2009 年 5 月 のアーカイブ

筋の通った叱り方なら、子どもも大歓迎?

2009 年 5 月 11 日 月曜日

 子どもを叱ることに関する話題を再び取り上げます。ある年の秋、6年生の男子クラスで模擬試験の成績を返していたときのことです。「おかあさんに叱られそうな人はいないかな」と軽く冗談を言ったら、教室中が騒然となりました。「この成績じゃ、家に帰れない!」「おかあさんに無茶苦茶怒られる!」「きっと、今夜のおかあさんは鬼になります!」と、悲鳴のような声をあげる男の子もいました。思いもしない反応にいささか驚きながら、「おかあさんに成績のことでよく叱られるの?」と尋ねたら、クラスの大半が大きく頷きました。

 そのとき、一人の男の子が遠慮がちにこう言いました。「あの、ボクはおかあさんに一度も成績や勉強のことで叱られたことはありません」この言葉に、クラスは一瞬静まりかえりました。「えっ、ウソ!」という声が周囲から漏れてきた後、その男の子はこう言い添えました。「あの、約束を守らなかったり、無責任だったりしたときには叱られます。そんなときのおかあさんはこわいです」

 これを聞いた他の男の子たちは、「うらやましい」と一様に言いました。彼らの言い分は、「叱られるのは構わない。でも、筋の通った叱り方をしてほしい」「勉強のことばかり言って叱ってくるのは勘弁して」「感情的に叱らないでほしい」ということでした。それから、意外だったのは「納得できる叱られ方なら構わない。むしろ歓迎だ」という声が多かったことです。

 子どもがこういう反応をするのは頷けることです。特に男の子は、きっぱり、毅然と、明るく叱られるのなら、かえって気が引き締まり、やる気になるのです。叱ると、親も感情が高ぶります。まして反抗にあうと、思わぬひどい言い方をしてしまいがちです。その後味の悪さを嫌い、叱るのをためらうおかあさんもおられます。

 しかし、叱るべきときに叱らないと、わがまま放題になり、受験どころではなくなってしまいます。

 叱るときには、子どもを否定するような言い方ではなく、子どものやっていることに対して、筋を通した叱り方をする。感情を交えず、毅然と叱る。「子どもへの愛情は揺るぎないのだ」ということを前提に、きっぱりと叱ってやればいいのではないでしょうか。

 さて、先ほどの「おかあさんに叱られたことがない」と言った男の子の話に戻ります。後日、その男の子のおかあさんにお会いすることがありました。何とも優しげで爽やかな雰囲気のおかあさんでした。このようなおかあさんを、お子さんが「叱られるときはこわい」と思うのは、まさに筋の通った叱り方をされているからこそのことでしょう。その男の子は、常に折り目正しい態度の少年でしたが、しっかりとした取り組みで最後までがんばり通し、見事に受験校のすべてに合格しました。 

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて

子どもの発想と行動力に脱帽!

2009 年 5 月 7 日 木曜日

 私たちが国語の授業で使用する素材文は、6年生の場合ほとんどが入試問題をベースにしたものです。大体20~30分で文章を読んで問題を解くのが普通ですから、一つの文章の長さはB4版の紙1~3枚程度と、さほど長くありません(子どもには長いですが)。いきおい物語文などは、ある場面で突然話が始まり、出来事が急展開してクライマックスを迎え、そして尻切れトンボのまま終わることになります。いちばん盛り上がるシーンで終わり、子どもたちから、「先生、この後はどうなったの?」と一斉に質問を受けることも多々あります。

 こちらも一応プロです。大概の入試素材文には目を通しており、かなりの確率で出典を言い当てることはできます。また、子どもたちの読書意欲を喚起するため、素材文の出典を調べては密かに読んでいます。そして授業では、随分前から読んでいたかのような振りをして、「さあて、この後はどうなるのかな? 実は、先生は知っているのだよ」」などとやって、子どもの興味を引き出すのです。これは誰にもできる「引っ張り法」で、子どもは確実に目を輝かせて乗ってきます。

 しかしながら、全国にはおびただしい数の国・私立中学校があり、毎年毎年いろいろな本から出題されています。とてもすべての出典を特定するまでには至りません。「子どもたちが、このあとを知りたがるだろうな」と思う文章であっても、必ずしも期待に応えることはできません。

 あるとき、子どもたちが「この先を知りたいよ! 先生、知ってる?」と、口々に聞いてきた文章がありました。残念ながら心当たりがなく、「先生にもわからないよ」と答えざるを得ませんでした。すると、一人の男の子が「先生、ここは勇気を出してこの入試問題の学校に電話で聞いて、何の本か調べようよ!」と言ってきたのです。「え?」と、言葉を失いました。まさか、子どもがそんなことを言い出すとは思ってもみなかったからです。そして、直にそうしたやりとりも忘れてしまいました。

 1週間ほど経ったでしょうか。「調べようよ!」と言ってきた、その男の子から報告を受けました。なんでも近所に小学校の教頭先生がいるので、その先生に出典を尋ねたものの「分からない」と言われたらしいのです。ところがその男の子はあきらめきれず、とうとうその入試問題を出した中学校に電話をかけて聞いたというのです。この子の行動力に驚くともに、「もっともっと勉強して、子どもたちに何でも答えてやれる先生にならなければ」と思ったものでした。

 この件を社内で話題にしたからでしょうか。入試問題の素材文がわからなかったとき、教材編集担当者が入試問題の出題校に電話で問い合わせていたのを思い出します。 

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カテゴリー: 中学受験, 家庭学習研究社の特徴