家庭内会話と子どもの人間形成

2021 年 9 月 6 日

 現在、広島県にも非常事態宣言が発出されています。しかしながら、新規感染者の推移を見るとステージ4の水準から脱却しておらず、12日までとされる緊急事態宣言も解除の見通しが立っていません。不自由で我慢を強いられる毎日が続きますが、感染回避に向けて私たち一人ひとりが今できることをしっかりと実行していきましょう。

 長引くコロナ過のもとでの生活のよい点を強いてあげるとすれば、家庭で親子一緒に過ごす時間を十分に確保できることではないでしょうか。子どもにとって、親は目の前にいる身近な手本であり、生活や行動の規範を教えてくれる先生に他なりません。「子どもは親の背を見て育つ」と言われますが、目の前に親がいる、親子で一緒に過ごす、親子でいろいろな会話を交わすということが、子どもの成長にどのような影響をもたらすかを、今回はともに考えてみようと思います。

 子どもが総じて親に似ているのは、「遺伝子を受け継いでいるのだから当然だ」と言えるでしょうが、必ずしもそれだけではありません。子どもは毎日親の行動の様子を観察したり、親との会話で学んだりしています。そのとき、子どもの脳の発話中枢(ブローカ野)とその周辺部にあるニューロンの集団が特有の反応を示すと言われています。親の行動の様子を知覚すると、子どもの脳内でそのパターンを模して同じような動きをするのです(ミラーシステム)。まるで親の行動をなぞるように再生することで、親の行動様式を自己のなかに取り入れていきます。

 なぜ脳がこのような働きをするのかについては、筆者は専門家ではないので詳しくはわかりませんが、目の前で知覚した現象を理解するにあたり、いったん自己の脳内で同じことを再生するステップが必要なのだと思われます。親が手を伸ばしたり、指し示したり、腕を組んだり、頬を膨らませたりするたびに、このニューロン群が反応し、目の前の親のしぐさや行動を模して活動を始めます。

 そこで気をつけたいのは、親の日頃のふるまいです。子どもの言うことに耳を貸さず、いつも一方的に命令をして親の言うとおりにさせていると、子どもは成長するにつれて反発するようになるでしょうが、そのいっぽう、自分が見てきた親のそういった振る舞い以外の方法を学んでいませんから、結局親と同じような行動をとる人間になっていく可能性が高いのです。家庭内暴力を受けて育った子どもが、やがて親になると同じようなふるまいをするのは、そういう理屈に基づくのでしょう。

 もしも親が子どもに対して「こうあってほしい」という期待に沿った振る舞いをしたならどうでしょう。おそらく子どもは、親の期待する行動様式を身につけるのではないでしょうか。

 上記イラストで示した例は、これからの社会で求められるコミュニケーションの様式をもとにあげてみました。グローバル化が叫ばれて久しい年月が経過していますが、相変わらず「英語ができないと外国で通用しない」という考えがはびこっているようです。無論、外国語に堪能であることは大変重要な要素ですが、外国に長く滞在し、活躍して来られたかたの著述を読むと、もっと大切なことがあるということに気づかされます。それは、自分をしっかりとアピールすることであり、他者に共感したり、他者の気持ちを汲み取って行動したりすることです。

 たとえば、英語がペラペラの男性と、せいぜい片言しか話せない男性が、外国の同じ職場で働いていました。当然、英語の堪能な男性のほうが喜ばれ人気者になるのだろうと思いきや、英語が苦手な男性のほうに外国人の関心が向けられ、話をしたいと思われたそうです。その理由は、相手の気持ちを汲み取り、適切な行動やフォローができるからでした。英語力の足りない点は、身振りや手ぶり、表情などで補えますが、相手への配慮や心遣いを行動に移す能力はそうはいきません。その意味では、外国語習得以前の当たり前のことをしっかりと身につけることこそ、グローバル社会で通用する人間になるための条件と言えるのではないでしょうか。

 家庭で毎日繰り返される会話は、子どもの人間形成や対人関係調整能力の育成に多大な影響を及ぼします。その意味において、「わが子とどんな会話を交わすか」ということの重要性について、もっと強い自覚をもつべきでしょう。しかしながら、そうかと言って大層なことを考えて会話する必要はありません。親として大切にしたいことを、自然体で実行すればよいのだと思います。上記のイラストで示した例もいくらか参考にしていただけるでしょう。

