2015 年 7 月 のアーカイブ

ご家庭でもいろんな体験活動を

2015 年 7 月 13 日 月曜日

 通常は数多くの習い事などで忙しく過ごしている子ども達も、もうすぐ始まる夏休みは、比較的まとまった時間をとりやすいと思います。特に受験までまだ間のある低学年期には、ぜひご家庭でも体験活動・体験学習の場を設けてあげてください。

  あらためて言葉にすると何か特別なもののようですが、それほどかしこまって考える必要はありません。どんなことでもどんな場所を訪れても、少し工夫して子どもにとって心に響くものになれば、立派な体験活動になります。
 例えば、夏休みに家族みんなで旅行に出かけるというご家庭も多いのではないでしょうか。こうした家族旅行も、子どもにとってはこれだけで非常に大きな経験の一つといえます。
 初めての場所を訪れるというのは、出発以前からその土地を思い描くだけで心が躍るほど、子どもにとっては大いに刺激的な経験です。こうした機会を活かし、ひと工夫してみましょう。準備から片付けまで全て親がやってしまって、子どもはそれに乗っかるだけ・・・というのではなく、訪れる前に旅行先の地図や資料を準備して、その土地について親子で色々調べる機会を設けてみてください。そうすることで、実際に現地に到着してからも、「やっぱり思っていた通りだった」とか「地図を見て予想していたのと全然違うね」などと感想を述べあうことができますから、家族旅行の楽しみを一層膨らませてくれるはずです。
 高学年であれば、家族旅行の計画や準備をお子さんにやってもらうというのも非常によい勉強になりますが、低学年の子の場合にはまだ少し難しいですから、旅行の計画を立てる段階から帰宅した後の振り返りまで、極力親子で一緒に考えるようにしてみてください。それによって、単に「旅行先での出来事が楽しかった」というだけでなく、その旅行に関する一連の流れ全てが大切な思い出になることでしょう。それが結果として、重要な「体験学習」にもなるのです。 

 また、家族旅行のような特別な行事だけでなく、毎日の生活の中でも取り入れることができます。例えば、
 ・週末に家族でデパートや娯楽施設などに出かける
 ・お父さんと一緒に日曜大工で何かを作ったり修理したりする
 ・お母さんと一緒に近所のスーパーまで買い物に出かける
 ・昼食や晩ご飯の準備を親子で一緒にする
 ・・・など身近な例を含めれば、日常の中には非常に多くの体験活動があふれています。
 お気づきの方もいらっしゃると思いますが、上に挙げたような活動の大半は、いわゆる家庭での「お手伝い」として挙げられる内容とほとんど同じものです。つまり、日常的に子どもがお手伝いをしているご家庭では、毎日自然な形で体験活動を積み重ねることができているということにもなるわけですね。
 以前、低学年の保護者の方向けの催しでも、「お手伝いのススメ」と題してお話しさせていただきましたが、子どもが日々の家事に参加することは、家事のスキルを身につけられることはもちろんのこと、擬似労働を体験できる、主体性や協調性など社会性の獲得につながる、周囲の人達への感謝や奉仕の精神を育てることができる・・・など、子どもにとって貴重な成長の機会になります。
 実際に自らが経験してみて初めて、その難しさや楽しさ、普段お母さん・お父さんがやってくれていることのありがたみに気がつくということは大いにあるはずです。これをきっかけに、新たな分野に興味をもつようになることもあるでしょうし、それまで気づかなかった能力や才能が芽吹くことにつながるかもしれません。
 忙しい生活を送っていると、ついつい「手間や時間がかかるから、親がやってしまおう」と考えてしまいがちですが、買い出しや夕食の準備にはできるだけ子どもにも役割を与える、大工仕事の際には子どもにも声をかけるなど、様々な経験をできるようぜひ積極的に参加させてあげるといいですね。

 最後に、家庭で親が子どもに働きかける際に気をつけたいポイントをいくつかご紹介します。

① 子どもに自分のこととして考えさせ、やるかどうかは子ども自身が決める
→「親にやらされる」という思いを抱かせない(場合によっては、親が上手に誘導することも必要かもしれませんが・・・)
② 最初に手順や方法などをわかりやすく説明して、親子で一緒に取り組む
→親の気が向いた時だけ細切れに指示するのは×
③ 親が望むような働きができなくても、感情的に叱ったりしない
→一生懸命取り組んでいれば、その姿勢を認めることも必要
④ 機を逃さず、こまめに褒める
→子どものモチベーションを維持し、より高める

