Archive for 6月, 2018

好き嫌い・得意不得意のない子どもに! ~低学年児童期の学習~

月曜日, 6月 25th, 2018

 6月15日(金)には、「広島市まちづくり市民交流プラザ」にて、弊社の低学年部門「夏期講座説明会」を実施しました。今回は、この説明会で筆者が担当(約40分)した内容についてご報告しようと思います。最近は、低学年児童の保護者向けの記事を書く機会が少ないので申し訳なく思っています。今回の記事のなかに参考になる点があったなら幸いです。

 なお、筆者がその日にお話ししたことは、学習塾から発信する情報としてはやや意外に思われるかたもおられると思います。というのも、受験塾、進学塾らしい合格実績の卓越性や指導力についてのアピールはなく、より善い人生を歩む人間に成長していくために必要な学びとは何かを明らかにし、そういった流れを築くうえで低学年児童期の学習にどのような役割や意味があるのか、今のうちに留意すべき学習とは何か、といったようなことを話の中心に据えたからです。なぜこのようなことをお伝えしたかというと、子どもたちが長い学習生活を通じて自らの知力を伸ばし、将来善い人生を歩んでいける人間に成長していくには、家庭教育との連携が不可欠であり、保護者と共通の視点に立つことがまずもって必要だと考えたからです。

 そんな筆者の話を、どなたも熱心に耳を傾けてくださいました。それは、学習塾としての弊社の姿勢や立ち位置をよくご存じの保護者が多かったからであろうと思います。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 当日、筆者がまずもって保護者にお伝えしたのは、「学力はどの子も伸ばせる!」という表題に基づく、三つの提案でした。その三つとは以下の通りです。

 まずは文字の習得を例に、学んだことが実際に活用できる勉強の重要性についてお伝えしました。たとえば、ひらがなや漢字の学習においては、早く覚える、たくさん書けることに偏重するのではなく、「文字は、人間の生活をより便利にするために発明されたものだ」ということに子ども自身が気づき、文字の果たす機能を実感しながら勉強することが望まれます。こうした学習を経験した子どもは、「大人主導で先行体験をしていた子どもを、小学校入学からわずか1年余りで一気に抜き去るほどの成果をあげる」と、学者の著した本に書かれていました。この点を踏まえ、学びの望ましい手順に沿った勉強の必要性をまずは会場の保護者にご理解いただきました。ご家庭においても、読むこと、書くこと自体から得られる楽しさをおかあさんがお子さんと共有するような関わりをされると、お子さんの学力形成に向けた流れをよりよいものにできると思います。

 いっぽう、刺激に対する反応性の高い時期が一定の時期に限定されており、そのタイミングを逃すと資質を開花させるのが難しくなる領域の学習もあります。たとえば、図形などの単元は「閃き」や「直観」がものを言いますが、こうした分野の能力は9歳前後までの遊びや学習体験が関与することが知られています。したがって、一律に学力形成を同じ視点から捉えるのではなく、求める学力の特性や性質に合わせ、柔軟に子どもに働きかける必要性があることをお伝えしました。もう少し具体的な親の関わりについては、若干ながら後でお伝えするつもりです。

 さらには、勉強で成果をあげる子どもには、ある種共通の特徴があります。たとえば、「思考を巡らせて問題解決の糸口を見いだすのが大好きである」とか、「覚えて反芻することに熱心で、興味の対象に関わる事柄について類まれな記憶力を発揮する」とか、「気持ちの充足感を大切にし、そのために目先の安易な楽しみに走ることがなく、我慢ができる」などの傾向がはっきりと見て取れる子どもは、勉強面ですばらしい成果を発揮します。

 以上の三つについては、生来の資質よりも育った環境や培った経験などが大きく作用します。つまり、どのお子さんにも高いレベルに達するチャンスがあるのです。しかしながら、ここで気をつけるべきは大人の関わりかたです。小学校低学年期の子どもにとって、勉強のモチベーションを左右するのは「親が認めてくれること」「親がほめてくれること」です。だからこそ親は、子どもにどのような学習を期待し、水を向けるかを誤らないようにしなければなりませんし、ほめて承認することを忘れないようにしなければなりません。この夏休みを機会に、親の勉強に対する認識をもう一度振り返り、より望ましいわが子の成長を引き出す家庭環境の実現に向けて気持ちを新たにがんばっていただきたいですね。このような願いを込めてお話ししました。