 進学塾のブログで上記のようなことをお伝えすると、「おたくは塾でしょ?」といぶかしく思われるかもしれません(実際、私学の先生からそういう指摘を受けたことがあります)。「塾の仕事は子どもを合格に導くことだ」というのが一般通念ですから、当然と言えば当然かもしれません。しかしながら、学力は他者との関係性を上手に保ってこそ正当に評価されます。ただ学力に秀でている、学歴が高いというだけでは世間で通用しません。そのことを保護者の方々は十分ご承知でしょうが、受験での合格に目を奪われているうちに、いつの間にか他の重要要素が忘れられてしまうこともあります。学を修めることと、人間性を磨くこと、この二つのバランスこそ、人生を有意義に歩んでいくうえで重要なことではないでしょうか。だから弊社は、敢えて教育に関わる要素にも言及しているのです。

 さて、最後に「親子の会話が大事なのはわかった。でも、会話の際に何を話せばよいか思い浮かばない」というかたもおありでしょう。「今日何があったのか」や、「勉強はどうしてる?」などを話題にすると、話は盛り上がらないし、下手をすると子どもが直に口を閉ざしてしまいかねません(無論、こういった話題の会話も必要ですが)。それよりも、親子それぞれの趣味やスポーツ、プロのサッカーチーム・野球チーム、ニュースネタ、アニメ、読書、受験勉強で扱う理科や社会のネタ、好物の食べ物、料理など、親子間で話が盛り上がりそうなものをとりあえずは話題に組み入れてもよいと思います。何か、おたくの家庭ならではの楽しい話題に気づかれましたか?

 家庭内会話こそ子どもの人間を育む場。そのことを念頭に置き、会話のなかに親の愛情をたっぷりと注ぎながらやりとりしてみてください。

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“振り返り”と“やり直し”が学力を伸ばす!

2021 年 8 月 30 日

 新型コロナウィルスの感染拡大が止まりません。感染力の強い変異種のデルタ株による感染が広まっていることも原因の一つと考えられています。ラムダ株は子どもにも感染しやすいうえ、ワクチン効果も薄いと言われていますので、本当に恐ろしいですね。広島県も、新規感染者数が高止まりしており、8月27日から緊急事態宣言が適用されています。何とかして感染拡大に歯止めがかかることを祈るばかりです。

 さて、夏休みの終了とともに新学期が始まりました(コロナ感染問題を考慮し、自治体によっては夏休みを延長する動きもあるようです)。弊社の後期講座も本日(8月30日)開講します。お子さんは、夏の講座で手ごたえを得られたでしょうか。夏休みに生活習慣が乱れたり、遊びに気持ちが傾き過ぎたりすると、学びのコンディションを調整するのに手間どります。どのお子さんもうまく夏を乗り越えておられればよいですね。

 なかには、「がんばっているのに、ちっとも成績が上がらない」「成績がずっと下がり気味で、自信がなくなってきた」など、いろいろと悩みを抱えているお子さんもおられるかもしれません。一つ言えることは、今やっている勉強で成果があがらないのは、能力の問題ではなく、勉強の内実に問題があるからです。

 学習成果は、取り組みの時間や量には必ずしも反映されません。いくらがんばっているつもりでも、学習の方法に問題があったら力はつきません。また、自分の勉強の問題点に気づかないまま勉強をしていると、学力が頭打ちになってしまうケースも多々あります。たとえば、こんなことはありませんか? 以下は、男子にありがちなものと女子にありがちなものの代表例をあげたものです(無論、例外も多数あります。あくまでも傾向としてご理解ください)。

 男子のよいところは、気分が乗ったときにはすばらしい集中力を発揮するところです。しかし、それがなかなか続かないところに欠点があります。また、同じことを長くやるのを嫌い、すぐに飽きてしまいがちです。やることなすことが大ざっぱで成果のない勉強をくり返しているお子さんも少なくありません。これにも関連しますが、そそっかしくて慎重性を欠き、ミスをたくさんします。

 女子は概ねまじめです。先生の指示をよく聞き、実行に移そうと努力します。しかしながら、取り組みが形式に流れがちで、やるにはやっているけれども、それだけで満足してしまうお子さんも見られます。また、「ああでもない、こうでもない」と、いろいろ視点を変えて考えることが苦手で、解法を覚えて対処しようとするため、成績が頭打ちになるお子さんも女子のほうに多いように思います。

 無論、勉強の現状はお子さんそれぞれに違いますから、上記の例が当てはまるかどうかはわかりません。しかしながら、男子であれ女子であれ、学習成果をあげるうえで必ず押さえておくべきことは共通です。そのことについてこれから考えてみたいと思います。

