おかあさんは、がんばり過ぎないで!

2018 年 5 月 14 日

 毎年のことですが、弊社はゴールデンウィーク(GW)と重なる1週間は、全校舎・全学年とも休講としております。

 GWの期間は家族での長距離移動やイベントなどもあり、勉強も不規則になりがちです。まして受験生といえども小学生ですから、気持ちの切り替えが難しく、勉強に身が入らないものです。10数年前から「いっそのこと、1週間丸ごと休講にしよう」ということになり、以来ずっと継続しています。学習塾の指導担当者は、1年を通じてまとまった休みが取れない環境で働いています。ですので、この休講期間をよきリフレッシュの機会にさせていただいています。ご了承をお願いいたします。

 さて、2018年度の講座が始まってから2~3か月が経過し、一定のカリキュラムを消化してきましたが、お子さんはある程度勉強のコツや要領を身につけつつあるでしょうか。授業での指導は全員に同じように行いますが、日々繰り返される家庭での取り組みは、お子さんそれぞれに異なるものです。自分に合った勉強の方法やスタイルを確立することが学力伸長の度合いを左右しますので、こうした視点からも現状のチェックを今のうちにしておきたいものですね。。

 お子さんが自分の性格やライフサイクル、家庭環境にうまく合致した、最も成果の上がる勉強スタイルに行きつくまでにはある程度の試行錯誤が伴います。しかも、まだ頼りない面が多い年齢ですから、勉強を本人任せにするにはいささか心もとないのは否めません。現に多くのご家庭におかれてはそのことを実感され、様々な助言やサポートを試みておられると思います。

 たまたま、最近何人かの会員家庭のおかあさんと親のサポートに関してやりとりをする機会がありました。どのおかあさんも大変熱心にわが子の学習状況を見守りながらサポートをされているご様子で、「がんばっておられるな」と、頭の下がる思いをしました。そのなかで、「こういうのが理想だな」と思ったケースがありますので、今回はその話をご紹介してみようと思います。

 そのおかあさんは、お子さんが算数の復習に取り組む際、「ちゃんと正しい考えかたが身につくように」と、ご自身もお子さんに配布された解答と解説を熱心に読んでおられました。しかしながら、どなたも感じておられると思いますが、受験対策の算数は結構難しく、勉学から遠ざかって久しい親にとっては手強い課題がたくさん存在します。それに逐一取り組んで解を得るには、ましてわが子にわかるまでアドバイスするには、大変な努力と時間を要します。

 昔の話ですが、同じようなことをされていたおかあさんが、やがて算数という教科の魅力に引き込まれ、「あ~、もしも私が小学生のときにこんな考えかたや解きかたに出合っていたら、私は理系人間になり、全く違った人生を歩んでいたでしょうに…」と、冗談とも本気ともつかぬ思いを吐露されていたことを思い出します。で、果たしてこのようなサポートはアリでしょうか。

 少なくとも弊社はお勧めしていません。まず前述のように親に大変な負担がかかりますし、ましておかあさんが理解されたことをわが子に伝授するには、「もう一苦労」では済まないほどの苦労を余儀なくされることになりがちです。ついでに申しあげると、6年生秋頃になると、どんな優秀な親でも音を上げる難問が次々に登場してきます。親に頼らせるような流れをつくった挙句、一番肝心な追い込みの段階で親がギブアップするような事態に至ると大変です。第一、このような方法で合格に漕ぎつけても、中学生になってからの勉強で子どもが難渋するのは目に見えています。自らに課すべき家庭学習を選別して実行に移すことができず、未提出の宿題を溜めて四苦八苦するのがおちです。学びの自律性や自発性は、受験生の段階である程度築いておいてこそ、高度で進度のはやい中学校の学習についていけるものです。中学生になってから、急に学習の自立を果たすのは無理というものでしょう。何事もそうですが、種なくして花は咲きません。

 先ほどのおかあさんの話に戻ります。あるとき、おかあさんが着眼や解法について説明しようすると、「えっ、おかあさんでもこの問題ちゃんとわかるの?」とお子さんに言われたそうです。その言葉から、「勉強は自分でやるもの」という観念がしっかりとわが子に根付いているのを感じとられたようで、「もはや親が教えようとする必要はないのだ」と悟られたとか。わが子の成長の様子を見ながら、徐々に親が手を引く。これは弊社が保護者にお願いしたい肝心要のサポート法に他なりません。お子さんにとってもおかあさんにとっても、この流れは大変賢明で望ましいものだと思います。わが子を親以上の能力の持ち主にしたいなら、子どもの自立に向けたプロセスを見守り、どこかで親が手を差し伸べるのをやめる必要があるのではないでしょうか。

 受験は子ども自身のものです。汗を流して試行錯誤するのは子どものほうでなければなりません。親のほうが必死に問題の解きかたを勉強しても、それが必要なのは子どものほうであり、それでこそ汗を流した分の成長が見込めるのです。「かわいい子には旅をさせよ」という諺がありますが、かわいいわが子だからこそ勉強の自立に向けたもどかしい体験をさせてやらねばなりません。

 同じようなことは学習塾の指導担当者にも言えるでしょう。子どもたちのためにありとあらゆることを思い描いてはサポートする先生は、保護者から見ると「よい先生」かもしれません。しかし、それが子どもの学力増進につながるかというと、必ずしもそうではありません。先生の側があくせく手を尽くしていると、意外と子どものほうはその先生の指示を待つだけで汗をかいた勉強(頭を働かせた勉強)をしていないものです。

 筆者が指導現場にいた頃、目立った指導成果をあげていたのは、「授業で勝負をし、その授業を通して子どもの勉強を活性化させるタイプの先生」、「子どもが必死で家庭勉強に取り組むよう導くタイプの先生」でした。筆者などは、授業日は大概居残りをしたがる子どもたちに補習を行っていましたが、子どもの書いたものを点検してアドバイスをしていると、みるみる長蛇の列ができ、待っている子どもが騒ぎ出す始末で、極めて効率の悪いフォローをしていたことを後悔とともに思い出します。

 子どもが我を忘れて没頭するような勉強を実現するには、まずもって「いかに学んだらよいか」を習得させなければなりません。家庭での勉強がなかなか活性化していないと感じておられるなら、「今、わが子は授業をどのように受けているか」、「家庭勉強の要領がわかっているか」、などについてまずは確かめてみてはいかがでしょうか。

 授業は何のためにあるのか。家で何をどうしたらよいのか。これらを理解し、塾と家庭の勉強の連動性が生まれれば、子どもは間違いなく自分から机に向かい始めます。この流れを築くための指導は授業担当者の仕事です(もっとがんばらないといけませんね)。保護者におかれては、同じ視点に立ち、わが子が自分で勉強をやり遂げる姿勢を培えるようフォローをお願いいたします。受験の主役である子どもが必死で汗を流して勉強に取り組む受験生活を実現すべく、ともに応援してまいりましょう。

 最後に一言。受験は親が子どもの将来の大成をを願ってさせるものです。受験生である子どもが汗を流すプロセスこそ、先々の飛躍を実現するための経験的財産となるものです。親が子どものためにため汗を流すのは愛情ゆえのことですが、その割に子どもの成長に寄与してくれないものです。子どもの試行錯誤を見守り、子どもの一生懸命を応援するのが親の仕事なのだとご理解ください。

おかあさんは、がんばり過ぎないで!お子さん自身の苦労こそが、やがて血となり肉となるですから。


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