 長期休暇に家族で行く旅行も日常生活でのいろんな出来事も、子どもにとっては一つ一つが貴重な体験になっています。ただし、それが子どもの中でより良いものとして根づくためには、お母さん・お父さんも含めた家族みんなが楽しく過ごしているということも重要な要素の一つ。上記のようなポイントを押さえつつ、いつも子どもと一緒に楽しもうという気持ちをもっていただいて、「こんな面白いことがあるんだけど、一緒にやってみようよ」と声をかけるというのが、家庭での望ましい「体験学習」の形ではないでしょうか。

(butsuen)

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: 家庭での教育, 家庭学習研究社の特徴, 小学1~3年生向け

2015「私学がきみを呼んでいる!」 その2

2015 年 7 月 9 日 木曜日

 前回に引き続き、6月21日(日)に実施した私学紹介イベント、「私学がきみを呼んでいる!」のプログラム内容と会場の様子をご紹介します。このイベントは、弊社の6年部会員親子が対象で、一般には公開していません。

 このイベントは、入試を約7か月後に控えた受験生の子どもたちに、「私学ってこんなところなんだよ!」ということをお伝えしたり、私学それぞれのよさを感じ取ってもらったりすることで、入試に向かうモチベーションを高めようという趣旨で実施しています。

 さて、今回は第2部(催しの後半)の様子を順次ご紹介していきましょう。

第2部:私学で夢を叶えよう、がんばれ中学受験生!

 第2部は、「制服紹介」から始まりました。抽選で決定した学校の順番に従って、生徒さん3名と先生に順次ステージに登場していただくのですが、その際に「冬服」「夏服」「合服」「部活のユニフォーム」など、学校で定められた服装を身にまとい、ステージ中央でポーズを決めてもらいます。その際、一緒に登場していただいた先生に制服の解説をしてもらいます。

 この制服紹介は、女子受験生には大変人気があります。やはり、女の子は制服に関心が高いのでしょう。一方の男の子は、あまり制服には関心がないようです。女子は制服のよさがちゃんと伝わるような歩き方をしたり、決めポーズをとったりしてくださいますが、男子の生徒さんはやや恥ずかしそうです。それでも、学校によっては打ち合わせをしっかりしてこられたのか、なかなか凛々しい立ち姿でポーズを決めてくださいます。保護者のなかには、大人に近い背格好になった中学生の制服姿を見て、数年後のわが子を想像されたかたも少なくなかったことでしょう。

20150709ああa

 各校の制服紹介の様子を簡単にご紹介しましょう。女子の部の最初はなぎさから。なぎさの生徒さんは、三人で打ち合わせをしっかりとされてきたのか、上手な決めポーズで制服をよりかわいらしく見せることに成功しておられました。次のノートルダム清心の制服紹介では、コートを羽織っていた生徒さんが、途中で突然コートを外して部活のユニフォーム姿に変わるというサプライズを演出されていたのが印象的でした。三番目の安田は、最後に同校特有の深々とお辞儀をする挨拶で「安田らしさ」を演出しておられました。最後に登場された広島女学院は、かわいらしい今の制服が、東京で活躍されている卒業生のデザイナーによるものであることを披露されていました。

20150709男子

 男子の部は、前述のように女子の制服のような華はなく、いたって地味ではありましたが、各校とも先生と生徒さんがきっちり制服の特徴を説明してくださいました。広島学院は、学校内では写真の左の生徒さんの服装(トレパン)姿に着替えること、そして、その恰好がいちばん過ごしやすいことを説明しておられました。広島城北で目を引いたのは、吹奏楽部に所属する生徒さんの衣装でした。その生徒さんが、ほんの一瞬でしたが腕前を披露してくださいました。修道は、学年によってバッジが変わること、制服の袖に入れられるラインの数が変わることが知られていますが、現在の制服がとても有名なデザイナーによるものだと説明されていました。最後のなぎさですが、さっぱりとした垢ぬけた夏服がとても印象的でした。

 制服紹介によって、当日私学からお招きした先生と生徒さん全員がステージ上に揃っていただいたところで、後半の主要なプログラムの始まりとなりました。

 まずは「受験勉強あるある」から。内容は、お越しいただいた私学の生徒さんに、受験生時代のことに関して質問をし、全員に○か×のプラカードで一斉に答えていただくもので、受験生家庭で生じがちな問題や悩みが、かつて受験生だった先輩たちにあったのかどうかを教えていただくという趣向となっています。

