは、脳の構造がサルからヒトへ進化を始めたときから不変ということである。

 

 この文章から導き出せる重要な真理があります。勉強を楽しい(快)と受け止めると、それが優秀な頭脳の形成につながるということです。

 これを、私たち学習塾の学習指導に絡めて考えてみましょう。家庭学習研究社は、「学ぶ楽しさを体感しながらの受験勉強」を理想としています。無論、受験勉強は楽しいばかりではありませんが、中学受験の勉強には発見の喜びや知識を得ることの楽しさを味わえる要素がたくさんあります。「学習塾は、合格を得るために通うところだ」と思っておられるかたには奇異に感じられるかもしれませんが、学ぶことから得られる「楽しさ」は、人間の知的成長にとって欠かせないものなのです。

 上記引用文によると、楽しさ=快であり、その快なる精神的な働きは、先ほどの「古い脳」の支配する感情によってもたらされます。もしも、学ぶことが快の感情へとつながったなら、人間(子ども)はより積極的に学びに向き合うようになるでしょう。その繰り返し、積み重ねが脳(前頭前野)の鍛錬につながり、やがては学力を高いレベルへと引き上げてくのです。

 最も古い脳、すなわち「感情脳」は、最も新しい脳である「前頭前野」(知的活動のコントロールタワー)と密接なつながりをもっています。学ぶ=快の感情が、人間を勉強へと向かわせ、その繰り返しを通じて鍛えられた前頭前野が、やがては「知性の座」としての本領を発揮し、古い脳の働き(感情)をより適切な方向へと制御するようになるのです。たとえば、「受験勉強は辛い面もあるけれど、できたときにはものすごくうれしい。だからもっとがんばろう!」というふうに、感情のもつネガティブな側面の働きを抑え、より建設的な方向に行動を向かわせるのですね。

 こうした営みを子ども時代にたっぷりと経験したなら、前頭前野は健全に発達し、学力の豊かな人間になれるだけでなく、感情を知性的にコントロールできる人間に成長できるのではないでしょうか。こうした好循環の流れをつくるうえで、小学生時代の学習は大切な意味をもっているのです。時間も手間もかかる受験勉強は、なおさら大きな効果を引き出してくれることでしょう。

 少々イヤなこと、気の進まないことでも、課題解決の糸口を見つけたときの喜びや、やり遂げた後に得られる達成感のほうをよしとし、少々辛くてもがんばろうとする。――このような姿勢こそ、社会の荒波を乗り越えるために欠かせない資質です。そうなるための出発点は、「勉強の楽しさを知る」ことにあるのですね。今から、お子さんをこうした観点からサポートし、応援してあげていただきたいですね。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: 家庭学習研究社の特徴

読書速度と学力の関係について考える

2019 年 8 月 12 日

 お子さんは本を読むのが好きですか? 毎日の日課として読書はしっかりと定着していますか? 今回は、読書活動がもたらす効果、特に読書スピードが学力に及ぼす影響についてお伝えします。

 毎日の自由時間を読書に充てる。それは、お子さんが中学受験をめざしておられるご家庭の場合、受験勉強が本格化した段階では好ましくないと感じる保護者も少なくないことでしょう。しかしながら、3~4年生までの時期であれば、むしろおおいに必要なことです。というのも、子どもの語彙は読書活動を通じて莫大増えますし、文章を快適に読みこなす力が身につきます。これが、学習活動全般に多大な貢献をしてくれるのです。

 ただし、何事も成果があがるまでには時間がかかります。読みの力(読みの精度、速度、情報の統合力、記憶力など)はその典型的なもので、読みの練習を繰り返し飽きることなく積み重ねた子どもほど上達させることができます。これは、スポーツや楽器演奏の上達と全く同じことです。読みの力を上達させるには、読書好きの子どもになるのがいちばんよい方法です。読書の楽しさを知り、習慣化することで、徐々に読みが達者になり、やがてそれが言語能力の飛躍的な高まりを引き出してくれます。

 以下は、長年小学校の教育現場で活躍された先生(故人)の著書の一部を短くまとめたものです。読書がきっかけで、学力を飛躍的に伸ばした少年のエピソードが紹介されています。

 読書好きの子どもは、毎日1冊のペースで本を読んでいます。しかし、生活上必要なことに要する時間はどの子もだいたい同じです。学校にいる時間もだいたい似たようなものです。それでいて1日1冊の本を読めるのは、読書のスピードが相当速くないとできないことです。

 そこで、3年の担任クラスの子どもの読字速度を計測してみました。「発明王エジソン」「りゅうの目のなみだ」「キヌーリーはライオンのこども」の三冊を全員に配り、読みたい本を選ばせました。結果ですが、最初に読み終えた子どもは8分20秒でした。1秒当たり、ちょうど20字読んでいます。

 その子は、実は低学年の頃はテレビ漬けで本嫌いでした。その子が3年生になったとき、私が担任を受けもちました。私はテレビの害を少し大げさに伝え、「もっと本を読みなさい」と読書を勧めました。その甲斐あってか、だんだん本を読むようになりました。5月、6月頃までは、本を読むスピードはのろのろしていましたが、夏休みには図書館へ足繁く通い、本を片っ端から読んでいたそうです。その成果でしょうか。読む速度が格段に速くなりました。