 新しいことを学ぶとき、どんなことでも1回で理解し、自分のものにできれば苦労はありません。受験レベルの勉強ならなおさらで、授業を聞いただけでは十分ではなく、家で何度もやり直しをしてやっとわかるようになることも珍しくありません。

 ところが、授業を聞いただけでわかったつもりになったり、練習問題の解答や解説を読んで「理屈を理解した」と、錯覚をしたまま満足してしまうお子さんが少なくないようです。新出の学習事項は、反復してやり直さないと頭に浸透しません。上記のような勘違いをしたままテストに臨んだものの、さほど難しくない問題に躓いたり、必要な知識が記憶から取り出せなかったりするのはそのためです。こうした中途半端な取り組みを続けている限り、頭打ち状態から抜け出せません。

 つぎの三つについて、これまでの実際をお子さんと一緒に振り返ってみてください。

①取り組みかた・勉強法について振り返る
②テキストの問題・テスト問題の間違い直しの徹底
③やるべきことをどれぐらいやっているか振り返る

 について。初めて学ぶ単元にふれる場合、予習をしてだいたいの内容をつかんだり、授業に臨むにあたって「何を知りたいか」を明らかにしたりします。それをちゃんとやってきたでしょうか(予習は5・6年)。授業では、単元の基本となる考え方や知識を扱いますが、先生の説明を集中して聞き、ノートに板書を書き写したり、気づいたことをメモしたりしてきたでしょうか。家庭では、授業で学んだことのおさらい(復習)をしてきたでしょうか。テストの前に、2週間学んだことを振り返り、重要事項がわかっているかどうかチェックしてきたでしょうか。

 について。テキストの練習問題に取り組み、○×の確認をして決着をつける習慣が定着しているでしょうか。テキストの問題は、現在の自分の成績に照らし、「現在の力で、決めた時間枠のなかでやれるところまでやる」という線引きをしているでしょうか。基礎内容がわかっていないのに、無理に発展的な問題をやろうとしても、空回りになってしまいます。テストの問題で、基礎レベルのものや惜しいところで間違ったものをやり直す。それがいちばんの勉強です。やればできるはずの事柄を埋め合わせることこそ、力をつけるために欠かせない勉強なのですから。

 について。決めたことを計画通りにやれるようなら、誰も苦労はありません。誰でも予定通りにはかどらないまま、その日を終えることがあることでしょう。それを放置せず、「どこで埋め合わせるか」を考え、実行に移してきたでしょうか。やらずにそのまま放置したり、中途半端な取り組みをしていたところがテストで出題され、痛い目に遭った経験は誰にもあると思います。この失敗の経験を生かしてきたでしょうか。

 勉強で得た知識や考え方は、以後の学習に生かされながら発展していきます。したがって、既習の内容を疎かにしたり、理解不十分なまま放置したりすると、新たに登場する学習内容の習得にも影響を及ぼします。それはどういうことかを、ちょっと考えてみましょう。

 

 トップダウン処理のわかり易い例をあげてみましょう。「研太君は、日曜日に家族で公園に行きました」という文を理解するにあたり、もしも研太君が公園に行った経験があれば、シーソーや噴水、砂場、ジャングルジム、花壇、池、ハトなど、公園で目にしたり遊んだりするものを、文を読んだだけで想像することができますから、その経験がない子どもよりもずっと文の理解が容易になります。

 受験勉強もこれと同じで、既習の事項をよく理解していたほうが、新出の事項を理解するうえでも容易になるということがよくあります。学習はらせん状に発展していくものだと言われますが、小学校で学んだ内容は中学校で学ぶ内容の基礎になりますし、中学校で学んだ内容は高校で学ぶ内容の基礎になります。ですから、今学んでいることを理解していなかったり、間違った知識を身につけていたりすると、以後の学習で躓いてしまうことになりがちです。このような負の連鎖を引き起こした結果が、学力不振や伸び悩みという現象です。

 上記の3つの振り返りは、学んだ事柄をしっかりと理解し、次の学習へと生かしていく流れを築くうえで参考にしていただけるのではないかと思います。

 については、お子さんから報告を聞くだけでは状況がよくわからないかもしれません。そんなときは、お子さんが後期のテキスト学習(予習や復習)に取り組む様子を見て確かめるとよいでしょう。は、初見の家庭学習や授業を聞くことよりも学力をつけるうえで重要なものです。何しろ、できなかった問題の埋め合わせこそ、進歩するために不可欠となる勉強ですから。は、勉強のみならず、ものごとへの取り組みにおいて欠かせない姿勢です。自分を常に客観視することで、今ある欠点や足りないことが見えてくるはずです。現状の振り返りとチェックを怠らないようにしましょう。

 いよいよ後期の学習が始まりました。今回お伝えしたことをもとに、今から成果のあがる学習を実現すべく、親子で話し合ってみていただきたいですね。これまでの問題点を洗い出し、しっかりとした学習の態勢を築いてきましょう!