 たとえば、司会者が「受験勉強中に、スランプや勉強嫌いになったことがある」「受験生活が始まってから親子喧嘩が増えた」などと読み上げたら、会場の受験生たちに、当てはまれば挙手をしてもらいます。次に、ステージの私学の生徒さんたちはどうだったのか、一斉に○か×のプラカードを掲げてもらいます。こうした形式で次々に質問をしていきます。質問によっては、ステージの生徒さんのほぼ全員が○だったり、×だったりすることもあり、会場がどよめく場面もありました。

 一つ質問を終えるごとに、ステージの生徒さんのなかから任意に指名し、質問に関わる受験生の頃のエピソードを語ってもらいます。子どもたちは先輩たちの話を聞き、「先輩たちもそうだったのか」と、安堵の表情を浮かべたり、「すごい!」と感心したり。受験生にとって、励まされるし、元気の出るコーナーとなったようでした。

 このコーナーで発言された私学の生徒さんのなかには、理路整然としたよどみのない話しぶりで、的確なアドバイスや激励をしてくださるかたがおられ、保護者がしきりに感心されていました。おそらく、「わが子もあんな聡明な生徒に成長してくれたら」と思われたことでしょう。受験生のみなさんも、私学への憧れが一段と高まったのではないかと思います。

20150709う

 「受験勉強あるある」の最後に、各私学の先生方から来春の受験に関わる情報をご提供いただきました。話題は、入試での出題の傾向を丁寧にご説明くださるケース、保護者に熱いメッセージを送ってくださるケース、入試に関わる最新の情報をご提供くださるケースなどいろいろでした。いずれにしても、どの学校も情熱をもって子どもたちの教育にあたっておられることが伺える話を熱心にしていただきました。先生がたにはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

 さて、いよいよフィナーレです。ステージに立っておられる先生と生徒さんがたが、学校順に受験生に励ましのメッセージを送ってくださいました。また、学校によってはちょっとしたビジュアルな仕掛けで受験生への励ましの気持ちを伝えてくださいました。

 フィナーレの様子は、午前の女子部、午後の男子部、全ての私学の様子を写真にてご紹介して終わりとさせていただきます。
20150709ラスト-

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 私学について, 行事レポート

2015「私学がきみを呼んでいる!」 その1

2015 年 7 月 6 日 月曜日

 6月21日の日曜日には、「私学がきみを呼んでいる!」という呼称のイベントを実施しました。このイベントは、弊社の6年部会員親子を対象とし、広島の主要私学の協力のもとに実施している、弊社では最も大がかりな催しの一つです。15年前から毎年行っていますが、今や初夏に行われる恒例の催しとして定着した感があります。

 今年は、県民文化センター(中区大手町)のホールを会場に、午前の部(10:00~12:00)が女子会員対象、午後の部(13:30~15:00)が男子会員対象で行いました。ご協力いただいた私学は、午前がノートルダム清心、広島女学院、安田女子、広島なぎさの4校、午後が広島学院、修道、広島城北、広島なぎさの4校でした。これらの学校から先生がたが各1名、中学の生徒さんが各3名(弊社の出身者)、学校のプレゼンのためにご協力くださいました。

 この催しは「子どもが主役」で、「受験生に刺激を与える」ことを目的として実施しています。したがって、入試制度に関する説明や、シラバス、大学進学実績など、親が参考にするような資料はほとんど提供していません。子どもの目線に立って各私学のよさや特徴をご紹介し、受験に向かうモチベーションを高めることに主眼を置いています。そのあたりをご承知おきのうえ、お読みくださいますようお願いいたします。

 さて、催しの様子を流れに沿ってご説明してまいりましょう。まずは開始に先立ち、弊社の校舎長6名がステージに立ち、あと半年余りあとに控えた中学入試に向けて、一言ずつリレーで励ましのメッセージを送りました。そして、いよいよイベントの始まりです。

第1部:これであなたも私学博士!?