 ただし、このときはまだ学期末の学業成績はさほどではありませんでした。ところが、以後、着実に成績が向上していきました。そして、6年生になると、国語、社会、算数、理科とも、すべて最良の成績を得るまでになりました。無論、この結果は読書一辺倒によるものではありません。その子どもは、宿題も含め、毎日1時間の書くことを中心とした家庭学習を休むことなく続けていました。それらの相乗作用が高い学力を保障する源になったのです。

 とは言え、その子の学業成績の向上に最も貢献したのは著しい読字速度の進歩です。それが新たな学力を獲得したり、広く知見をとり入れたりするうえで有利に作用したのです。読みが速ければ、限られた時間枠のなかで、新しい情報をよりたくさん得ることができます。この男の子が、小学3年の後半という時期に、読書好きになったということの発達的意義は実に大きいものがあります。読書が楽しみになり、読む過程で様々な知識をわがものとし、あわせて読字速度が著しい進歩を遂げたことが、その後の学力の飛躍的な向上のための、何よりの土台を築いたのです。


 右の表をご覧ください。これは、上記の先生が担任をしておられたクラスの児童42名の「読字速度と学力」の関係を表したものです。その先生も述べておられたように、わずかな数の児童をもとにした調査ですから、あくまで参考程度にとどめるべきでしょうが、それでも読みの速さと学力の関係がかなり明確に見て取れるでしょう。

 たとえば、毎秒14字以上読める子どもは12名いますが総合成績の上位3名はこのなかから出ています。いっぽう、読字スピードが毎秒5字以下の子ども7名には、成績上位者はもちろんのこと、中上位者も見当たりません。

 このことから、読字スピードと学力には有意な相関関係があるとみてよいでしょう。速く読めるほうが学業成績に好影響を及ぼす理由は、先ほどご紹介した先生の著述内容にあった通りであろうと思います。

 小学校の中学年ころにさしかかると、抽象的な概念を言い表す言葉が教科書にも増えてきます。読みの達者な子どもは、読書を通じてたくさんの語彙を獲得していきますから、抽象語の理解力も相対的に高いのが普通です。したがって、こうした勉強の高度化にも余裕をもって対応することができます。その意味において、小学校の中学年にさしかかるお子さんにとって、読書は内面の成長のみならず、学力飛躍に向けた土台形成においても大変重要なものだと言えるでしょう。

 近年は、本を読む子どもと読まない子どもの差が広がっているという指摘もあります。よく読む子どもは月あたり20~30冊読んでいるいっぽう、読まない子どもは月に数冊も読んでいないようです(近年の調査によると、月に本を1冊も読まない不読児は4%弱のようです)。読まない子どもは、単に読書から得られる楽しさや喜びを味わえないだけでなく、小学校高学年時に生じる「語彙の爆発」現象(語彙が爆発的に増える)とも無縁となり、その結果学力形成面でも苦労を強いられることになりがちです。

 読書は、ひとたびその習慣を身につければ、子どもにとって欠くことのできないすばらしい友になるものです。さらには、知的能力の向上を支えてくれる頼もしい味方になってくれるものです。夏休み後半には、親子で図書館に出かけ、いろいろなタイプの本にあたってみてはいかがでしょうか。最初は、興味をもてそうな本なら何でも構いません。活字が大きく、挿絵のたっぷり入ったものだっていいのです。

 保護者におかれては、この夏休みという機会を生かし、お子さんが一人前の読書人になるためのよききっかけを与えてあげてください。お子さんが一冊のすてきな本に巡り合うことで、人生が変わることだってあります。さあ、親が関われる今のうちに行動を!

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 家庭での教育, 小学1~3年生向け

親の声かけ・励まし原則 ~あいうえお~

2019 年 8 月 5 日

 早いもので、夏休みも中盤に入ろうとしています。お子さんは早寝早起きを励行し、毎日規則正しい生活を送っておられるでしょうか。今回は、小学校の低学年~中学年児童をおもちの保護者に向け、夏休み期間の留意事項を主にお伝えしようと思います。

 はじめは生活のスケジュールに沿って行動していたのが、段々とやるべきことがルーズになったり、勉強も目先の遊びにかまけておざなりになったりしているお子さんはありませんか? だらけた夏休みの生活態度が、これまで培ってきた行動や学びの姿勢を台無しにしてしまわないよう、保護者、とりわけおかあさんがたには、お子さんの様子を見守り、タイミングのよい声かけと励ましを忘れないでいただきたいですね。

 こうした配慮がとりわけ求められるのが、低学年~中学年児童をおもちのおかあさんでしょう。というのも、児童期中盤までの子どもには、まだしっかりした規範意識が根づいていません。その場その場の雰囲気や気持ちに流されがちな年齢にあります。いっぽう、ほぼ生活の全てを親に委ねている年齢期ですから、親がどう出るかということは、子どもに対して圧倒的な影響力をもちます。そこをどう生かすかが親に求められる重要なポイントでしょう。