 次は、「児童期前半は、学力の〝伸びしろ″を形成する時期」という」タイトルで、学力形成における児童期前半という時期の特徴と役割についてお伝えしました。以下は、この項でお伝えした内容の小見出しです。

 これらについてお話しした内容は、文字にすると随分長くなりますので、できるだけ簡略にご報告させてください。

 小学校に入学し、学習の正式な場に立って活動を始めた子どもたちも、2年、3年もすると勉強に対する受け止めかたや構えに個性が出てきます。ですから、「勉強に前向きで熱心な姿勢をもった子どもに成長してほしい」と願うなら、親は児童期前半の学習体験や親自身の関わりの重要性に目を向ける必要が大いにあるでしょう。チャンスはまさに‟今”なんですね。

 勉強の大半は、言葉、知識、思考が関わって成立するものです。そのことに基づいて考えると、「小学校前半の学習において最も大切なのは、読み書き能力の土台をしっかりと築くことだ」と言えるでしょう。読むこと、書くことの学習が一定レベルに達すると、子どもは身につけた能力を活用することに熱心になります。その成果が、読書や学習活動の活発化という形で現われるのですが、そこに至るプロセスのなかに子どもの能力開花の鍵を握る重要な要素があります。それは、一言でいえば言葉を介したコミュニケーションの土台が真に築けているかどうか。この流れに関与するのは、文字とその読みを照合する音読体験、様々な言葉のやりとりを体験する親子の会話などです(これについてご説明すると大変長くなりますので、今回は割愛させていただきます)。読む、聞く、話す、書く、の4要素がしっかりと根づいた生活を実現していただきたいですね。

 前述のように、算数・数学の「閃き」や「直観」に関わる資質が開花するかどうかは、9歳前後までの遊びや学習体験で決まります。せっかく資質面で恵まれていても、開花するために必要な体験がなされないと、眠ったままになるおそれもあるのです。特に女子の幼児や児童の特性として、こうした算数のセンス育成に重要な働きをする遊び(積み木、タングラム、レゴ、おもちゃ遊びなど)と疎遠になりがちな傾向があります。そのことを踏まえ、今のうちに対処しておくべき点についても少しお話ししました。

 この項目の最後にある「学習習慣」についても少しご報告しておきたいですね。ルーティンのもたらす重要な作用については、みなさんもよく耳にされていることでしょう。よい習慣(ルーティン)、たとえば「毎日決まった時間に机に向かう」「宿題のチェックを、提出前日までに必ずしておく」「食事後の食器の片づけを必ずする」などの習慣は、毎日の繰り返しの産物であり、定着の度合いが一定レベルに達すると「やらずにはいられない」という状態になるものです。児童期の前半までにこの状態を築けたら、どんなに勉強は楽になるでしょう。勉強の主体である子どもは無論のこと、見守りサポートする親の負担までも圧倒的に変わるものです。決まった時間に机に向かう習慣は、黙読が可能になる2年生頃から定着可能になります。なぜなら、一人で机に着き、課題文を読んで考えることができるようになるからです。それまでは、おかあさんが声をかけて一緒に課題に取り組むなどの助走を試みるとよいでしょう。

 これらに関する今の状態を振り返り、この夏から何を重点的に強化すべきかを考えてみたらいかがでしょうか。親の関わりやサポートで、子どもを適切な方向に導いていけるのはあと僅かの期間です。子どもがより望ましい成長を遂げるには、当面の課題は何かをよく考え、今のうちに可能なサポートをしてあげてください。

