12歳の挑戦に幸あれ!!

2023 年 1 月 28 日

 広島県内の主要中学校の入学試験がまもなく終わろうとしています。ただし、本日(1月28日)に行われる県立広島中学校の入会者選抜(適性検査)をめざしている受験生も多数おられることでしょう。ベストパフォーマンスを発揮されますように!

 広島学院、修道、ノートルダム清心、広島女学院等、広島の有力私立一貫校の入試はすでに終了し、合格者の発表も行われました。あとは若干の補欠合格者に繰り上がりがあるかどうかといった段階です。弊社の会員の入試結果も掌握していますが、補欠からの繰り上がり合格者の確認を終えていませんので、公表はもうしばらく先になろうかと思います。ご了承ください。

 入試を終えて無事に合格の夢を叶え、万歳の声をあげたり、ほっと胸を撫でおろしたり、無言で静かに万感の思いを噛みしめたり…。結果は同じでも、表情や態度への表れは受験生のタイプに応じてそれぞれに異なっていることでしょう。しかし、念願が叶った喜びはみな同じです。みなさん、ほんとうによくがんばりましたね。そして、おめでとうございます!

 受験生の子どもたちは、この日のために長い期間、勉強以外のやってみたいことや楽しみを我慢し、自由に使える時間を制限して受験勉強に打ち込んできました。受験までの道のりは誰にとっても決して平たんではありません。人がうらやましがるような成績のお子さんでも必ず好不調の波はありますし、受験までのプロセスで様々な葛藤を抱えるものです。まして、成績が上がったり下がったりを繰り返してきたお子さんは、揺れる感情に翻弄されることも多く、そのたびに「負けるもんか!」と歯を食いしばってやる気を鼓舞し、受験勉強を投げ出したい気持ちを克服されたのではないでしょうか。

 中学受験の主役は、言うまでもなく入試に臨むお子さん自身です。ですが、まだ独り立ちには程遠い年齢の小学生の受験は、高校や大学をめざす生徒さんのそれと同じわけにはいきません。何かあるたびに取り組みや生活の様子が変わるわが子をいかにサポートするか、そのつど保護者は悩まれたことでしょう。外ならぬわが子のことゆえ、山あり谷ありのプロセスを見守るのは辛いものです。まだ小学生の受験ですから心配の種は尽きません。

 調子が上がったときのわが子を見るのは親としてうれしいものです。その成長ぶりに目を細めたこともおありだったでしょう。しかし、よいことよりもはるかに多いのが、未熟さをさらけ出す場面です。成績が低迷したり、取り組みに異変を来したりすることはしょっちゅうですし、がんばっているのに成績が伴わないで苦しむことも少なくありません。なかには、遊びにかまけたり、友達付き合いに気持ちが傾いてしまったりするお子さんもいます。そういうことがあるたびに心配し、叱ったり、励ましたり、一緒に残念がったり落ち込んだり、物言わぬわが子に静かに寄り添ったり…。親だからこその苦労です。その意味において、保護者、とりわけ生活面でのフォーローもかねて世話をされてきたおかあさんには、心より慰労の言葉をかけて差し上げたくなります。ほんとうにお疲れさまでした。

 ただし、筆者は家庭学習研究社に在籍して35年以上になりますが、中学受験の世界に長い間籍を置いてつくづく思うことがあります。それは、「中学受験には勝者も敗者もない。中学受験をしたことのほんとうの成果は、この後の人生で少しずつ明確になってくるのだ」ということです。

 受験というものの宿命ですが、合格する受験生もいれば、合格の夢の叶わない受験生もいます。しかしながら、合格した受験生は必ず以後の人生が保障されるのかというと、決してそうではありません。また、合格できなかった受験生は以後もずっとその結果を引きづって辛い思いをするのかというと、これまた決してそんなことはありません。中学高校の先生がたに伺っても、「受験をやり直すと、受験生の順位はその都度相当変わるでしょう」とおっしゃいますし、さらには「入学時の成績の序列がそのまま6年間継続されるということはありません」とはっきりおっしゃいます。つまり、たとえ入学試験であっても、テストでほんとうの子どもの力は測れませんし、ましてや先の人生を占うことなどできないのです。受験生活の成果として信じられる確かなもの。それは努力の積み重ねで培われた、ものごとに取り組む姿勢ではないでしょうか。これこそが中学受験で得た宝物です。これまでの努力は少しも無駄にはなっていません。これからも努力する姿勢を決して失わないでいただきたいですね。