 第1部は、二つの内容で構成されています。一つは「映像による学校紹介」、もう一つは「私学クイズコーナー」です。「映像による学校紹介」は、学校で作成された映像、もしくは弊社が学校を取材して作成した映像をプロジェクターで流し、各私学の中学3年生の生徒さん(弊社出身者)にナレーションをしてもらうという趣向です。

 ご存知のように、私学にはそれぞれ独自のカラーや建学の精神があり、それが私学としての特徴を際立たせています。「映像による学校紹介」では、各校の生徒さんがそうした要素を踏まえつつ、自校のよさや学校生活の実際などについて、受験生の後輩たちにわかり易く説明してくださいました。

 14

 写真①②は、女子の部の「なぎさ」・「安田女子中」の映像の一コマ、写真③④は、男子の部の「広島学院」・「修道」の映像の一コマです。なぎさの写真は、美しい緑の人工芝が敷かれた校庭を撮ったものです。安田の写真は、学校で大人気という、「校内合唱コンクール」の様子を撮ったものです。広島学院の写真は、朝の授業前に校庭に出て活発に運動している生徒さんの様子です(学院生は勉強漬けというわけではないことがわかりますね)。修道の写真は、豪華客船による修学旅行に出発するときの様子です(この写真ではわかりにくいですね)。

 1校当たり5~6分という映像の時間的制約のなかで何を紹介するか。先生がたがいろいろアイデアを出し合ったり、生徒さんの意見を採り入れたりして、様々な工夫を凝らしておられる学校もありました。また、堂々とした立派なプレゼンをする生徒さんの様子を見て、「わが子も、3年後にあのような立派な生徒になれるといいな」といった感想ももたれる保護者が多数おられたようです。

 第1部の後半は、それぞれの私学にまつわる興味深い題材を集めてクイズをつくり、受験生の子どもたちに三択で答えてもらう「クイズコーナー」です。クイズの内容は、各私学の先生がたと弊社のスタッフとで相談して決めました。

 どんなクイズかというと、たとえば、女子の部の広島女学院では「学食で一番の人気メニューは何でしょうか」というものでした。選択肢は、1.スープ・スパ、2.親子丼、3.五目中華。さて、正解はどれでしょうか。ここで、ただ答えを発表するだけでは盛り上がりを欠くので、会場の受験生と保護者にグー、チョキ、パーで手をあげて答えてもらう趣向にしました。

 各校2問ずつ、計8問のクイズでしたが、正解が発表されるたびに歓声があがったり、「残念!」のため息が響いたりと、とても楽しいコーナーとなりました。

 クイズが終了した後、各校の先生がたにクイズにまつわる裏話や説明をしていただきました。大人相手でしたら、私学教育の根幹にかかわる重要なテーマを選んでクイズにするところでしょうが、このイベントは受験生の私学に対する興味・関心を引き出し、受験に向かうモチベーションを高める目的で実施しています。したがって、私学の教育について知識を得るというよりも、学校に対する親近感をもたせる内容のクイズを出しました。受験生の子どもたちの反応は上々で、楽しそうな笑顔がたくさん見られました。

58

 写真⑤は、広島女学院のクイズ「学食で一番の人気メニューは?」の選択肢の画像です。写真⑥は、クイズの答えにグー、チョキ、パーで答える受験生と保護者の様子を撮ったものです。写真⑦⑧は、クイズの答えについて、私学の先生が説明してくださっている様子です。

 第1部の終了後はアトラクションです。例年、参加校のいずれかのクラブのみなさんをお招きし、日ごろの練習の成果を披露していただいています。毎年のことですが、このコーナーは大変人気があり、翌年は出演していただいたクラブの入部者が増えるという現象も生じているとか。

 今年は、女子の部はノートルダム清心の音楽部のみなさん、男子の部は修道のジャグリング同好会のみなさんにご協力いただきました。

912

 午前部では、ノートルダム清心の音楽部員のみなさんが、ミュージカル「サウンドオブミュージック」の一部を歌とダンスで披露してくださいました。受験生の子どもたちは、美しいコーラスと、色とりどりの衣装に心を奪われていました。

 午後部では、修道のジャグリング同好会のみなさんが一人ひとり交替で違った種類の道具を使い、華麗な技を見せてくださいました。難度の高い技が決まったときは、会場から「オー!!」と大きな歓声が沸き起こり、拍手が会場いっぱいに響き渡りました。男子受験生の目を釘付けにした素晴らしい演技でした。

 アトラクションのあとは休憩とし、一息入れたところで第2部に移りました。第2部の様子は次回お伝えします。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: 中学受験, 私学について, 行事レポート

学びの飛躍をこの夏に!  その3

2015 年 7 月 2 日 木曜日

 6月19日(金)に実施した、「学びの飛躍をこの夏に!」というタイトルの催しの様子を、このところご紹介しています。

 前回はPart.2までの報告で終わったのですが、「一つの行事について、2回も書いたのでもういいか」といったんは思いました。しかし、Part.3を残して終わると尻切れトンボになってしまいます。それではすっきりしないので、結局続きを書くことにしました。よろしくお願いします。