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わが子の着座姿勢をチェック!

2021 年 8 月 23 日

 近年は学校の夏休み期間がかつてよりもだいぶ短縮されているようです。今月の25日あたりから学校への登校が再開するお子さんが多いのではないでしょうか。夏休みの課題はやり終えましたか? 体調を崩しているお子さんはおられませんか? 元気で登校日を迎えられますように。

 今回は着座姿勢と学習の成果との関連性についてお伝えしようと思います。学習成果は、何をどう学ぶか、学習意欲が高いかどうかと関連づけて捉える人が多いと思います。無論、それは間違いではありません。しかし、着座姿勢の良し悪しと関連づけ、子どもに注意や助言をする大人は意外と少ないのではないでしょうか。

 これから専門家の見解をご紹介しようと思いますが、その前に筆者が指導現場にいた頃、着座姿勢と学業成績との関連で印象に残っていることがありますのでご紹介しておきます(以前もご紹介した記憶があるので、二度目のかたがおられたらお許しください)。

 ある年、6年生の男子クラスの授業をしているときにふと気づいたことがあります。それは、ある列(縦の列5名)の男の子の背筋が全員ピンと伸びており、実に清々しいのです。授業を聞く態度も文句のつけようがなく、いつも熱心に筆者の説明や問いかけに耳を傾けてくれました。こういう子どもばかりならありがたいのですが、男子の場合は必ずしもそうでなく、授業が始まってすぐに頬を机に付けたり、体をねじって椅子の背もたれに体を預けたりするお子さんがいます(もちろん、目に余るようなら注意をします)。

 彼らの成績はと言うと、押しなべて良好で、全体の1番を取るお子さんはいなかったものの、トップランクかそのすぐあとくらいを推移していました。そのような成績でしたから、入試においても全員が第一志望校に合格しました。それ以来、彼らのその後を知る機会はありませんでしたが、あるとき、ひょんなことから彼らのうちの4人が、日本最高峰の国立大学に進学しているという話を耳にしました。あの背筋のきちんと伸びた気持ちのよい着座姿勢はだてではなかったのです。

 子どもの姿勢が脳の働きに影響を及ぼすことについて、専門家が言及しておられるのでご紹介します。以下は、福岡教育大学名誉教授の永江誠司先生の著書(「子どもの脳を育てる教育」)からの引用です。

 子どもの姿勢と脳の活性化とは密接な関係があります。それは、姿勢が悪いと十分な酸素を脳に供給できなくなるからです。背筋をしゃんと伸ばした子どもと、前かがみで猫背の姿勢を比較してみてください。どちらが、しっかりとした大きな呼吸ができるでしょうか。背筋がしゃんと伸びた子どもは、しっかりと大きな呼吸ができ、脳に十分な酸素を送り込むことができるでしょう。その分、脳の活性の度合いが高まるのです。 ( 中略 )

 今の子どもの家庭生活を考えてみると、外で遊ぶことが少なく、家でテレビやビデオを見たり、ゲームをして遊んだりと、座って過ごす時間が多くなっています。座った姿勢というのは、背筋が曲がっている状態です。この状態は脳への刺激を弱めてしまうのです。人の背筋は、脳のしっぽのようなものです。背筋の内側の脊椎骨の中には中枢神経系である脊髄が通っていて脳につながっています。したがって、座って背筋が曲がっていると脳に刺激が行きにくくなり、必然的に活動が低下してしまうのです。

 おたくのお子さんの座ったときの背筋はちゃんと伸びていますか? 一度夕食のときにでも、食卓の椅子に座っているお子さんの姿勢をチェックしてみてください。体を捻じ曲げたり、猫背になっていたり、足をブランブランさせていたりするようでしたら、この機会に背筋を伸ばした着座姿勢を心がけるよう助言してあげてください。

 とは言え、「背筋を伸ばして座ることが難しい」というお子さんもおられるかもしれません。それはやる気がないからだというわけではありません。上記引用文の著者によると、運動が足りていないからのようです。背筋の力は運動によって強化されますが、運動不足の子どもは背筋よりも腹筋の力のほうが勝ってしまいます。そのため猫背になりがちで、呼吸したときの酸素供給が不足し、脳の働きに悪影響を及ぼすことになります。