 毎年のように保護者にお願いしていることがあります。それは、これまでの受験生活を親子で振り返ってみることです。志望校に受かったお子さんにも、受験生活での反省点はあると思います。逆に、志望校進学の夢が叶わなかったお子さんにも、受験生活で得た貴重なものがあるはずです。成果と反省点を検証し、新たな中学校生活に臨んでいただきたいですね。

 個人的に筆者が思う中学受験をすることの価値とは、大まかに言うとつぎのようなものです。

 

①学習の習慣や、計画に沿った行動様式が身につく。
②決めたことをやるのが当たり前だという実行力が養われる。
③自分の取り組みを振り返り、自分で修正する力が養われる。

 

 この三つは、長い人生で自己の夢を実現させたり、有意義な生活を送ったりできるかどうか左右する重要な要素です。これらを養う格好の場が中学受験への挑戦だったのです。お子さんが最後まで受験勉強を継続されてことをまずはほめていただきたいのですが、そのうえで上記の三つについてどのぐらい身についたかを一緒に振り返ってみてください。

 なかには受験の結果が期待通りにならず、気持ちが塞いでいるお子さんもおられるでしょう。そんなお子さんの保護者におかれては、気持ちの落ち着いたころ合いを見計らい、一緒に受験生活を振り返っていただきたいですね。どのお子さんにも、受験生活を通じて上記の三つについて進歩しておられるのは間違いありません。そのことを指摘したうえで、最後まで努力してきたことをぜひ喜び褒め称えてあげていただきたいと存じます。そして、自信と希望を胸にして新たに始まる中学校生活へと送り出してあげてください。

 

受験で身につけた努力の姿勢こそ宝物。12歳の挑戦に幸あれ!

            

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2023低学年部門「体験学習会」のご案内

2023 年 1 月 20 日

 広島県内の中学入試がいよいよ佳境に入ってきました。1月21日(土)は修道と広島女学院、22日(日)は広島学院とノートルダム清心、23日(月)は広島大学附属の入試が行われる予定です。これらの中学校は昔から広島の受験生にとってあこがれの存在です。今も変わりません。第一志望校にしている受験生がたくさんおられることでしょう。心身のコンディションを整え、全力を尽くしましょう!

受験生のみなさんの健闘を心からお祈り申し上げます。

 

 今回は、受験対策を始める前の年齢のお子さん、具体的にはこの4月から小学1~3年生になるお子さんの保護者に向けたご案内です。「中学受験を考えている。今からどんな勉強をしておけばいいのか知りたい」というかたもおられるかと思います。このようなかたのためにあるのが弊社の低学年部門です。以下は、指導の基本的な方針と、講座の特色を簡単にご説明したものです。

 

①「低学年部門」の学習指導方針

1.子どもに命令して思うままに動かすような指導は行いません。弊社の指導担当者の役割は、学ぶ楽しさを子どもに実感させることであり、それによって学びの能動性を引き出すことにあります。こういった趣旨に基づく授業を起点とし、先々の学力伸長が見込める子どもの育成にあたっていきます。

2.保護者には上記の考えをご理解いただき、保護者と学習塾との連携で子どもの望ましい学習姿勢を築いていきたいと考えています。やらされ勉強ではなく、子ども自身のがんばりで学力を伸ばしてこそ、子どもの将来につながると考えるからです。

3.少人数集団指導という点では、玉井式もジュニアも同じです。週1回の指導ですが、一人ひとりの長所と短所をなるべく具体的に掌握し、進歩しつつある点、改善すべき点をしっかりと掌握した指導の実践を心がけています。