 たとえば、低学年児童の勉強ぶりは、おかあさんがどれだけわが子の勉強に期待を寄せ、熱心に関わっておられるかで決まります。弊社の低学年部門の教室に通っているお子さんで、授業担当者が感心するほどよい学びかたをしているお子さんの特徴は、学びに元気があること、そして、提出プリントにおかあさんの愛情深く熱心な励ましがたくさん書かれていることです。以下は、低学年部門(ジュニアスクール・玉井式国語的算数教室)の授業担当者を通じて確認した、「できる子」の家庭学習と提出プリントの特徴です。

★家庭勉強の時間が決まっていて、やるのが当たり前のようになって
 いる。

★保護者が、子どもの勉強に常に関心をもち、熱心にサポートをされ
 ている。

★保護者が、プリントの
つけをするだけでなく、賞賛と励ましの
 コメントを書いておられる。

★保護者が、一緒に考え、必要に応じてアドバイスをするような
 関わりをされている

 これを見ていただくと、子どもの学びの状態がよいのは、ほとんどおかあさんの努力の賜物であるということがわかりますね。年間を通じて最も暑さの厳しいこの時期、仕事に家事に追われて疲労がたまり、わが子のことまで手が回らなかったり、余裕をもってわが子と接することができなくなったりしているおかあさんもおられるかもしれません。しかしながら、お子さんは今一番おかあさんの目配りや気配りが必要な段階にあります。ぜひがんばっていただきたいですね。

 今回掲げたタイトルは「いったい何のこと?」と思われたかもしれません。これは、夏休みにおかあさんがたに意識していただきたいことを「あいうえお」で箇条書きにしてみたものです。お子さんの様子に、「イラっ」としたときなど、この「あいうえお」を思い出し、心に余裕を取り戻していただきたく思います。

 筆者が中学受験指導の現場にいたとき、勉強の取り組みがよいだけでなく、立ち居振る舞いのすばらしいお子さんに共通していたことの一つに、「保護者(おかあさん)が、いつも優しく見守りながら、お子さんを応援しておられる」ということがあります。

 疲れていたり、心に余裕がなかったりすると、叱って無理に勉強させるしか方法がないかのような心境に陥りがちです。しかし、それをやってもその場限りの効果しかないことは先刻承知のことでしょう。親の望むような子どもにするには、子どもの心に「おかあさんは、自分を心から応援してくれている」という思いを植えつけることが一番大きな作用を果たします。このことを肝に銘じていただきたいですね。

 もう一つ、子どもの学びに・計画性と自主性を育てるための親の関わり、子育てスタンスについても、一貫した考えに基づく働きかけが肝要だと思います。以下は、日本有数の中高一貫進学校の校長をされていた先生の出された書物にあった、おかあさん向けのアドバイスです。よろしければ参考にしてください。

 毎日一定の時間に机に向かわせる――低学年の場合であればそれが学校から帰ってすぐか、食事のあとか、と考えるのが勉強計画です。高学年になれば、さらに計画の内容は細かくなり、達成目標なども書き加えられるでしょう。
 こうした勉強計画は、まず、子どもに考えさせることです。低学年ならば、親が子どもにヒントを与えて考える手助けをしてやらねばなりません。「御飯がすんだあとでやる」と子どもが答えたら、「でも、その後はいつも見るテレビの漫画もあるし、お風呂にも入らなければならないわよ。じかんがあるかしら」と母親はアドバイスします。こうして、何とか母親の考えている計画に近づけていけばいいのです。
 避けたいのは、一方的に〇時から〇時までは勉強、次はピアノ……と親が計画を押しつけることです。子どもの心にも自尊心はありますし、自分の意見を取り入れてほしいと望んでいます。それを全く無視して、母親の都合のいいスケジュールを押しつけては、子どもは張り合いを失います。
 子どもが考える計画は、突飛であったり、不可能であったりするかもしれませんが、そこには必ず本人の意欲が反映されています。その勉強意欲を失わせることがないように、親は意見や希望を述べて、双方が納得する計画を作ることです。あくまで子ども自身が作った計画です。押しつけられた計画は破ることに積極的になれても、自分で定めた誓いを破るのには、消極的になるものなのです。

 結局、わが子の自主性を育て、ものごとを適正に処理できる人間にするいちばんの方法は、わが子を信じてやらせてみることでしょう。それが功を奏するには、親子の信頼関係をしっかりと築いていることが前提となります。その信頼関係の礎となるのは、低~中学年児童期までの熱心な関わりと応援でしょう。

 親の目を盗んで遊んでしまう子どもになるか、親が目を光らせなくてもやるべきことをちゃんとやれる子どもになるか。それはわが子が小学生時代まで親の関わりかたで決まるのだと言えるでしょう。親が絶大な影響力をもつ今のうちにこそ、このことを胸に留めてがんばっていただきたいと存じます。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: アドバイス, ジュニアスクール, 勉強について, 子育てについて, 家庭での教育, 家庭学習研究社の特徴