 おたくのお子さんは、運動が足りていますか? 引用文の( 中略 )とした部分には、「正しい姿勢を取ることは、筋肉に無駄な緊張がなく、体のバランスを取るのに有効です」とありました。効率のよい勉強を実現するには、運動も欠かせないということなんですね。運動と縁のないお子さん、運動が苦手なお子さんの場合、背筋を鍛えるストレッチを1日10分前後でもよいから試みてはいかがでしょうか。ネットなどで検索すれば、よい方法が見つかるかもしれません。

 さて、もう少し小学生の運動についてふれておきましょう。以前、弊社の会員家庭のお子さんを対象にした調査を実施したところ、スポーツをしながら塾通いをされているお子さんがかなり多いということがわかりました。弊社の中学受験指導の対象は小学校の4~6年生ですが、この年齢は体がどんどん成長していく時期と重なります。上述のように、運動をすることで背筋の力が強化されるということも併せて考えると、スポーツは受験勉強の妨げになるものだと考えるのではなく、いかにして上手に両立させるかという観点でとらえるのが妥当なのではないでしょうか。

 スポーツ(運動)は成長ホルモンの分泌を促し体の成長を引き出すとともに、ストレスの解消にもつながります。今特に運動らしいことをしていないお子さんは、どうしたらよいでしょうか。今から慌ててスポーツを始める必要はありません。ただし、少しでも歩くことを心がけましょう。もしも可能なら、安全な散歩コースを見つけ、少し長めの散歩をするとよいと思います。

 なぜかというと、散歩をするだけでも体の健康維持によい影響がありますし、長めに歩くだけで大脳の働きが活発になります。また、脳内の血流が通常の10倍になると言われます。血流の増加は、酸素や栄養素を脳により多く補給することになり、脳にある老廃物の除去や脳の活性化に貢献してくれます(これは、前出の永江先生の著述から情報をいただきました)。

 運動も上手に取り入れて、心と体のバランスのとれた充実した受験生活を実現しましょう!

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親子で言葉の問題に挑戦!

2021 年 8 月 18 日

 夏休みも残り少なくなってきました。例年なら、お盆は帰省ラッシュでにぎわいますが、コロナ禍の昨年や今年は移動もままなりません。どこにも出かけずに家族一緒にお盆を過ごしたご家庭も相当数おありではないかと思います。

 もうじき子どもたちの周辺は慌ただしくなってきます。お気づきでしょうが、大概の子どもは夏休みの課題をやり残しており、取り組みのピッチを上げざるを得なくなるからです。まして、近年は夏休みを速めに切り上げる学校が増えています。弊社会員家庭のお子さんにしても、学校の課題だけならさほど困ることはないでしょうが、夏休み後半の講座への通学や、受験生用の家庭学習課題もあり、今から夏休みが終わるまでの期間は忙しい毎日を過ごすことになるのではないでしょうか。

 今回は、お子さんの言葉に対する興味や関心を高めるきっかけづくりについてご提案してみようと思います。と言ってもさほど負担になることではありません。具体的には、夕食後のリラックスタイムを利用して、今からご紹介する言葉の問題に親子で取り組んでいただくだけです。堅苦しい雰囲気ではなく、家族団欒の楽しい時間にしていただき、お子さんにとってよい刺激がもたらされればと期待しています。

 これに関連して思い出したことがあります。言葉遊びについて、5年以上も前に書いた記事がその後も多くの方々に読まれていることに気づきました。1日300~400件アクセスを記録したこともあります。言葉遊びは知的な刺激を楽しむ手段の一つとして人気があるからでしょう。

 そう言えば、かれこれ30年近く前だったかと思いますが、ラジオで大学の先生が言葉の面白さについて語っておられるのを耳にしたことがあります。「ハラサンシンダは、『原三振だ』(巨人の原監督の現役時代を話題にしたもの)とも『原さん死んだ』とも取れます」「オショクジケンは、『汚職事件』とも、『お食事券』とも取れます」などが例にあげられていました。他にもあったのですが、あまり面白くないものしか思い出せなくて残念です。また、「枯れ木も山の賑わい」という言葉を間違って使用すると、とんでもないことになるという例を語っておられました。大学の卒業生がOB会を計画し、恩師に招待状を送りました。その文面が、「先生、卒業して20経ちました。『枯れ木も山の賑わい』と言いますから、奮ってご参加ください」というものだったという話です。このほか、「情けは人の為ならず」や「転石苔をむさず」などは二通りの解釈ができる諺の例として紹介されていました。