4.指導担当者には、上記の考えを理解したうえで、個々の特性や能力を活かした授業の実現に向けてがんばってもらっています。特に大切にしているのは子どもたちの授業への積極的な参加意識です。そのせいか、ほとんどの子どもたちが、塾への通学を楽しみにしてくださっています。

5.低学年部の通学は週1日が原則であり、授業だけでは十分な成果は見込めません。そこで、玉井式もジュニアスクールも、家庭学習用の教材を用意し、毎日継続して取り組んでいただくようにしています。授業で学ぶ楽しさを実感し、家庭で自学自習の習慣を築いていく。この二つがかみ合うことで強固な学力基盤を築いていきます。

 

②「玉井式国語的算数教室」 1~3年生対象

 高学年になってから顕在化する学力差の原因になりがちな資質やセンスに着目し、それらを重点的に伸ばすのがこの講座の最大の特色です。つまり、オールインワンの講座ではなく、明確な指導意図(イメージング力の育成)をもった講座です。具体的にはつぎのような成果を意図しています。

1.算数の課題の場面をイメージし、自分で立式できる能力を育む。

2.図形の識別能力、イメージ操作能力などを引き出す。

3.長文読解力を養う(著述内容をイメージし、追体験しながら楽しめる
  力を養う)。

 玉井式は必ずしも学習指導要領に沿っておらず、高学年の学習内容をシンプルな形で先取り体験させている点がジュニアスクールとの違いです。また、3年生になるとかなり難しい課題もあります。ただし、1~2年生からこの講座になじんでいるお子さんは、最後まで楽しく通ってくださっています。高学年の受験部門(4~6年生)でも、トップランクの成績をあげているお子さんが相当数おられます。

 玉井式の特色の一つは、授業にアニメーションを活用していることです。キャラクターを中心として展開する物語が算数課題となっており、具体的な状況で数に関わる様々な課題を解決していく学習を楽しく体験していただけます。また、図形もアニメーションの特性を最大限に活用し、短い時間で効率的に図形の感覚的素養に刺激を当てる体験を提供しています。子どもたちにとって、アニメーションを介した学習は掛け値なしに楽しいもののようで、全員が食い入るように画面に集中し、充実した学びの時間を実現している点が自慢です。

 ただし、アニメーションが授業を行うわけではありません。アニメーションはあくまで学習を有効にするためのツールであり、授業自体は専門の先生(授業担当者)が行います。担当者は一人ひとりの授業参加の様子を掌握し、全員が積極的に授業に加わって成果をあげるよう導いていきます。

 

③「ジュニアスクール」 3年生対象

 ジュニアスクールは、玉井式とは対照的に算数と国語のバランスをとった内容の講座であることがその特徴でしょう。学習の流れは基本的に指導要領に沿っており、難しい内容を扱うよりも、基礎・基本の習得を大切にしています。また、先々も長く続く集団指導を視野に入れ、積極的な授業姿勢を育てるなど、集団指導への適応性の高い子どもの育成を柱に掲げています。

1.発言・発表の場を多く設け、集団指導への適性を育てる。

2.低学年期の子どもの特性を踏まえ、具体物を用いた指導を行う。

3.受験対策の前提となる基礎学力を養う。

 以前、ジュニアスクールの説明会で、「低学年期こそ、コミュニケーション能力を育む重要な時期だ」とお伝えしました。すると、保護者から大きな反応がありました。中学校進学後の学力形成や社会参加において、コミュニケーション能力は決定的な役割を果たしますから、当然のことでしょう。

 また、算数の基礎基本である「数の操作能力」を磨くとともに、学習場面で出てくる数のもつ意味を理解し、「立式する力」の育成に努めています。難しい内容の学習を訓練で形式的に解けるようになるよりも、基本をじっくり育てることを大切にしている点を評価する声もかなりいただきました。

 ジュニアスクールでは、「読み書きの態勢づくり」を大切にしています。特に読む力は、中学受験では全ての教科の成績に大きな影響を及ぼします。弊社では「音読練習帳」を独自に作成し、家庭で音読練習に取り組んでいただくなど、読みの態勢づくりに力を入れています。