 最後に、男の子、女の子の学力形成において壁となりがちな典型的なパターンを取り上げておきます。男の子は読みの習熟を図り、読解力の基礎を育てておきましょう。「思考や表現が幼稚な男の子」にならないためには、読みの態勢をしっかり築くこと、充実した親子の会話生活の実現がポイントです。また、女のお子さんは理系に強い女性に成長すると、将来の職業選択の幅が格段に広がります。理系の学問が苦手なために生じる苦労がずいぶん軽減されることでしょう。今のうちに、図形の遊びやパズル、レゴなどに親しむのもよいかもしれませんね。ちなみに、弊社の6年部の玉井式女子出身者は15~16名ですが、大半が算数のテストで高得点をあげています。やはり経験は生きるのだということを実感しています。

 児童期までの学習は、きちんと取り組めばすべての子どもが理解できる内容で構成されています。また、中学進学後の学習の発展を考慮すると、基本的に好き嫌いや得意不得意がないようにしなければなりません。それが子どもの人生の選択肢を著しく狭めてしまうからです。前述の内容も念頭に置き、勉強に偏りが生じないよう配慮してあげていただきたいですね。そうすれば、中学受験をめざして学ぶ段階になってからも困ることはなくなります。

 説明会当日は、他にもたくさんのことをお話ししましたが、また機会を見てご報告させていただこうと思います。 当日のアンケートに書いていただいた保護者の感想を拝読し、ずいぶん元気をいただきました。もっともっとお子さんがたの健全な知育に向けて役立つ情報を発信すべくがんばってまいりたいと存じます。ありがとうございました。

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「子どもに相談する」という選択肢はあり!?

月曜日, 6月 18th, 2018

 前回は、受験勉強においておかあさんが子どもにどう接するのがよいかを一緒に考えていただきました。おかあさんの命令や指示で勉強させたり、事細かにアドバイスしながら勉強させたりするより、「どうしてこういう成績になったのかな?」「今の勉強のしかたをどう変えたらいいと思う?」などと声かけをし、自分で考えながら勉強を進めていく方向に導いていくような接しかたをお勧めしました。

 ただし、これは日本の親にはなじめないやりかたかもしれません。というのも、子どもに関わる問題について、子ども自身に考えさせ、子ども自らが行動していくような接しかたをする習慣が、日本の親にはあまりないように思うからです。次の資料をご覧ください。

 この資料は、大学の先生がたが中心となって実施された国際比較調査の一項目です。子ども自身に関わる重要な決めごとにおいて、母親が「子どもに相談する」というアプローチによって、子どもの意志決定の姿勢を引き出しているかどうかを調査したものですが、日本の母親が一番この方法を採っていないことがわかりました。

 子どもが一番よい行動の選択肢を採るかどうかはとりあえず置いておき、まずは子どもの考えを引き出すために親が子どもに対して「相談する」のですが、日本のおかあさんがたはこういう方法で子どもの自主性や自律性を育てることをあまりしないようです。

 西欧先進国の中心的存在であるアメリカでは、およそ半数の母親が「そうである」と答え、「かなりそうである」も含めると、全体でも7割以上がこういう接しかたをしています。家父長制の色濃く残るトルコのような国においても、アメリカと大差ない結果が判明しています。隣国では、中国も前2カ国と遜色ない状態であり、韓国が一番日本に似た傾向を示している(これは、歴史や思想的な背景に基づくのか、受験事情が似ているからなのかはわかりません)ようです。しかし、それでも日本の倍近い割合のおかあさんが「相談する」と答えておられます。

 以上の結果に鑑みると、日本のおかあさんはもっとわが子に「相談する」というスタイルをとってもよいのではないかという気持ちになります。というのも、「受験」や「勉強」に関する決めごとは、お子さん自身にとっても大変重要なものであり、うまくやれる自分を強く求めているはずだからです。

 勉強は、ほとんどの子どもにとって楽なものではありません。その楽でないものに、「逃げずに向き合う姿勢をもってほしい」と親は願うわけですが、それが子どもにとって辛く難しいのです。大人ですら、困難なことに正面切って向き合える人は少ないのですから。成績がよければまだしも、よくない状態が続くとますます気持ちが後手に回ってしまいます。ですから、「もっと勉強しなさい」の言葉も効果がなくなってしまいます。「じゃ、無理にでもやらせるしかない」という強制的な手段が望ましくないことについては、これまで幾度となくお伝えしてきました。