 Part.3のタイトルは、「子どもの学習は親しだい!」となっています。これは、小学生の受験が親のサポートなしには成立しないものであり、親の出かた一つで勉強の成果も大きく変わる可能性があることから名づけたものです。以下、小タイトルごとに内容をご紹介してまいりましょう。

① 小学生の学習意欲向上の鍵は親が握っています。

 このパートでは、まず子どもの学習意欲を支える要素にどのようなものがあり、それらの要素がどのぐらいの強さで作用するかを、大学の先生の作成された資料をもとに考えてみました。この資料は、このブログで過去にご紹介したことがあります。覚えておられるかたもおありでしょう。

20150702あ

 この資料をご覧になれば、小学生の子どものがんばりのもとになるものが何か、かなり明確になるのではないでしょうか。小学校4年生ぐらいから中学1年生ぐらいまでの時期は、「親の期待するような人間でありたい(資料では、「規範意識にもとづく意欲」とあります)」という気持ちが学習意欲を支える要素として最も大きいということがわかります。

 低学年の時期は、「親にほめられたい」「ご褒美がもらえる」「親に叱られたくない」という気持ち(資料では「賞罰による学習意欲」とあります)が意欲に直結していました。しかし、学年が上がる(内面が成長する)につれてこの要素は下がっていき、小学校卒業時には一番低くなります。

 また、大人は「目標めざしてがんばれ!」と子どもによくハッパをかけますが、まだ社会との接点が少なく、世の中についての知識が少ない小学生の時期には、「目標を達成したい」という願望が意欲を突き動かすということはあまり期待できません。「なんでもっと受験を意識してがんばれないのか」、などと不満の目でわが子を見ていた保護者もおありでしょう。これで状況がご理解いただけたのではないでしょうか。年齢的にそういうことはまだ無理なのですね。将来の目標というのは、現在・過去・未来に向けた様々な知識あってこそ定められるもので、小学生が思い描く目標は、単なる“あこがれ”の域を出ておらず、実現に向けて継続的な努力を引き出すまでには至らないのが普通です。

 なお、「内発的学習意欲」というのは、「知りたい」という知的好奇心に基づく意欲で、人間にとって最も好ましいものだと一般に言われます。しかしながら、内発的学習意欲は他の要素と比べると相対的に高めではあるものの、年齢とともにゆっくりと下がっていきます。その理由を、学者は「子どもは成長するにつれて、将来どのような学問をめざしたいだとか、どんな職業に就きたいなどといった目標をもつようになります。この目標達成に向けた意欲は、内発的学習意欲が社会性を帯びてきた結果生まれてくるものです」という見解を示しておられます。

 このことから言えるのは、小学生のうちに勉強の面白さにふれ、夢中になって学ぶ体験をしておくことが極めて重要だということです。そういう体験を通して、子どもはどんな学問が好きか、何が自分に向いているかを感じ取り、将来の学問的な方向や職業選択の道を見出していくのではないでしょうか。受験勉強を大人主導で無理にやらされる経験をすると、自ら目標を定めて勉強に打ち込む人間にはなれません。子どもの将来に思いを馳せるなら、どんな学習や取り組みで力をつけるかということもぜひ大切にしていただきたいと存じます。

 この項の締めくくりとして、「子どもは、親の期待に応えようとするものです。そのことに基づくなら、まず親子の信頼関係をしっかりと築くことが重要ではないかと思います」とお伝えしました。親子の強い信頼関係が背景にあってこそ、子どもは「親の期待に沿いたい」という気持ちを強めるからです。

②子どもの学習意欲を高める親の関わりとは!?

 小学生の学習意欲を高めるうえで、親の差し向ける期待が深く関わっていることがわかりました。しかしながら、親として考えたいのは「子どもの健全な成長につながる期待の差し向けかたとはどういうものか」ということではないでしょうか。

 日本の子どもは、世界的に見ても学力は相当高いほうです。しかしながら、世界中の子どもたちのなかで、最も「自分に自信がもてないでいる」という調査結果があります。その理由は、「親から向けられる期待が大き過ぎるのからではないか」と専門家は指摘しています。最近の親は総じて高学歴です。また、少子化の進行とともに、子ども一人当たりにかける教育投資も高くなっています。必然、親の期待もかつてより高いものになりがちです。しかし、それが子どもにとって重圧になり、「とても親の期待するような人間にはなれない」と思わせたとしたら、逆効果を招いてしまいます。