 また、家庭学習の習慣づけ、基礎学力保障という観点から、家庭勉強に力を入れているのも、ジュニアスクールの特徴です。ただし、家庭学習の実践にあたっては保護者のご理解とサポートが欠かせません。玉井式よりもやや保護者のサポートが多めになることをご承知おきください。

 ジュニアスクールの出身者も、高学年になってからの受験勉強でトップランクの成績を収めている児童が一定数います。ジュニアスクールには通学のない「ホームワークコース」がありますが、このコースからも高学年の部門で優秀な成績を収めている児童が少なくありません。

 

 1月末から2月にかけて、弊社の各校舎で低学年部門の「体験授業会」を実施いたします。ちょっと興味をもってくださっただけのご家庭も、「試しにわが子がどう反応するか確かめたい」というかたも歓迎いたします。以下は、日程を簡単にお知らせしたものです。興味をおもちになったかたは、ホームページに詳しい案内がありますので、それをご覧になったうえでお申し込みください。

 

2023「低学年部門」体験授業会の日程 ※画像をクリックすると拡大表示されます

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カテゴリー: お知らせ, ジュニアスクール, 小学1~3年生向け, 玉井式, 行事のお知らせ

いよいよ入試本番です。悔いなき挑戦を!

2023 年 1 月 14 日

 広島県内の中学入試シーズンはまもなく佳境に入ってきます。これから次々と有力中学校の入試が行われます。長い期間にわたる受験生活でしたが、ついに来るべきときがやってきました。これまで積み重ねてきた努力の総決算が志望校入試への挑戦です。お子さんが全力を出し切り、笑顔で入試を終えられますように!

 入試に臨むお子さんをおもちの保護者に申しあげます。受験生は何分にも人間として完成途上の小学生す。「これまで完璧にがんばってきた」という手応えを得ておられるご家庭は少ないかもしれません。家庭勉強の比重が高く、塾が受験対策を丸ごと引き受けるシステムを採らない家庭学習研究社での受験対策は、子どもの未熟さをどれだけ受け入れられるか、辛抱できるか、という葛藤の連続であり、親は子どもとの間合いを絶えず考えねばならない受験生活であったろうと思います。それは、親にとって大変負担になることです。「わが子は、ほんとうによくやっていた。もはや言うことはない」と、思っていらっしゃるおとうさんおかあさんが、どれだけいらっしゃるでしょうか。

 しかし、このような受験生活だからこそ得られるものの価値については、これまで幾度となくお伝えしてきたと思います。それは、弊社の会員家庭の子どもたちが、それぞれの努力に応じてすでに得ておられます。おとうさんおかあさんにおかれては、未熟な面の多い年齢の子どもがここまで受験生活を全うしてきたことを、まずは、大いにほめ称えてあげていただきたいと存じます。そして、「結果を恐れることはない。入試であなたが全力を出し切ることが、今親としていちばん望んでいることなんだよ」と、優しく熱く激励してあげてください。お子さんが重圧をはねのけ、胸を張って入試本番に臨めたなら、自ずとよい結果を引き寄せられることでしょう。

 ここに至るプロセスで、おとうさんおかあさんは大変なお骨折りをしてこられました。とりわけ、おかあさんには一言では言い表せないほどのご苦労がおありだったことでしょう。受験に向けた目標意識ややるべきことをやり遂げる強い意志が定まっていない子どもの様子は、見ているだけでももどかしくストレスになるものです。自覚もやる気も足りないわが子を叱咤激励したり、自信を失いかけているわが子を優しく励ましたり、遊びたい盛りの子どもがやりたいことを我慢して勉強している様子を不憫に思ったり…。それぞれの家庭ごとに小さなドラマが数限りなくあったことは想像に難くありません。

 入試に至るこれまでのプロセスで、おかあさんが投じてこられたエネルギーは、それこそ並大抵ではありませんでした。それはわが子を愛するが故のことであり、そのご苦労の一つひとつが美しくも尊いものです。そのことに鑑みるなら、お子さんが無事に入試の関門を突破された暁には、おかあさんこそ、いちばんにほめられ慰労されるべき存在かも知れません。しかしながら、大半のご家庭にとって受験生活の山場はこれからの2~3週間です。ここで悔いを残すことがないよう、万全の体制でわが子が入試に立ち向かえるよう、最後まで気を抜くことなくサポートをお願いいたします。お子さんのこれまでの取り組みや努力を信じて、最後まで応援してあげてください。