 脱線が続いてしまいました。では、次の問題にお子さんと一緒に答えてみてください。5~6年生でも答えられそうなものを選んだため、保護者には簡単すぎるかもしれません。いずれも「国語力トレーニング 400問」(生活人選書 NHK出版)より引用しました。

1.「他山の石」という故事成語の意味はどれですか。
 ①自分とは無関係な物事

 ②人のよくない言行も、自分を磨くのに役立つということ
 ③人のよい点を、自分の行動の参考にするということ


2.つぎのうち、慣用句として正しいのはどれですか。
 ①白羽の矢が立つ
 ②白羽の矢を射る
 ③白羽の矢を取る

3.つぎのうち、性質が異なるのはどれですか。
 ①衣食住
 ②具体案
 ③真善美

4.つぎの四字熟語のうち、正しい漢字を使っているのは
  どれですか。
 ①五里夢中
 ②五里霧中
 ③五里務中

5.つぎのなかで、慣用句として正しくないのはどれですか。
 ①尻が据わる
 ②腰が据わる
 ③腹が据わる

6.つぎのなかで、まちがった言いかたをしているのは
  どれですか。
 ①頭が上がらない
 ②頭をかしげる
 ③頭に血がのぼる

7.つぎのなかで、まちがった表現の文はどれですか。
 ①彼のほうから先に、口を切った。
 ②今回も、彼が話の口火を切った。
 ③まず彼が唇を切って、議論が始まった。

8.つぎのうち、正しい表現の文はどれですか。
 ①開演を、今や遅しと待っている
 ②開演を、今は遅しと待っている
 ③開演を、今も遅しと待っている

9.つぎのうち、正しい表現の文はどれですか。
 ①戦いの火ぶたが、切って落とされた
 ②戦いの火ぶたが、落とされた
 ③戦いの火ぶたが、切られた

10.つぎのなかで、まちがった言葉の使いかたをしているのは
  どれですか。
 ①全然問題ないよ

 ②全然大丈夫だよ
 ③全然だめじゃないか

 は、中国の昔の詩集に由来します。よその山に転がるつまらない石も、自分の宝石を磨くのに役立つということから、他人のつまらない行動も自分という人間を磨くのに役立つという意味に転用されるようになりました。今年、ある政党の要職にある人物が、身内の政治家の過ちを指して「他山の石として…」と語り、物議をかもしましたね。無関係な人の言動に対して用いるべき言葉ですから、「その言いかたはおかしい」と大勢の人が感じたのでしょう。 正解→②

 は、日本の伝承から来た言葉です。いけにえを求める神が、これと思った娘のいる家の屋根に白い羽の矢を立てたことに由来します。転じて、多くの人のなかから犠牲者として選ばれる、あるいは、多くの人のなかから特に選ばれるなどの意味で使われるようになりました。 正解→①

 は、①と③は独立した言葉が三つ並んだものですが、②は、「具体」が「案」を修飾しています。 正解→②

 は、後漢の張楷が五里に渡る霧を起こしたという言い伝えから、方向を失うという意味に転じ、状況が掌握できず見通したが立たない様子を言い表すようになりました。 正解→②

 について。「腰が据わる」は、どっしりと構え、落ち着いている様子を表す慣用句です。「腹が据わる」は、ものごとに動じることなく、落ち着いている様子を言います。似た意味の言葉ですね。「尻が据わる」という言いかたはありません。 正解→①

 について。①の「頭が上がらない」は、「この人にはかなわない」という気持ちから、引け目を感じている様子を表します。③は子どもでもよく使いますね。カッとなって腹を立てる様子を言います。②は「首をかしげる」と言うべきです。 正解→②

 について。「口を切る」「口火を切る」という言葉はありますが、「唇を切る」という言葉はありません。以前、「唇を切る」を、慣用句のご答例として扱ったことがあります。そのとき、一人の子どもに「先生、唇を切ったら痛いよね。だからこれはおかしいよ」と言われ、思わず笑ったことを思い出しました。 正解→③

 について。「今や」は、「今ではもう」という意味で、「今や遅し」は、「今ではもう遅いくらいに感じる」と言った意味合いになります。「今か、今か、何と遅いことよ」と、待ち焦がれる様子を表す言葉です。 正解→①

 について。「火ぶたを切る」という言いかたはありますが、「火ぶたを落とす」や「火ぶたを切って落とす」という言いかたはありません。「火ぶたを切って落とす」は、「幕を切って落とす」が誤用されたものだと言われます。何かが始まる様子をとらえた言葉です。 正解→③

