親の信念をもった子育てに感服した話
木曜日, 4月 8th, 2010
親は、子どもに何かと手を貸したくなる誘惑に抗しきれないものです。わが子がかわいいからこそのことですが、それが子どもの自立を阻んでしまうことになりがちです。そこで、とかく過保護になりがちな親御さんにとって、よい点を示しておられるおとうさんの事例をご紹介してみようと思い立ちました。
ある年、6年生から私たちの教室に通い始めた男の子がいました。聞くところによると、友だちが家庭学習研究社の教室に通っていることから中学受験に興味をもつようになり、おとうさんに「塾に通わせてください」と頼んだのだそうです。ところが、おとうさんは「その必要はない」と、聞き入れてくれませんでした。あきらめきれず、何度も何度もおとうさんに言ってみたものの、どうしても首を縦に振ってはもらえませんでした。
6年生になるとき、おとうさんは「じゃあ、1年だけ塾に通わせてやろう。精一杯やってみなさい。だが、だめならきっぱりとあきらめなさい」そのようなことを言われたそうです。
さて、彼の塾通いはこうして始まりました。彼の口癖は、「ボクはみんなに遅れているから、がんばらないといけない」でした。事実、彼はひたすら熱心に勉強しました。
しかしながら、1年、2年前から受験勉強をしているお子さんも、だてに早くから始めているわけではありません。基礎を身につけ、学習の土台を築いているお子さんに簡単に勝てるわけがありません。がんばってはいるものの、平均点をとることも最初はおぼつきませんでした。
でも、彼はひたすらがんばりました。自分から言いだして始めた受験勉強でしたから、気持ちの入りようが違っていたのでしょう。少しずつ確実に成績は上がり始め、夏の講習では成績上位者に食らいつけるまでになってきました。そして、秋が深まるころにはついに成績上位群の仲間入りをしました。そして、入試ではとうとう私立最難関校を含め、受験した中学校のすべてに合格しました。
彼は、最後の受験校の入試が終了したあと、教室を訪ねてきました。そして、筆者にこんなことを言いました。
先生、今まで本をたくさん紹介してもらったけど、受験勉強で精一杯だったので読めませんでした。今日、入試が終わったのでやっと読む時間がつくれます。実は、入試が終わったあと本屋に行って、紹介してもらっていた本をたくさん買ってきたんです。
これまで、どうもありがとうございました。それから、ボクには三つ年下の弟がいます。もし、家庭学習研究社にお世話になるとしたら、ボクと同じ6年生からだと思います。そのときはよろしくお願いします。
それから2年後、彼とまさにうり二つの容貌をした新6年生の少年が教室に通い始めました。塾通いが始めてらしく、はじめは戸惑っていたものの、すばらしい取り組みでとうとう受験校のすべてに受かりました。言うまでもなく、彼の弟です。
さて、この話をご紹介したくなったのは、彼らのおとうさんの骨太な教育に感銘をしたからです。筆者も愚息を弊社の教室に通わせましたが、1年間で受験を突破するなどという発想はできませんでした。彼ら兄弟がともに1年間の準備で最難関中学校の入試を突破できたのは、勉強以外のすべての面で子どもに高い要求をし、それができるだけの人間に鍛えておられた、おとうさんの厳しくも愛情深い子育てがあったからです。
わが子がかわいいのは誰しも同じです。しかし、わが子がかわいいと思う気持ちをどう子育てに反映させるかは、それぞれに違っているものです。とかく子どもに手を差しのべがちな筆者自身、「このおとうさんの爪の垢でも煎じて飲まなければ」とつくづく思わずにはいられません。これをお読みになり、同じような思いをされている方もあるかもしれませんね。少しでも参考にしていただければ幸いです。