 そこで、「親が示すべき期待は何でしょうか」ということを、ごく単純な対立関係でお伝えしました。20150702b

 子どもは親の本音を実に鋭く見破ります。受験への見通しを得るうえで最もわかり易いのが成績ですが、その成績に親が一喜一憂している様子を見た子どもはどう思うでしょうか。「うちの親は、ボク(私)の成績さえよければ満足なんだ」と思うことでしょう。また、がんばっても上がらないことが多いのが進学塾の成績です。みんなそれぞれ勉強しているのですから。そんなとき、親ががっかりした表情を見せたなら、子どもはどう思うでしょうか。

 どんな成績でも、がんばっていたらそれを評価してくれる親。がんばったのに成績が伴わないとき、その原因を一緒に考えてくれる親。そういう親を子どもは信頼し、尊敬します。受験生活を通じて、親はわが子に何を期待しているのかをしっかりと伝えてあげてください。その期待が間違っていなかったなら、「親子の絆」という、受験でのどんな結果にも勝るすばらしいものを手に入れることができます。

③ 受験生活で親が余裕を失わないために

 まだ人間としての完成形に程遠い小学生の受験ですから、見守り応援する親、特におかあさんはストレスと闘う毎日を強いられがちです。そのストレスに負け、子どもにつらく当たってしまうと、気分が滅入ってしまうこともあるようです。そうならないための、おかあさんの気持ちの向けかたについて考えてみました。

 そこでご紹介したのが、「あなたは子育てに向いていると思いますか」という大がかりなアンケート調査の結果です。これも、このブログで3回にわたって記事にしていますので、ここではごく簡単に要点のみお伝えしておきます。詳しくは、以前のブログ記事を参考にしてください。

 千名以上のおかあさんがたを対象にしたアンケートで、「自分は子育てに向いている」と思う人と、「自分は子育てに向いていない」と思う人とで、明らかに違った反応を示したアンケートの質問項目が6つありました。それをご紹介してみましょう。

図1

 どうでしょう。「自分は子育てに向いている」と考える人と、「自分は子育てに向いていない」と考える人の違いがある程度おわかりいただけたのではないでしょうか。

 「自分は子育てに向いていない」と思う人は、「心配症である」、「面倒なことがあると投げ出してしまいがちである」、「何につけ、ふんぎりがつかない」、「物事をのんきに見守ったり待ったりできない」、「人の面倒を見るのは好きでない」、「他人に対して批判的である」、「人に対して言いたいことが言えない」といった自己診断をする傾向が強いことがわかりました。

 子どもとの関係を良好に保ち、子どもをがんばらせる親はどういう親でしょうか。前述の「子育てに向いていない」と思う人とは逆の心のもちようをイメージしてみたらよいでしょう。たとえば、子どものことであまり心配症にならず、面倒なことでも投げ出さず、どうしようかといつまでも悩まず、何事ものんきに構え、人の面倒を見るのを喜びとし、言いたいことは率直に言えて、子どもに対して寛容な態度で接する。そういう親であるよう心がければ、健全な親子関係を築けるし、子どもの前向きな努力を引き出すことになるのではないでしょうか。無論、現実の生活はそう理想通りにはいかないことでしょう。しかし、意識の方向性を定めているといないとでは違ってくるものです。「こんなのムリ!」と思ったかたも、気持ちのもちようを入れ替えるとストレスはずいぶん軽減されると思います。

④ 受験生活を子育ての仕上げの場にしよう!

 いよいよ最後の項目です。中学受験準備の学習をする小学校の中・高学年は、親から見ると子育ての仕上げをすべき時期にあたります。したがって、中学入試までのプロセスにおける親の関わりは、子育ての仕上げ活動に他なりません。

 そのことに鑑みるなら、「今こそ親の出番なのだ!」という認識をもつべきではないでしょうか。人間形成期の受験生活は、子どもの人間としての特性を決定するうえで相当な影響力をもちます。だからこそ、親はわが子の将来の大成につながる受験生活が実現するよう、精いっぱい働きかけてやるべきではないでしょうか。

 ご存知のように少子化がとめどなく進みつつあり、中・高一貫校への入学の関門もかつてよりは遥かに易しくなっています。さらに、大学進学に目をやると、「大学全入」の時代が訪れています。このような時代にあっては、もはや学歴自体にたいした価値はありません。言わずもがなのことですが、知的レベルの高い職種においては、求められる仕事成果を引き出せるかどうかが重要で、出身大学が一流であってもそのこと自体が評価されることなどありません。つまり、本物の実力を携えているかどうかが真に問われる時代が来ています。