 10について。最近は、若者だけでなく、結構な大人ですら「全然いいよ」などというようになりました。通常の言いかたを崩す斬新さがあるうえ、肯定の気持ちを強める効果があるからでしょうか。しかし、本来「全然」は、後に打消しの言い回しを伴う言葉ですから、②はやはり間違った言いかたです。ただし、やがては②のような言いかたも認められるようになるかもしれませんね。 正解→②

 

 いかがでしたか。お子さんにはまだ難しかったかもしれません。2~3問でもできていたら、大いにほめてあげてください。間違っていたり、わからなかったりした問題は、添付した説明の文を参考にして、お子さんにかみ砕いて教えてあげていただけるとありがたいです。それをきっかけに、ネットで言葉の検索をしたり、辞書を引いてみたりするのも面白いと思います。お子さんが言葉に興味をもつきっかけにあるといいですね。

 上記の問題は真面目な言葉の問題ですが、言葉をかけて遊んだりすると、お子さんはもっと喜ぶかもしれませんね。駄洒落遊びだってバカにできません。親子一緒に駄洒落を考えてゲラゲラ笑った後、ふとわが子を見ると勉強の支度をしており、いつもよりちょっとやる気になった様子が感じられることがあります。言葉に関する知識を増やすことは、国語力アップにもつながります。そういった流れを築くきっかけにしていただければ幸いです。

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子どもの頃のほめられかたが人生を決める?

2021 年 8 月 10 日

 早いもので夏休みも後半を迎えています。高学年部門(4~6年生)では、前半の講義形式の講座を盆前に終了し、盆明けからは演習形式の講座へ移行します。低学年部門(1~3年生)の夏の講座は盆前にすべて終了します。3年生には、「ぐんぐんワーク」という家庭学習用教材を配布していますので、盆明けからの家庭学習に組み入れていただきたいと思います。

 蒸し暑い夏休みとは言え、エアコンのある部屋で勉強すれば問題ないように思えますが、冷房の効いた部屋と、そうでない場所とを行き来すると体がダメージを受けてしまい、結局ダラダラと集中力を欠いた勉強に陥ることになりがちです。無用の外出は控えめに! 勉強にあたっては予め学習に必要なものを整えておき、決めた時間になったらウロウロせず集中して取り組むようお子さんを促してあげてください。今の時期は、長くやってもその割に効果は薄いものです。「集中型」の勉強を心がけていただきたいですね。

 さて、弊社では子どもたちの自律的学習の増進に向けて、ご家庭との連携を深めるため、ワークショップ形式の催しを定期的に実施しています(現在はコロナ禍にあって、実施していません)。そのとき、保護者の方々に「将来、お子さんにはどんな人間に成長してほしいですか?」とお尋ねすることがよくあります。その願いと呼応した家庭教育のありかたを考えていただくためです。

 すると、多くの保護者は「何事もあきらめず、やり通す人間になってほしい」「責任感のある人になってほしい」「信念をもって生きていく人に」「困難に負けない人間に成長してくれたら」など、いろいろな回答をくださいます。これらは「前向きな人間に」という共通の願いが込められているように思います。みなさんはどうですか? 今一度、お子さんの成長に対する期待がどのようなものかを、振り返ってみてはいかがでしょうか。

 アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース氏の著書に、「おとなになって成功や失敗をしたとき、その原因を自分の才能に結びつけるか、それとも努力に結びつけるかは、子どものころの『ほめられ方』によって決まる確率が高い」という指摘がありました。子どものころ、自分のしたことを努力と結びつけ、「がんばったからだね」とほめられるか、それとも「才能があるんだね」とほめられるかで、子どもの内面に宿るものが変わってくるというのです。

 以下は同じ書物からの引用ですが、どのような対象年齢にも適用できる声かけの例として紹介されていました。ちょっと目を通してみてください。

 左側が、能力を軸に置いた声かけで、右側が努力を軸に置いた声かけであることがわかりますね。能力という視点から大人が子どもを評価すると、たとえそれがほめ言葉でも子どもによい影響を与えません。「いつもほめられないといけない」というプレッシャーを子どもが感じ、無難な結果を得られる行動を選択するようになりがちです。失敗を恐れるあまり、冒険したり挑戦したりする姿勢を失ってしまうのです。いっぽう、努力という視点から評価された子どもは、たとえ失敗をしても、「つぎにがんばればうまくやれるかもしれない」という気持ちを支えに、「きっとがんばればやれる!」と、希望をもつことができます。このくり返しが、何事も最後までやり抜く姿勢につながるわけです。

