子どもに‟自信”と‟やる気”を吹き込む親になろう!

7月 5th, 2021

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 さて、今回は先週の話題を引き継いで「子どもの自尊感情」を話題に取り上げてみようと思います。まずは次の資料をご覧ください。これは日本、アメリカ、中国、韓国の高校2年生が自分自身をどう思っているかについての調査結果を示したものです。なお、わざと日本のデータを白紙にしています。まずはあなた自身で1~11の質問に「全くそうだ」「まあそうだ」と思われるものに印をつけてみてください。前者なら◎、後者なら〇でお答えください。

 

 表中の数字は、「全くそうだ」もしくは「まあそうだ」と回答した生徒のをパーセントで示したものです。質問項目のは、人格や協調性などの人間的側面に関する質問です。3・4・5・10は自己肯定感に関わる質問だと思います。6・7・8・9・11は、メンタルの強さや安定度に関わる質問でしょう。いずれも、人間が前向きでよい人生を送るうえで欠かせない要素です。

 日本人の特徴として、「自信満々」のタイプにカテゴライズされる人物が少ないということはよく知られています。謙譲の美徳という言葉があるように、日本人は謙遜をよしとする傾向があります。ですから質問のなどの数値が低いことは予想されました。その点に鑑みるなら、数値はあくまで参考程度とすべきかも知れません。

 ともあれ、みなさんそれぞれご自身の結果を踏まえつつ、アバウトで結構ですから日本の高校生のデータを想像して書き込んでみてください。

 書き終えましたか? では、実際のデータを確かめてみましょう。質問は43.7%、質問は64.3%、質問は44.4%、質問は36.8%、質問は60.1%、質問は31.8%、質問は27.0%、質問は48.0%、質問は22.3%、質問10は56.1%、質問11は45.7%でした。みなさんの予想と概ね一致していたでしょうか。何と、質問の以外はすべて日本の高校生の数値が一番低いことがわかりました。これにはいささか驚かされます。

 自分の人柄について尋ねられると、日本人なら大人も子どもも多くは控えめに答えるでしょう。ですから、数値が低いことは予想できましたが、これほどまでとは思いませんでした。

 実は、この資料をご紹介した理由は、保護者の方々に質問項目の3・4・5・10などの結果、つまり日本の高校生の自己肯定感の現状を見ていただきたかったからです。というのも、自分の能力を肯定的にとらえられるかどうかが、お子さんの将来の歩みに大きな影響を及ぼします。みなさんのお子さんが高校生になったとき、これらの質問項目に「全くそうだ」「まあそうだ」と、内心胸を張って答える人間であってほしいですね。

 では、自分の能力に信頼の気持ちをもった子どもに育てるにはどうしたらよいでしょうか。それには様々な方法があると思いますが、今回はひとつのことに的を絞ってご提案しようと思います。それは何かというと、「努力を奨励し、子どもの努力の実践のプロセスをしっかりと見届け、ほめたり承認したりすること」です。努力すれば結果はついてくるということを子どもに実感させるのです。仮にうまくいかなかったとしても、「親ががんばったことをこんなにも喜んでくれる。認めてくれるんだ」ということを繰り返し体験することは、心の健全性を養ううえで大きな作用を果たすことでしょう。親がしてやれることとして、これ以上ないものではないでしょうか。

 だいいち、人間には誰にも一定の能力が備わっています。それなのに、ほとんどの人間は本来有している能力の何分の一も発揮しないまま大人になっているのです。その原因は、「やればできるんだ!」ということを実感する経験が足りないからではないでしょうか。

