勉強と成果の関係を読み解く

12月 16th, 2013

 もうじき2013年も終わります。受験をめざしている6年生のお子さんは、あと1カ月あまりで入試に臨むことになります。今からの毎日を最大限に活かし、悔いの残らぬよう最後の調整をしていただきたいですね。

 どのお子さんも、本音を言えば“不安”と闘っています。どんなにできるお子さんだって小学生の子どもです。大人でも何かの試験となると緊張を強いられるのですから、不安と無縁の中学受験生などいるはずがありません。

 もうすでに落ち着かない気分に襲われ、「落っこちたらどうしよう」などと無用の心配に振り回されているお子さんはいませんか?そんなお子さんには、「無駄なことを心配してもしかたがない。今やるべきことを最後まで大切にしていこう!」と、励ましてあげてください。おとうさんおかあさんには、そういったメンタル面の配慮が重要な時期です。

 間もなく「冬期講座」が始まります。冬期講座では、重要事項の最終点検を行いますが、受験生にとってもっと大きな意味をもつ講座です。それは、仲間と一緒に入試への最後の備えをすることで、「みんなで受験するんだ!」という意識が生まれ、平常心のもとで受験に向かう態勢が整ってくるということです。

 保護者の方々におかれては、これまで以上に気遣いの多い毎日となりますが、お子さんが心身ともに最高のコンディションで入試を迎えられるよう、サポートをよろしくお願いいたします。

 さて、今回の記事は「勉強と成果の関係」について書いてみようと思います。誰でも勉強したら、それがすぐに学力の向上につながり、テストの成績が上がっていくことを期待します。しかし、現実はどうでしょう。おそらく、そんなうれしい体験をしたお子さんは少ないのではないでしょうか。

 大学で教職課程の講義をしておられる先生の著作に、おもしろいことが書いてありました。勉強って、やればできると思ったら大間違いで、「やっても、やってもできないのが勉強だ」というのです。しかし、それでもへこたれずにやっているうちに、ある日突然のごとくできるようになるというのです。では、そのあたりの記述をちょっとご紹介してみましょう。

 勉強は、突然できるようになります。それは、昨日まで乗れなかった自転車に乗れるようなものです。それを私は「湯船の法則」と呼んでいます。(中略)

 私が中学生の頃は、湯船を洗い、水を張り沸かすというのが日常的な風呂でした。親に言われて、湯船を洗い、栓をして水を貯める。ところが、じっと見ているときはなかなか貯まらないくせに、テレビなんかを見ているとあっという間に貯まってしまい、溢れて親に怒られるということがあったんですね。

 20131216_grafこれと勉強とのどこが似ているかということですが、実に似ているのです。入れている水は勉強の量だと思ってください。入れていることを意識しているときには、なかなか貯まらないように、勉強していると思い続けているときは、力はつかない。ところが、勉強しているという意識がないくらいに自然に勉強を続けていると、突然分かるのです。できるのです。溢れる瞬間を感じることができるのです。

 では、いったい何時その溢れる瞬間を感じとることができるのでしょうか。きみたちが興味をもつのは、この溢れる瞬間でしょう。私の答えは、「分からない」というものです。「そんな無責任な!」と言われても、これははっきりと「分からない」という以外ありません。

 なぜでしょうか。主な理由を3つあげます。

一、流す水の量がわからない。
二、もともと湯船にどのくらい水が貯まっているか分からない。
三、湯船の大きさが分からない。

 一に関して言えば、あなたがどのくらいの時間と質で勉強しているのかが分からないということです。ですが、質の高い多くの勉強をすれば、早く溢れます。

 二に関して言えば、私立中学受験をめざしてがんばってきていた人、定期考査の前だけがんばっている人、クラブを引退してからがんばろうと思っている人といろいろいるわけで、いままでどれくらいの学力が貯まっているか分かりません。ですが、予め多く貯まっていれば、早く溢れます。

 三に関して言えば、あなたの器の大きさが分からないということです。器が大きければ、入れても入れても溢れません。入れる時間がかかる大きな器のことを、「大器晩成」というのです。しかし、中には水を入れ続けることをしないでいて、「時間がかかるな、オレは大器晩成だ」と言う人がいますから注意してください。

 どうでしょう。「人を煙に巻くような話だ」と思われたでしょうか。とは言え、「なるほど」と思う人も多いのではないでしょうか。

 流す水の量は、「正しい勉強法を身につけ、計画的に取り組み、決めた時間は集中して取り組む」ということを繰り返せば、自ずと増えるでしょう。一見成果は上がっていないように見えても、実際には少しずつ着実に力はついているのです。ですから、やがては必ず成果が閾値(いきち)に達して表面化します。目先の成果に振り回されず、着実に努力を積み重ねていれば、必ず湯船に水が溢れるときが来るのです。

 もともと湯船にどれくらい水が貯まっているかわからないという問題について。弊社の会員の話ですが、4年生、5年生のころはそこそこよい成績を取っていたお子さんで、6年生になってから成績が振るわなくなる例が結構あります。これは勉強の内容が難しくなり、それまでのように何となく勉強するだけではやりこなせなくなるからだと思います。楽しいばかりだった塾通いが、いつの間にか辛くなり、苦しむお子さんも出てきます。ところが、そういうお子さんの入試結果が意外とよいのです。

 それは、基礎が身についていたからであろうと思います。6年生になって入試レベルの勉強をしていると、「わからない」と壁を感じたとしても、実は基礎はしっかりとしているので、「あと少し」のところまできていたのです。つまり、水の量はかなり入っていたのです。弊社では、4・5年生の基礎力養成期でゆっくりじっくり土台を固めていきます。そのときには、水が貯まっていっているのだという実感が得られないかも知れませんが、実は水が着実に貯まっていっているのです。

 湯船の大きさは、誰にも分からないものです。また、分かるはずもありません。人間の脳は学習によって変貌します。何かの課題を「理解したい」と思って努力を繰り返せば、それが新しいシナプス回路の形成につながり、やがてその種の課題を解決するための思考の仕組みが整っていきます。それが絶え間なく繰り返されていくことで、はじめは思いもよらなかったことが分かるようになったり、できるようになったりするのです。資質面よりも、そうした学びが人間の器を大きくするのだと思います。20131216_a

 いつ水が溢れるか分からない。それが途中の挫折を招くことになりがちですが、それを乗り越えることですばらしい成果が得られるのです。このような経験をした人間は、生涯学びの人生を送ることができます。「やがて湯船の溢れるときがきっと来る」――そう信じて、コツコツ学び続けるよう、是非お子さんを励ましてあげてください。小学生のものごとへの取り組みは、親の働きかけ次第で決まります。自分という器を大きくするための努力を奨励することこそ、小学生をもつ親の重要な務めであろうと思います。

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