 

入試にあたって心に留めていただきたいこと ~保護者の方々へ~

①入試結果を恐れずに立ち向かう勇気をわが子に!
ここまでがんばってきたお子さんを、おおいにほめてあげてください。そして、結果を恐れずに入試に立ち向かう勇気を吹き込んであげてください。

②入試に関するネガティブな予想を子どもに伝えない!
親の心境は子どもに敏感に伝わります。まして、「~していたら」などの愚痴をもらすと、子どもの気持ちは揺らいでしまいます。今更のネガティブな発言は禁句にしましょう。

③これまでのルーティンを壊さないように!
 平常心で入試に臨めば、自ずともてる実力を発揮できます。毎日の生活におけるルーティンを崩さず、普段どおりの生活を維持して入試本番を迎えましょう。

④夜更かしの猛烈勉強は百害あって一利なし!
今になって夜中まで勉強に打ち込んでも、体力やメンタルの維持に逆効果をもたらすだけです。今までやってきたことのおさらいやピンポイントの対策に絞りましょう。

⑤受験期間の健康管理は、親としての最後の務め。
 ①~④のまとめになりますが、わが子が入試に全力発揮できるようコンディションを整えることこそ、中学受験生の親としての最後の務めです。あれこれ気にかかることもあるでしょうが、それを逐一伝えてもよいことはありません。心身のコンディションを最高の状態にもって行けるよう、しっかりとサポートしてあげてください。

 受験当日に熱を出したり、受験直前になって精神不安定になったりするお子さんもいます。親の目の届かないところで心が揺らぐできごとにわが子が遭遇することもあります。

 そんなとき、親、とりわけおかあさんの存在が、とても重要な意味をもってきます。泰然自若として揺るがず、「今できるベストを尽くしなさい」と、励ましてあげてください。この試練を乗り越えたとき、お子さんはまた一皮むけた人間へと成長されることでしょう。

全ての受験生が悔いの残らぬ受験を実現されますように!

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今年も受験シーズンがやってきました!

2023 年 1 月 6 日

 新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 2023年が始まったばかりですが、昨日(1月5日)は、早速広島城北中学校の推薦入試が行われました。そして今日(1月6日)は山陽女学園中等部の入試(入学試験A)が行われています。以後、毎日いずれかの中学校の入試が予定されています。有力私立一貫校の入試は、1月21日(土)に修道・広島女学院、22日(日)に広島学院・ノートルダム清心で実施されることになっています。さらにその翌日(23日)は共学志向の受験生の憧れである広島大学附属の入試が行われますので、このあたりが受験シーズンのピークとなります。

 近年は公立一貫校も人気を得ています。1月15日(日)には市立広島中等教育学校、1月28日(土)には県立広島中学校の入学者選抜が実施されます。これらの中学校を第一志望にしている受験生も少なくないでしょう。

 第一志望校の入試は、これまでの努力の成果を結集して勝負をかけるときです。その日に体力と知力のバランスが最高となるよう調整していきましょう。

 ところで、厳寒期の入試においては気象状況も気になるところです。昨年の12月後半に、全国各地でかなりの大雪が降りまました。たしか12月23日だったかと思いますが、広島市北部の国道の路面に終日雪が残っていたのを久しぶりに見ました。この日の朝、いつも通り家を出たものの雪道の渋滞がひどく、勤務先への到着は3時間近く経った頃でした。これが受験生の入試日だったら大変なことになったことでしょう。年が明けてから雪は降っていませんが、これからが降雪の多い時期です。保護者におかれては気象状況をしっかり把握し、入試当日に慌てることのないようご注意ください。