 ではどうしたらよいのでしょう。「子どもに相談する」という方法は、この点において大変優れていると思いますが、いかがでしょうか。子どもも児童期後半ぐらいになると自尊心を強くもっています。同じことでも、「これは親に言われたことだ」と思うか、「これは自分で決めたことだ」と思うかでは、実行に移す際の意気込みが随分違ってくるのは間違いありません。

 親には予め「こうしてほしい」という願望が強くあったとしても、先にそれを言ってしまうのではなく、子ども自身に考えさせ、対処の方法を子ども自身で決めさせるようにすれば、気持ちのうえでも行動のうえでも明らかな違いが生まれることでしょう。子どもの考えを聞いたら、「やってみる価値がありそうだね」と笑顔で承認し、あとは子どもを信じて見守るのです。穏やかで落ち着いた雰囲気のもとでお子さんに問いかけると、お子さんだって本当はどうすべきかがわかっていますから、親が思いもしないようなことを言い出すことはありません。

 子どもに相談するという方法で、何事も子どもに決めさせるよう導いてみませんか?今までの流儀が親にも染みついているため、急にすべてがうまくいくとは限りませんが、どこかの時点で方向転換は必要です。もうすぐお子さんには、親の手の届かない世界へ足を踏み入れていく時期がやってきます。それより少しでも早い段階から、自己決定の習慣を築いておくほうがよいのではないでしょうか。

  ある年のことです。催しで今回話題に取り上げたアプローチ法について、おかあさんがたにご提案したことがあります。「『どうしたらよいと思う?』という問いかけを発して子どもに考えさせ、そこから自己決定への流れを築きましょう」ということを申し上げました。しばらくして、一人のおかあさんから「あの方法をやってみたんですけど、『おかあさん、そんなこともわからないの!?』と子どもに言われてしまいました」という報告を受け、「えっ!?」と、言葉を失ったことがあります。でもこれは笑い話として言われたようで、どうやらうまくいったご様子でした。みなさんも、ぜひがんばってみていただきたいですね。

 最後に。中学受験と長くかかわっている筆者が強く感じているのは、「よくできる子どもほど、親がかりで勉強をしていない」ということです。子どもに相談するスタイルを採っているかどうかはともかく、子どもに「自分のことは自分でやらせる」という方針を徹底しておられたからでしょう。自分でしでかしたミスは、自分で取り返す。それぐらいの強い姿勢がなければ、先々の大成は見込めません。負担の多い受験勉強だからこそ、「自分で決めたことは自分でやる」という信念をもたせ、子どもを信じて見守るのです。それがうまくいくと、大人もかなわないほどの意志の強さや実行力を携えた中学受験生に成長できるのだということを、多くのおとうさんおかあさんの子育てから教えられました。

 できなかったことも、子ども自らが状況を改善したいと願って積極的に粘り強く行動すれば、やがて必ずできるようになります。勉強は、精神的エネルギーに加え、反復や継続が命なのです。というのは、あきらめずに繰り返し情報を頭にインプットしながら思考を巡らすことで、脳はその種の学習領域に対する適応性を自ら育んでいきます。つまり、自分で考え行動すればするほど脳は鍛えられ成長していくのですね。さらに、「親が自分を信じて応援してくれている」という気持ちがそこに付加されると、子どもの学習活動はさらに活気を帯び、安定した成果を引き出せるようになっていきます。こうなると、学力形成にとって理想的な好循環の連鎖を引き起こしていくようになります。どうでしょう。こうして考えてみると、勉強ができる、できないは、先天的な要因よりも、「よい学力形成の流れが築けたかどうかによって決まるものなのだ」ということがわかりますね。無論、親から授かった優秀な遺伝子が作用する面もありますが、少なくとも学問で「優秀」と言えるレベルに漕ぎつけられる可能性は、すべての子どもに平等に与えられているのです。やらずにおいて、「頭の差」という結論は何物ももたらしません。

 それはそれとしても、「どうしてもあの学校に」という親としての願望を捨てられないかたもおありでしょう。弊社は受験塾ですから、保護者の夢、お子さんの夢が叶うよう、学習指導のありかたについての吟味は必死で行っています。そのうえで、「受験する子どもたちの望ましい取り組み」をどこまで実現できるかにこだわっています。なぜなら、結局受験をするのはお子さんがたのより善い人生の実現のためにあるのだと確信するからです。親としての、塾としての最善の行動を共に模索しませんか?