 目先の受験の結果のみに目を奪われ、将来の大成につながる大切なものを失っては元も子もありません。是非これから入試終了までの期間の子育てを大切にしていただきたいと存じます。入試を終えたとき、「今の取り組みを続けたなら、これから先も楽しみだ」と、期待をもって中学校に送り出せるよう、親として悔いのない応援をしてやりましょう。

 このPart.3は筆者が担当したのですが、実は何をしゃべったかあまり覚えていません(左ひじと肩の炎症による痛みで、2~3日ろくに寝ておらず、意識がもうろうとした状態で話をしました)。だいたい上記のようなことをお伝えするつもりでお話しさせていただきました。

 長くなってしまいましたが、以上が「学びの飛躍をこの夏に!」のおおよその内容です。中学受験は、半分は親の受験だと言われます。それは、親の関わりの重要性を意味するでしょう。受験までのプロセスがわが子の成長につながるよう、親としてできる精一杯のことをしてあげてください。それがお子さんのこれからの人生の歩みの基盤づくりになりますし、この先ずっと続く親子関係の土台を築くことになります。

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育, 行事レポート

「自由研究」のススメ

2015 年 7 月 1 日 水曜日

 7月に入り、いよいよ夏休みが近づいてきました。
 低学年の子ども達にとっては「待ちに待った楽しい夏休み」だと思いますが、もちろん楽しいことばかりではなく、ほとんどの学校では多くの宿題や課題も待っています。
 先日、1~3年生の保護者の方々を対象にした「夏のおかあさんセミナー」を開催し、その中で、夏休みの宿題の取り組み方についても触れました。どのように計画を立てて取り組むかという点だけでなく、親からの働きかけ方や工夫などについてもお話ししましたが、夏休みの宿題の中でも特に時間と手間のかかるものとして、「自由研究」についてご説明しました。

 さて、この「自由研究」ですが、当社に通う子ども達が在籍する小学校や周囲の人達に少し確認したところ、毎年宿題として指定されている学校もある一方、学校やクラスによっては取り組み自体がないところもあるようですね。「1~6年生まで、『自由研究』を宿題として課すことが全くない」という学校があったり、自由研究の代わり(?)に、ジャンルを問わず何でも形にして提出すればOK(「研究」としてまとめなくてもよい)といったケースもあるとのこと。「自由」と名のつくものですから、取り組むかどうかも「自由」だという考え方もあるのかもしれませんが・・・。
 ただし、「子どもが知的な何かに熱中して取り組む」という本来の目的を考えれば、学校の宿題として出されるか否かは別として、自由研究は長い夏休みにおける活動のハイライトとなるべきものだと考えています。ある程度形の決められている他の課題とは違い、テーマ決め・計画段階からまとめに至るまで、自分で考えながら進めていく自由研究は、子どもにとってきっと貴重な経験になるはずです。また、こんなに時間をかけて何かを研究することができる期間は、夏休みぐらいしかありません。
 ということで、今回は、「夏休みの自由研究」をテーマにして、少し書かせていただきたいと思います。自由研究一

 低学年の子ども達が自由研究に取り組むにあたっては、自分一人でこなすことが難しい面がたくさんありますから、お母さんやお父さんの温かいフォローが欠かせません。その際、親が気をつけておきたいポイントがいくつかありますので、ご紹介します。
 1つ目のポイントは、自由研究に取り組む目的を忘れないことです。
 先ほども触れたように、本来の目的は「子どもが知的な何かに熱中して取り組むこと」にあります。低学年の自由研究では、どうしても親がフォローすべき部分はかなり大きくなりますから、色々と関わっているうちに、つい当初の目的があやふやになってしまいがちです。テーマ決めはもちろん、計画を立てる段階や実験や観察の補助、結果のまとめなど、様々な面で手助けをする必要がありますが、子どもが熱中して取り組むためには、子どもの興味関心や意見を尊重し、親は黒子としてサポート役に徹さなくてはなりません。どれだけ手を貸したとしても、子どもが「自分で研究した」という気持ちをなくさないよう、十分配慮してあげてください。

 2つ目は、他の宿題や習い事との配分を考慮し、無理のない計画を立てることです。
 自由研究は、しっかり取り組めば取り組むほど、当然時間も手間も大いにかかるものです。いくら時間のある夏休みといえども、他の宿題や通塾・習い事などもありますから、自由研究にあまり時間を取られてしまうようだと、他を圧迫して大きな負担になってしまいます。それを防ぐためには、親子で話し合いながら、最初に無理のない計画を立てておくことが必要不可欠です。思い通りに進まなかった場合には途中で修正する必要もありますから、「7月末までには◯◯と△△を、8月上旬までには□□をして、お盆明けからはまとめに取りかかろう」という程度でもいいので、少し余裕をもたせた段取りと計画を立てておきましょう。