 努力の価値について、東京大学の遺伝学者は著書で次のように述べておられます。

 私のように遺伝の研究をしている立場からすると、その影響の大きさをことさら主張したいところですが、実際には、どうもそれ以上に環境の影響が大きいようです。

 たとえば、生まれつき知能が高いとしても、それにともなう努力がついていかなければ、その能力は発揮できません。平均的な知能であっても、努力すればかなりの能力を発揮できます。もちろん、ノーベル賞級の研究者になるには、生まれつきの才能が高いうえに、人にはまねのできない努力が必要でしょう。しかし、一般社会レベルでの「頭がいい人」「仕事ができる人」となれば、生まれもった能力はそれほど違いがないのですから、努力の量にかなり比例するといっていいのではないでしょうか。

 そして努力することによって、遺伝子のはたらきが変わることはあるのです。遺伝子自体は決して変わりませんが、遺伝子のオン、オフを変えることはできます。

 一生懸命努力すれば頭がよくなるのは、それまではたらいていなかった遺伝子がオンになって、有効に働くようになるからだと考えられます。

 生まれつき頭がいい人というのは、ある能力が働きやすい遺伝子をもっていて、それに対して、ある能力が不得意な人は、それが働きにくい遺伝子をもっているわけです。

 しかし、はたらきにくい遺伝子をもっていたとしても、くりかえし努力することで、その遺伝子のスイッチがオンになってはたらきやすくなることがあります。たとえば、もともとはたらきにくい遺伝子がある物質の受容体だとします。そのはたらきが悪いために、電気の流れがよくないわけですね。しかし訓練、努力を重ねることで、つねに電気が流れ、受容体のはたらきが活発になることは起こりうるわけです。

 どうでしょう。開花する可能性を有した能力を、埋もれたままにするのはあまりにもったいない話です。「うちの子には才能が必ずある!」と信じ、つねに努力する姿勢を引き出しやりたいものですね。

 わが子を受験塾に通わせていると、努力の大切さは十分にわかっているはずの親でも、目先の成績に振り回されて子どもの努力を認めてやることを忘れ、不満を漏らしたり叱ったりすることになりがちです。そうした傾向はありませんか? そうことが繰り返されると、子どもは能力開花に向けてよい流れを築くことができません。

 とは言え、親がわが子に努力の大切さを伝えるのは当然としても、いきなり努力、努力と言い出したのでは不自然です。まずはわが子の小さな努力を一つも見逃さないよう注意して観察することから始めたらどうでしょうか。ほめる対象は勉強面に限りません。努力の様子が感じられたなら、タイミングを見計らってほめるのです。喜んでやるのです。「親は、結果よりもプロセスを大事にし、がんばっていたらどんな結果になってもほめてくれる」――そういった雰囲気が家庭内で定着したら、子どもは必ず変わります。子どもが自信を失うのは、他者と比較され、自分にしたことを認めてもらえないときです。親がわが子を見守る視点を変えれば、子どもは自信を取り戻します。子どものがんばりに活気が伴ってきます。そうなると、上記引用文のように電気の流れがよくなるのは間違いありません。

 グローバル社会は、お子さんが社会に出る頃にはますます進んでいることでしょう。外国人との交流において、日本人の欠点としてしばしば指摘されているのは自己表現や自己主張の弱さです。それには自己肯定感が低いこととも大いに関係があると思います。自分にプライドをもち、自分の考えをしっかりと言えない人間が国際社会で通用しないのは自明のことです。国際派の人間が少ないのは日本人が英語を苦手にするからだという説もありますが、実は英語力は本質的問題ではなく、日本人が自分の考えをもち、その考えを、自信をもって主張する姿勢を欠いているからだと指摘する専門家も少なくありません。

 ものごとが意図通りに成就するには、少々のことではへこたれない精神力や実行力が不可欠ですが、それを支えるのは自分への信頼の気持ちではないでしょうか。わが子に自己信頼の気持ちを吹き込むのは親の大切な仕事の一つです。小学生までの子どもは、親の対応ひとつで大きく変わります。子どもに努力の価値を教え、自分に手ごたえを感じる体験をたくさん味わわせてあげてください。

※上記引用文は、「『頭のよさ』は遺伝子で決まる!?」石浦章一/著 PHP新書478 によります。

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