 敢えて言わせていただきます。受かるためだけの受験勉強に終始するのではなく、将来の大成の礎となる受験をめざしましょう。受かっても、間違った勉強法が染み付いては意味がありません。今から受験までの道程においては様々な問題が生じるでしょうが、「この方法は、ほんとうにわが子のためになるのか」という視点も忘れず、お子さんの受験と生活をサポートしてあげてください。きっと親子共々努力されただけの結果が得られると思います。

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子どもを変えるにはどうしたらいい?

月曜日, 6月 11th, 2018

 今回の話題は、主として4・5年生のお子さんをおもちの保護者、特におかあさんに多少なりとも参考にしていただければと思って取り上げました。

 正直申し上げて、おかあさんがたの多くはわが子の勉強ぶりを不満に思っておられると思います。でも、子どもは塾に通って勉強する理由をわかっていないわけではありません。無論、受験の意味を大人のレベルほどにはわかっていませんが、勉強して学力をつけ、入学試験で受からないといけないということぐらいはわかっています。また、「受かりたい」という願望ももっています。

 「それなら、もう少しましな勉強ができそうなもの。なんでこんなに中途半端な勉強しかできないの?」と嘆いているおかあさんはおられませんか? 理由は明白。この年齢の子どもは、親にすればいささか楽観的で無頓着に過ぎ、「今のままで入試合格にめどが立つのか」「自分の勉強はこれでいいのか」などについて、真剣に考えるほど内面が成長していないからです。納得していただけないかもしれませんが、多くの4・5年生の子どもの現実は、そもそもそういうものなのです。無論、この状態をいかにして早めに抜け出すかが、入試での結果を手繰り寄せるうえでとても重要なことです。

 4、5年生家庭の保護者とお話しすると、大概わが子の勉強ぶりに似たような不満を口にされます。「やるべきことを最後までできない」「悪い成績を取っても、悔しさがなかなか行動につながらない」などの不満は、まだやろうという気があるだけましなほうで、なかには「学習の計画が全然守れていない」「悪い成績をとってもケロッとしている」などと、ため息をついているかたもおありのようです。

 こんな状態のご家庭では、どんな対応をされているでしょうか。おそらく、親の期待はお子さんに伝えておられると思います。しかし、まだ親を満足させるだけの行動力や自制心が育っていないのでしょう。では、どうしたらよいでしょうか。子どもを変えようとするのではなく、おかあさんからわが子への対応を変えることが、いちばん効果があると思います。どうすればよいか、これから一緒に考えてみましょう。

 これは「たとえば」の話です。前から勉強の甘さ、実行力のなさを懸念していたところへ、かつてないほど悪いテスト成績をもらってわが子が塾から帰ってきました。次の3つの対応で得られる効果、マイナス効果をできるだけ突っ込んで考えてみてください。

 今からお伝えすることはややアバウトで乱暴かもしれませんし、なかには当てはまらないお子さん、ご家庭もあるかもしれません。言わんとすることを斟酌いただき、参考にできる点を生かしていただければ幸いです。

 まずは①について。こういう対応をされるご家庭の場合、そもそも以前から成績を見ては厳しく叱ったり、感情的になって怒鳴ったりされていた可能性があります。また、わが子の成績を見るまでもなく、初めからわが子の勉強を厳しく管理されている場合もあると思います。それも含めて考えてみましょう。

 まずは効果について。①のように親が振る舞うと、そこそこの成績は得られるでしょう。親がこのやりかたを入試までやり通せれば(お子さんが最後まで何とかついてこれたなら)、志望校の一つに受かるかもしれません。しかしながら、こういう子どもがトップランクの成績をあげたり、中学への進学後に学力を飛躍させたりする可能性は極めて低いと言わざるを得ません。理由は申し上げるまでもないと思います。常に受け身の勉強を強いられ、自ら試行錯誤する経験をしていない子どもは、自立勉強の達成に向けた成長ができません。自己管理・自己修正の能力が育たないため、将来社会人になってからも苦労することが予想されます。何より心配なのは、表向きは親の言うとおりに振る舞っていても、常に親への不信感や反発心を抱えた人間になるおそれを感じます(良好な親子関係は生涯の宝です)。