 3つ目は、親は最初から研究のゴールをイメージしておくことです。
 自由研究には指定された形がありませんから、どんなテーマであっても、対象を広げたり調べを深めようとすれば、どこまでも追求することが可能です。また、観察や実験をすすめるうちに、想定外の結果が出てくることもあります(そうした点が研究の魅力でもあるわけですが)。すぐに到達できる簡単なレベルで終えてしまうと「熱中して取り組む」ことができませんし、反対に、考察すべき内容が子どもの理解できるレベルを大きく超えてしまうようだと、逆に挫折感を味わうことにもなりかねません。
 前2つのポイントとも重なりますが、子どもの負担になり過ぎずかつ達成感を得られるようにするためには、他の宿題や習い事などとの兼ね合いやわが子の発達段階などを考慮しながら、「今回このテーマで研究するのは、このレベルに達すればOK」というラインを、フォローする親があらかじめ頭の中でイメージしておく必要があります。そして、子どもが夢中になって研究をすすめるうちに、一定のラインまでたどり着くことができたら、大いに褒めて、当初の予定通りまとめに入れるように上手に誘導してあげてください。
 もちろん、時間的にも気持ち的にも余裕があって、お子さんが「とことん調べてみたい」ということであれば、それを追求できるのも夏休みの良いところです。その場合には、ぜひ取り組んでみてもいいのではないでしょうか(もしうまくいかなかった場合のフォローも忘れずに)。自由研究二

 最後に、自由研究に取り組むにあたって、最初のテーマ決めとともに頭を悩ませるのが、「どうまとめるか」ではないでしょうか。観察や実験がいったん軌道に乗ってしまえば、その段階は楽しく進められると思いますが、それをどう形あるものにまとめるのかという段階に至ったところで手が止まってしまうということも少なくありません。
 そんなときは、下の例のようなまとめ方の基本に沿って一つずつ形にしていきましょう。

①「テーマ(タイトル)」
②「研究を始めたきっかけ(なぜこの研究を始めたのか)」
③「研究の目的(何を目指して研究するのか)」
④「研究の方法(どんな方法で研究するのか)」
※研究結果を予想しておくと、⑤の「研究の結果」と対比しながら⑥に書くことができる
⑤「研究の結果(観察や実験の結果)」
⑥「研究のまとめ(⑤の結果からどんなことがわかったのか)」
⑦「気づきや感想(結果やまとめに対する自分の考えなど)」

 例えば、考えた内容や調べた結果をこの順に書きこんでいくと、うまくまとめることができます。ここに、必要に応じて、表やグラフ、デジカメで撮った写真や自分で描いた図などを加えると、研究データとしてよりわかりやすいものになり、見栄えも良くなるでしょう。
 1・2年生で、あさがおやへちまの観察など学校から研究内容が指定されている場合も、このような順番で進められるといいと思いますし、先生から記入する用紙が配付されている場合にも、これに準じたものになっていると思います。

 今回は、「自由研究のススメ」と題して書かせていただきました。
 ただし、自由研究が学校から出される宿題に含まれていないご家庭にとっては、「なぜわざわざ手間をかけてまで、自由研究に取り組まないといけないのか」とお感じの方もいらっしゃるかもしれません。
 先述のとおり、「子どもが知的な何かに熱中して取り組むこと」が目的ですから、その目的が達せられるのであれば、「自由研究」という形にこだわる必要はありません。しかし、夏休みに取り組めるものがたくさんある中で、もしお子さんの気持ちが「○○をもっと知りたい!」という方向に向いたならば、宿題であるかどうかに関わらず、この成長のチャンスを活かさない手はないと思います。
 自分なりにしっかり研究して夏休み中の頑張りを形として残すことができたなら、お母さん・お父さんから大いに褒めてあげてください。さらに、担任の先生にも見せて、先生からもたくさん褒めてもらいましょう。子どもにとって、こうした経験が、他では得難い達成感と大きな自信につながることは間違いありません。
 ぜひ、夏休みだからこそできる「自由研究」に取り組んでみてくださいね。

(butsuen)

LINEで送る
Facebook にシェア
Pocket

カテゴリー: 家庭での教育, 家庭学習研究社の特徴, 小学1~3年生向け