 また、無理して夜中まで起きての勉強は心身のコンディションを崩す原因になりがちです。体調を崩すだけでなく、精神的にも不安定になりがちです。どなたも試験などで経験がおありかと思いますが、「あれもこれも」と手をつけていると、焦りや混乱に見舞われて実力を発揮できなくなります。

 もう一つ。受験につきものの「緊張」について。おおよそ、試験で緊張しない人などいません。大人だって緊張します。まして、12歳の小学生の受験です。「緊張に襲われたらどうしよう」と、親子共々不安な思いをされているご家庭もあるかもしれません。そこで、本番の緊張を乗り越えるためのアドバイスをさせていただこうと思います。

 

入試で緊張を乗り越えるための心得

1.緊張は受験生の敵ではなく、むしろパフォーマンス発揮に
  役立つ味方なのだと
考える。

 人間が緊張するのは、危機意識が働いたときです。すると脳のセンサーが鋭敏になり、最もよく働く状態になります。みなさんも経験がおありと思いますが、ある程度緊張がないと集中力や気合は働いてくれません。有名なスポーツ選手の言葉もそれを裏づけています。

・テニスの世界ランキング選手になった錦織選手
 「毎試合、緊張しますけれど、それは決して悪いことではないと思うし、その緊張も力に変えられるようになったら強いですよね」
・サッカーの英国プレミアリーグで活躍した岡崎選手
 「全ての試合で緊張します。重要な試合に限らず、日々の試合も全て、緊張して当然。逆に緊張しないとまずいと思います」
・アメリカのメジャーリーグで活躍したイチロー選手
 「緊張しない人はダメだと思う」(緊張は本気で集中している証拠だからということでしょう)

 緊張を恐れて逃れようとする人ほど緊張に押しつぶされて失敗しがちです。緊張を味方にできる人が実力を発揮できるんですね。「緊張は必要なことだ」と、お子さんに伝えてあげてください。

 

2.「緊張はパフォーマンス発揮に役立つ」と知っているだけ
  で、試験の成績は上がる!

 つぎのような実験の結果があります。ハーバード大学で、60人の学生を二つのグループに分けて数学の試験を行いました。片方のグループには、「緊張はパフォーマンスを高める」という説明をし、もう片方には何の説明もしませんでした。さて、結果はどうなったでしょう。

 説明しなかったグループの平均点は705点でしたが、説明をしていたグループの平均点は770点でした。つまり、「緊張はパフォーマンスを上げる」ということを知っているだけで、緊張によるマイナスの影響を取り除き、逆にパフォーマンスを上げる効果を引き出すのです。お子さんに、「緊張は実力発揮に役立つ」ということを念押ししてあげてください。

3.過度の緊張を押さえるよい方法は深呼吸です。

 それでもいざ本番になると、ドキドキがひどくなることもあります。そのときは深呼吸がお勧めです。「そんなことは知っている」と思われたでしょうか。ところが、大半の人が一気に息を吸い、一気に吐いてしまうために深呼吸による効果を得ていません。これでは呼吸が浅くなり、却って緊張を強めてしまいます。5秒かけて鼻から息を深く吸い、10秒かけてゆっくり口から吐き、さらに5秒かけて肺にある空気をすべて出し切るのです。

 なぜ深呼吸が有効なのでしょうか。交感神経が優位にあると緊張が高まり、副交感神経が優位にあるとリラックスモードになります。深呼吸は、副交感神経の働きを促進し、過度の緊張をリラックスさせてくれる効果があるからです。本番のときに深呼吸を何度か繰り返しましょう。そのときに、「自分はやれる」と心の中でつぶやくと、よりリラックスできます。

 そのほか、十分ご承知かと思いますが、老婆心ながらのアドバイスも付け加えておきます。まず試験中の服装ですが、多少寒く感じるくらいの服装が実力発揮には有効です。服装は、移動時はあったかく、試験中はやや薄着ができるよう、二段構えにしましょう。また、入試当日の朝は軽めの食事がよいとされています。それは、太古の昔から飢えが人間の危機意識を呼び起こす大きな要素だったからでしょう。脳は危険回避のために集中力を高めます。そういう状況をうまくつくることも、パフォーマンス発揮に有効なんですね。逆に、脂っこいものをたっぷり摂取したり、温かすぎる服装をしたりすると、脳の働きが緩慢になり、もてる力を発揮できなくなります。