 ②はどうでしょう。このやりかたなら、子どももある程度親の対応を受け入れてがんばる可能性があります。むしろ歓迎し、高成績者のリストの常連になれるかもしれません。子どもの性格次第の面もありますが、親子の信頼関係がしっかりと築けたうえでこの勉強法に至った家庭では、最難関校入試での合格も果たせるかもしれません。ですが、①と同様に自分で考えて工夫しながら勉強してきた子ども、自らの試行錯誤を通して入試合格を得た子どもと比べ、創造性や逞しさの点で課題を残しているように感じます。親の助言を受け入れ、子どもが実行する。そのこと自体に問題はないのですが、過保護のもたらす欠点がやがて仇になる可能性も否定できません。子どもの将来の大成を期待するなら、この方法もやや問題があるように思います。

 最後の③はどうでしょうか。「今回、成績がすごいことになってしまったけど、どうしてこうなったと思う?」「これから、どういう勉強をしたらよいかな?」などと子ども自身に考えさせるのは、忙しい親にしてみればじれったくてもどかしく、なかなか事態の改善に至らないように思えるかもしれません。また、実際のところ、①や②の方法と比べて成果が表れるまでにずいぶん時間がかかるのは否めません。ですから、現実にこのように振る舞っているおかあさんはあまりおられないかもしれませんね。

 しかしながら、筆者はこれがベストの対応だと思っています。また、そもそも弊社の学習指導は「受験勉強を通した子どもの自立」を念頭に置いていますから、この方針に合致する親の対処法は③以外にはありません。弊社の授業においては、授業の受けかた、ノートのとりかたかた、家庭勉強のやりかたかたなどの基本的なことを繰り返しお子さんにお伝えしています。なかなかその通りにはできなくても、徐々にお子さんがたが成長していくための下地は築かれているのです。この流れに合致したおかあさんの対応として、「どうしたら、もっとよい成績がとれたかしら」とお子さんに考えさせる方法はとても望ましいものです。「復習していなかった」とお子さんが答えたなら、「復習の仕方はわかっている?」と尋ねたり、「予定通りにやってたかな?」と問いかけ、少しずつ問題の核心に近づいていけばよいのではないでしょうか。

 もどかしくても、感情的になって叱ったり厳しく命令したりせず、事細かに助言したりせず、子ども自身に問題の在り処に気づかせ、対処法を考えさせるのです。①や②の対処法は、延々子どもを同じ次元に留まらせることになりがちなのに対し、③は子ども自身の少しずつの進歩を引き出します。やがて子どもがある段階まで成長したとき、すばらしい躍進が予想できるのはこの方法しかありません。「真に価値のあるものは、もどかしく長いプロセスから生まれる」「本物は、なかなかそのよさがわからないものだ」という話を耳にすることがありますが、まさにその通りだと思います。自ら考え、自ら解決する姿勢を携えた人間の育成が、もうじき施行される新指導要領の目標として掲げられています。中学受験期の子どもは、柔軟性に富んだ成長著しい年齢にあります。小学生のうちにこそ、そうした姿勢を育んでいきたいものですね。

 なお、③の対処法をいきなり取り入れるのが難しければ、親子でテスト後の振り返りをして、親の感想も交えながら子どもに自分の現状を見つめ直す練習をさせることから始めてもよいでしょう。頭ごなしに命じたり、すべてを取り仕切ったり、あれこれと手を差し伸べる方法は、子どもの大きな成長の芽を摘み取ってしまいかねません。①のような方向に走りがちなおかあさんは、今から発想の転換を図ってみてはどうでしょうか。