 また、「何事も才能で決まる」と教えられた子どもは、たとえ人生で成功者になれたとしても、他者の気持ちを斟酌する姿勢を欠き、うまくいかない人、弱者に手を差し伸べる思いやりをもたない人間になるおそれが多分にあります。政治家などに、そういう傾向を感じる人物をよく見かけますね。いっぽう、「努力すればやがてはうまくやれる」と教えられた子どもは、成功者になってもうぬぼれることはありません。うまくいかないで苦しんでいる人に手を差し伸べる温かさを携えた、すばらしい人格のもち主になることが予想されます。上表の対応例は、実場面で応用できる要素が十分にあると思います。ぜひ参考にしていただきたいですね。

 さて、筆者はかつて地元新聞社のカルチャースクールで、知育をテーマに掲げた講座をもっていたことがあります。そのときも、「努力の度合いを尺度に置き、結果に関わらず努力の跡が感じられたなら子どもを大いにほめてやりましょう」「たとえ成績が上がっても、努力によるものでなければ、親は単純には喜ばないということを姿勢で示しましょう」といったことを参加された保護者にお伝えし、実践の結果をレポートに書いてもらったことがあります。以下はその一部です。

今までよくないほめかたをしていたと思います。そこで、サッカーでがんばっていたり、勉強でいい点を取ったりすると、具体的に子どもの努力を見つけて声かけをしました。すると、本当に嬉しそうに笑顔になってくれます。「今度もがんばるよ」という一言が印象的でした。
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運動会で「よくがんばったね。とってもカッコよかった!!」と言うと、満足そうに「うん」と言っていました。本心そう思ってほめるときは上手くいくのですが、「これぐらいでもほめなきゃ」と思ってほめると、「あっ、そう」で終わってしまいます。
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私は自分でもよくほめるほうだと思っています。しかし、この講座で学び、私のほめ方は悪いほめ方で、子どもに評価を下し、レッテルを貼るほめ方だったと気づきました。「いい子だね」ではなく、子どもがしてくれたことを素直に喜び、頑張りを具体的にほめるようにしました。すると不思議なことに、自分から進んで手伝いをしてくれるようになりました。お皿を洗ってくれた時、「ありがとう。水切りがおかあさんより上手よ」と言うと、照れ笑いし、「また洗うよ」と言ってくれました。
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「いい子」とか「優しい子」とかを言わないようにし、よいほめかたをするようにしたら、子供にプレッシャーがなくなったのか、伸び伸びしてきたように思います。
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「褒める」にも言われて嫌な褒め方やプレッシャーになる褒め方があるんですね。仕事で疲れている私を見て、子供は「僕にできることは手伝うよ」と言ってくれます。「ありがとう。助かるわ」と素直に感謝の言葉が出たときは、お互いプラスのエネルギーが湧いてきます。しかし、二人とも疲れているときは、私に余裕がないために余計なことを言って嫌な気持ちにさせていました。私は子どもの言葉で癒されていたのに、子供は私の言葉で癒されることはあまりなかったのではないかと反省しました。

 親子関係は毎日の積み重ねで築かれます。また、子どもの人間性も、毎日の親子のやりとりを通して確立されていきます。努力を見てほめる親の元で育つと、子どもは「自分はほんとうに努力していたか」を自らに問いかけ、自分の行動を適切に評価しコントロールできる人間に成長していけるのですね。

 上述のダックワース氏の著書に、アメリカの某有名人が言ったとされる言葉が紹介されていました。それは、「子どもは大人の言うことを聞くのは得意じゃないが、まねをするのは抜群にうまい」というものでした。大人のほめる姿勢が一貫していればそれはそのまま子どもの価値観として受け継がれるし、行き当たりばったりのほめかたをくり返していると、子どもはその場その場を適当にやり過ごしてしまうタイプの大人になるかもしれません。

 お子さんの受験生活を見守り応援する生活は楽ではありませんが、成長の途上にあるお子さんとのやり取りは、そのままお子さんに写し取られるものです。今こそ親のがんばりどころと心得、悔いの残らぬ家族生活を送っていただきたいですね。

 夏休みは、家族が一緒にいる時間がいつもより多い時期です。イライラすることも多いでしょうが、一緒の時間を大切にお過ごしください。

※上表は「やり抜く力」アンジェラ・ダックワース/著 ダイヤモンド社(2016年)より引用しました。
※今回の記事内容は、7月5日に掲載した記事と内容的にリンクしています。よろしければ、そちらもお読みください。

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カテゴリー: アドバイス, 子どもの自立, 子育てについて, 家庭での教育, 家庭学習研究社の特徴, 小学1~3年生向け