 それから、試験会場への到着は最低でも30分早めがお勧めです。着いた直後にいったん緊張が高まりますが、おかあさんと一緒にいたり、友達と話をしたりしているうちに緊張は程よい状態になっていきます(塾関係者の応援がOKの中学校では、塾の先生の励ましも効果的でしょう)。時間ギリギリの入試会場到着、まして遅刻は絶対に避けましょう。ときおり、遅刻して取り乱している親子を見かけます。せっかくの努力が台無しにならないためにも、早めの入試会場到着を!

 中学入試は再挑戦の利かない1度きりの挑戦です。最終準備期間に至った今、最善のコンディションづくりに向けたサポートが保護者としての役割でしょう。悔いの残らぬ入試挑戦にしてあげてください。

受験生のみなさんの健闘をお祈りいたします。

※後半の緊張対策の記事は、「いい緊張は能力を2倍にする」樺沢紫苑/著 文響社 の著述を参考(一部引用)にして書きました。

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2022年がもうすぐ終わります

2022 年 12 月 28 日

 冬休みの講座が始まりました。筆者は袋町にある本部事務局までバス通勤をしていますが、今日(12月27日)もいつものように広島市北部から八丁堀方面行のバスに乗っていると、三篠校の近くのバス停で5~6人の小学生が下りていきました。歩道にもかなりの数の小学生がいて、みな一様に同じ方向に向かって歩いていました。おそらく三篠校の冬休み講座を受講する子どもたちでしょう。寒さのせいかもしれませんが、以前なら普通に見られた笑顔で会話を交わしながらの通学風景とは少し異なり、子どもたちは黙々とうつむき加減でバラバラに塾をめざして歩いているように見えました。コロナ禍故のことなのかと思ってしまいました。早くこの状態から子どもたちを解放してあげたいものです。

 さて、いつの間にか2022年も終わろうとしています。相変わらずコロナの感染問題は解消する見通しが立っていません。もうすぐ3年が経とうとしています。この間、学校の授業がしばらく中断したり、コロナ対策に多大な労力やエネルギーを投入したりすることとなりました。当然、授業で消化すべきカリキュラムもコロナ前よりも滞ります。学校は、子ども同士の活発なコミュニケーションの場としての機能も果たしていましたが、コロナ禍にあってはそれも難しくなっています。こうした状態が何年も続くと、児童期の学力形成や心身の発達に必要不可欠な環境が損なわれたなかで、子どもたちはなし崩し的に年を重ねていくことになるでしょう。それによる弊害はないのでしょうか。

 少しばかり扇情的なニュアンスを感じますが、「コロナ過が続くと教育格差が拡大する」という懸念がマスメディアから報じられています。コロナ禍で失われているものは何かを知り、必要な対策を講じることのできる家庭の子どもと、それを考慮しない家庭、あるいはどんな対策をしてよいかわからない家庭の子どもの学力差が開いていくのではないかというわけです。

 おそらく、学校は授業で賄えなくなっている勉強を補填するため、以前よりも宿題を多く出しておられるのではないかと思います。しかしながら、子どもがそれをやりこなすには、保護者の協力やサポートが必要となります。

 この記事をお読みになっている保護者にとってはさしたる問題ではないかもしれませんが、そういうことに無関心な家庭の子どもはハンディを被る恐れもあるでしょう。そう考えると、前述の「教育格差の拡大」は、荒唐無稽と一笑に付すわけにはいかない問題のように思えてきます。

 また学校や学習塾は、単に学習指導を行うだけでなく、集団のなかで子どもが刺激を互いに与えあうことで、新奇の事柄に興味をもったり、知ること学ぶことに対する意欲を高めたりする効果をもたらしています。そういった交流の場としての機能が弱まると、その影響を受けやすい家庭の子どもとそうでない家庭の子どもとでは、学びの姿勢や集団適応性、コミュニケーション能力も違ってくるのではないでしょうか。無論、コロナ禍の世の中になる以前から、そういった視点に基づく家庭教育と学校教育の連携が必要であることは、様々な教育関係者が指摘しておられます。そのことを今一度念頭に置くなら、「今、親としてわが子に何をしてやれるか」を考えてみることも必要でしょう。