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人間形成期の受験と勉強を考える ~夏期説明会のご案内~

月曜日, 6月 4th, 2018

 わが子にはできるだけよい学習環境を与えてやりたい。そして、学力・知性の高い人間に成長してほしい。――このような願いを抱く保護者はたくさんおられると思います。

 しかしながら、一歩踏み込んで「よい学習環境とはどのようなものか」と問われたなら、おそらく返答は人によって随分異なることでしょう。また、学力面での期待の大きい保護者同士でも、「そもそも学力とはどういうものか」と問いかけられると、それぞれ違った見解を提示されることでしょう。

 弊社は中学受験の専門塾ですが、「子どもが受験で合格すればそれでよい」とは思っていません。受験するのは人間形成途上にある12歳の小学生です。受験生活が学力面はもとより、人間としての成長に寄与するものであってこそ、受験をめざすことに真の価値が生まれるのだと考えています。したがって、学習塾が提供できる「よい学習環境」とは、‟学力向上”と‟人間としての成長”、この両方を満たす環境であり、学習塾が育むべき学力とは、善い人生を歩むために必要となる知性や人間力を養ってくれる能力なのだと思います。

 この点において学習塾が忘れてならないのは、中学進学後の長い学習生活を視野に入れて学習指導を行うということです。具体的には、暗記やスキルに偏重した受験指導(合格力は身についても、学びの姿勢の育成には寄与しない)ではなく、受験対策で習得した知識や技能が、後々のさらなる成長に向けた手立てとなって生かされるような学習指導を実現する必要があるでしょう。

 筆者は30数年間家庭学習研究社で広報の仕事をしてきました。そんな筆者にとって、上述のような考えに基づいた受験指導を実践するのは当たり前のことですが、中学受験塾の役割について一般のかたが抱いておられるイメージとは必ずしも一致していないようです。

 たとえば、ここまで述べたようなことを塾の方針としてお伝えしたとき、「あなたが今語ったのは教育ですよね」と訝しげな表情をされたことがあります。おそらく、そのかたには「塾は合格を請け負うところだ」という認識が強くあったのでしょう。確かに、学習塾は受験生を合格に導くためにあるのですが、そのための手段が人間としてのまっとうな成長に支障をきたすものだったとしたら、せっかくの合格も意味をなしません。「いかなる受験指導も、教育的側面からの配慮失くしては成り立たないのだ」と、弊社は考えています。

 子どもの勉強ぶりが思わしくないとき、「少々のことは目をつぶります。無理やりでもいいから勉強させて」といったような要請を受けることがあります。「とにかく、目の前の受験をクリアすれば、あとは学校がわが子を引っ張り上げてくれるだろう」「とりあえず、合格しないことには次の見通しは立たない」という思いが背景にあるのでしょう。その気持ちは痛いほどわかるのですが、合格をめざして汗を流すそのプロセスにこそ、子どもの近未来を予見させる真実があるのではないでしょうか。大人主導で行った受け身の勉強は、自ら這い上がるための手立てを育んではくれません。中学校で一から学びの態勢を築こうにも、速いペースでカリキュラムを消化する進学校において、真っ先に求められるのは、受験勉強で育てたはずの「自立勉強の姿勢」に他なりません。「蒔かぬ種は生えぬ」の諺のとおりです。受験準備の段階にこそ種を蒔き、先々伸びる芽を育てておくべきではないでしょうか。

 このところ、某大学のアメリカンフットボール部の危険な反則がもとで露見した、部活の歪んだ管理指導体制が国民的な関心を呼んでいます。監督やコーチが思いのままに選手を操り、スポーツマン精神とはおよそかけ離れたプレーを強要する。そこには学生一人ひとりの「人間的成長」という視点はかけらもありません。教育の一環として行われるべき学生スポーツの本分から逸脱した、主客転倒の実態が浮き彫りにされたショッキングなできごとでした。

 翻って学習塾も大勢の子どもたちをお預かりし、学習活動を支援する立場にあります。「これをまったくの他人事と看過してよいのだろうか」という気持ちが頭をよぎってきます。と言うのも、進学塾には「合格実績で人気を呼び込む」という一面があります。それが高じると「とにかく、何としても合格者を増やそう」という気持ちになるやもしれません。しかしながら、受験の主役はあくまで子どもです。また受験は子ども一人ひとりの将来を思い描いてのことです。当然、日々の学習指導は子どもたちの進歩・成長につながるものであるべきでしょう。この原点ともいうべきことを、常に忘れず肝に銘じておかなければなりません。そんなことを考えてしまいました。

 弊社の経営者は、「子どもの望ましい成長に資する学習指導の実践」という方針を設立当初から掲げてきました。前述の事件を通して、この方針に基づく学習指導の重要性を改めて痛感させられた次第です。前置きが長くなってしまいましたが、趣旨に免じてご寛容のほどお願い申し上げます。

 さて、この夏休みにお子さんの塾通いを検討されている保護者はおられませんか? 中学受験準備に向けた勉強のスタートを、この夏休みから考えているおとうさんおかあさんはおられませんか? このような方々のために、中学受験専門塾である弊社の学習指導についてご説明する催しをご用意しています。この催しの概要は以下の通りです。よろしければぜひお越しください。夫婦での参加も歓迎いたします。

 

①家庭学習研究社 低学年部門「夏期講座説明会」のご案内

 勉強に向いた頭脳の持ち主になれるチャンスは、全てのお子さんに平等に与えられています。小学校に入学し、文字や数字の学習が正式にスタートしてから約3年間の学習(例:読み書きの能力が目に見えて進歩するのは3年生頃です。ただし、それは小学校入学以来の学習の積み重ねや継続があってこそ可能になります)を大切にすれば、どのお子さんも学力に秀でた人間に成長することが可能なのですから。必要なのは、そのための流れを築くために大人が何をしてやるべきかの判断を誤らないことであり、そしてそれを実行に移すべく子どもに働きかけることです。

 弊社の「夏期講座」に興味をおもちのかたは、ぜひこの説明会にお越しください。夏の講座の説明だけでなく、学力優秀な子どもに成長していくために必要な道筋について保護者にご提案します。お子さんの学力形成に向けた、確かな見通しが開けてくるようお話しします。

 

②家庭学習研究社 中学受験部門「夏期入会ガイダンス」のご案内

 この夏休みから、中学受験準備のスタートを視野に入れておられるご家庭のために、全校舎で「入会ガイダンス」という呼称の催しを開催します(呉校のみ、「中学受験ガイダンス」という呼称の個別ガイダンスを実施します)。通学を検討されている校舎に、お気軽にお越しください。

 上述のように、弊社は「受験での合格」だけでなく、将来の充実した人生の実現に向けて確かな足がかりを築く学習指導を実践すべくがんばっています。どのような枠組みで、どのようにしてそれを果たすのか、ぜひ校舎の責任者の話を聞いてお確かめください。

 夏休みは、受験勉強を一から始めるうえでよいタイミングの一つです。「授業」と「家庭学習」を交互に繰り返しながら勉強の流れを築けるし、毎日の学習スケジュールに沿って勉強を進めていく姿勢を養えるからです。「入会ガイダンス」に参加し、受験の実状や必要な学力、塾の指導方針などに触れ、この夏休みからの受験生活のスタートに向けて、具体的に検討を進めていただければ幸いです。

 受験勉強のプロセスでは、子どものみならず親もいろいろと悩むものです。勉強へのアプローチのしかたも、即効性を求めるか、長い目で見るかなど、悩んだらきりがないほどです。しかしながら、子どもを取り巻く大人(保護者や学習塾)の考えかたの軸がブレてはいけないと筆者は思います。迷ったり悩んだりしたとき、最も大切にすべきは「それは真の成長に寄与するか」という問いかけに基づく判断ではないでしょうか。

 無理につくった形だけのテスト学力は、先々待ち受ける様々な困難を乗り越える力を与えてくれません。じれったくても、子どもが自分なりに努力して勉強のすべを身につけるプロセスを大切にしてやる必要があります。こうして培った学力は、正しい判断や行動へとお子さんを導いてくれます。そうした流れを築くためのお手伝いをするのが弊社の役割だと考えています。

 上記説明会に参加されれば、弊社の考えや指導についてより詳しい情報を得ていただけるでしょう。ぜひ一度足を運んでみてください。

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