 それを考えるきっかけとして、おとうさんおかあさんには、これまで以上に家庭内の親子の会話を大切にしていただきたいですね。日常の何気ない話題がきっかけとなり、子どもの成長ぶりに驚くかもしれません。今わが子が何をしているのか、何に興味をもっているのか、あるいは近未来に描いている夢があるのかどうか、いろいろなことがわかると親子の親密度も増そうというものです。

 先日、弊社のある校舎に所用で出向いたとき、たまたま筆者の知っているお子さんのことが話題になりました。指導を担当している者が、「あの子はおもしろいですね。『うちのおとうさんは、威張っているわりに、算数もろくにできないんだよ』と笑っていましたよ」と報告してくれました。「どんな問題をやっているんだい? まあ、おとうさんには簡単だろうな」と、息子さんのテキストの問題に手をつけてみたものの意外に難しく、悪戦苦闘しておられるおとうさんの様子が目に浮かんできました。男の子がそのエピソードを笑顔で語っていることからも、よい親子関係が想像できますね。5年生の今の段階で、親を頼りに勉強する段階を卒業し、自ら学ぶ一人前の中学受験生に成長している様子が目に浮かぶようでした。「優秀な成績をあげているのも当然だ」と納得したしだいです。

 親子で、すぐに解決できない問題について話し合うことの楽しさについて、数学者で作家の藤原正彦氏の著書に、こんなエピソードが紹介されていました。

 三人の息子たちが小学校や幼稚園にいた頃、我が家には発見ノートというものがあった。子供たちが生活の中で何か新しいことに気付くと、まず私に報告する。私はやや大げさに褒めあげ、ついでに「発見」の斬新さに応じて、「大発見」「中発見」「小発見」と皆に聞こえるような大声で査定し、表彰する。それを発見者がノートに記録するのである。

 (中略)「ガソリンスタンドはたいてい道路の角にあるよ」「なーるほど、それは面白い。ショーハッケーン」という具合である。発見の仕方は三者三様で、じっと辺りを観察する長男、手当たり次第に物をつかんで実験する次男、予測してから実験する三男と分かれていた。

 私も時折「発見」をした。そんな時は公平のため、息子たちが等級を判定することになっていた。息子たちと風呂につかっているとき時のことだった。「パパは今、一つ発見をしたよ」「ナーニ」「湯船の中のおならは臭い」

 息子たちは「ナーンダそんなの」とあきれたように5秒ほど笑っていたが、突然表情を堅くして唇をしっかり閉ざすと、ウメキ声とともに風呂から飛び出した。「風呂の中では、ガスがアブクの中に閉じ込められ、拡散しないまま鼻元で炸裂するからだ」とガラス戸越しに大声で科学教育をしたが、聞いてもらえなかった。

 この「発見ノート」というアイデアは、なかなか面白そうですね。子どもの知的好奇心を刺激し、新たな知見を得ることの楽しさやワクワク感を体験させる。そんなしかけをご家庭でいろいろと考えてみてはいかがでしょうか。おそらく、親からの提案でそういったやりとりを楽しむことができるのは、あともうしばらくのことでしょう。また、そういった働きかけを子どもが受け入れるのもおそらく児童期までのことでしょう。そんな「今」を、大いに生かしていただきたいですね。

 家庭が良好なコミュニケーションの場で、子どもの知的興味を刺激する場であれば、コロナ禍での子どもの知的成長に関する不安も随分解消できます。また、コミュニケーション能力の形成という点からも、家庭内会話が随分と支えになるでしょう。不幸な時期に中学受験生になった子どもたちですが、親の愛情や工夫があればこの苦難多き時代を乗り越え、立派に成長していけることでしょう。

 よい年をお迎えください。

※上記引用部分は「祖国とは国語」藤原正彦/著(新潮文庫 2006)によります。

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