中学受験にある親の苦労と子どもの未来と…

2023 年 9 月 4 日

   新学期が始まりました。今年は広島で開催されたG7サミットの余波で、夏休みが少し早く終わったようですね。お子さんは、夏休み気分を切り替え、スムーズに通常の学校生活に戻られたでしょうか。

 

 だいぶ前の話ですが、夏期講座をパスされていた6年生の男の子が、後期講座の開始直前になって、「勉強はイヤだ!塾には行きたくない!」と言って泣き出したことがあります。どうして夏の講座に参加されなかったのかは忘れてしまいましたが、どうやら受験をしない友達と交わっているうちに「なんでボクだけ勉強しなきゃいけないのか」と思い始めたようでした。

 

   先日も、夏期講習終了後に「6年生になったらがんばるから、5年生のうちは遊ばせて」と言い出した男の子がいて、困ったおかあさんから相談を受けました。高学年ともなると、心境の変化には相応の理由があり、いったん言い出したことは簡単には翻さないものです。このお子さんの場合、「6年からがんばればなんとかなる。だから今は好きなようにさせてほしい」と思ったようです。ズームで説得を依頼されたのですが、突然の話なのでよいアイデアが浮かばず、「今まで一緒にやってきた友達はこれからもがんばると思うよ。きっと力をつけるし、そうなるとますます自信が深まってがんばるだろう。そんな友達に、簡単に追いつけると思う? 」と、問いかけてみました。そのあと、いくらかやりとりをしているうちに、お子さんは自分の考えが甘かったことに気付いたようで、なんとか事なきを得ました。

 

 このように、受験生とは言っても未熟な小学生です。受験の動機も、自分の将来とつなぎ合わせて客観的な判断に基づいたものでないため、強い意志でやり通すことができません。勉強の戦略性や一貫性を期待するのは無理というもので、考えが途中から変わったり、取り組みにムラが生じたりするのが普通です。そのいっぽう、小学校の高学年は内面の成長が人生で最も著しい時期で、このときにどのような体験をするかで、ものごとへの取り組みの姿勢や人間としての生きかたも定まっていきます。それは子育ての観点に立つと、わが子の望ましい成長に向けて親が影響力を発揮できるのは、児童期までだということを意味するでしょう。中学受験の大いなる意義はそこから生まれるのだと弊社は考えています。親の関わりが、入試結果以上の成果をもたらしてくれるのですから。

 

 すなわち、すぐには結果が得られない大きな目標を子どもにもたせ、辛抱強く努力する経験をさせることで、普通の小学校生活を送るだけでは得られない大きな成長(学力、取り組み姿勢、ものの考えかたなど)を引き出すことができるのです。前述のように、中学受験に対する確たる目標意識をもつのが難しい年齢ですが、おぼろな中学・高校生活に夢を馳せ、小学生としてはやや難度の高い勉強に打ち込ませる経験が子どもの成長を引き出してくれます。当然ながら、親の思い通りにいかないことが数多く生じますが、そのときにどう対処するかが、子どもの人間形成に多大な影響を及ぼします。固まらない年齢にあるということは、入試のプロセスで生じる様々な困難を乗り越える経験が、子どもの人となりを築いてくれるのですね。

 

 子どもにやる気が見られなくなったとき、あなたはどうしますか? 心配になってあれこれ理由を尋ねる。とにかく叱咤激励する。腹を立てて叱り飛ばす。どうしてよいかわからず途方に暮れる。子どもの様子を見て声をかける。子どもを机に着かせ無理やりやらせる…。家庭それぞれに違った対処法があると思います。その判断にあたっては、「将来、わが子が一人前の大人として社会に通用する人間に成長していく流れ」を意識すれば、おのずと決まってくるのではないでしょうか。

 

 このようなことを申し上げると、困惑されるかたもおられるかもしれません。「まるで脅しじゃないか」と思われるかもしれません。よい方法がわかっていれば苦労はないのですから。しかし、ある確信と信念をもっていればどのような対処でも大きな問題にはなりません。それは、「私は心から子どもを愛し、子どもの未来の成功を祈っているのだ」という熱い思いです。子どもがそれを感じ取っていれば、小さな軋轢は繰り返されたとしても、結局は親の意向に沿った行動をとるようになります。

 

 夏休み前に広島学院さんとのジョイントで、佐伯区民文化センターと西区民文化センターでイベントを開催しましたが、そこで「どんな生徒さんが広島学院というハイレベルな教育環境で伸び伸びと学び、保護者が期待しておられるような成長を遂げていますか」という質問をしたところ、その説明の言葉のなかに‟自立”‟自律”という言葉が何度もありました。自分の行動を律することのできる自立した人間に成長していけば、自ずと自分のなすべきことを心得、それを自ら実行できるようになるということであろうと思います。

 

 幼さの残る子どもの受験生活は、見守る大人にとってはもどかしくじれったいものです。しかし、その心もとない勉強ぶりをどう見守り、どこまで手を差し伸べるかで、子どもの成長の度合いは違ってきます。焦らず少しずつの進歩を期待し、辛抱強く励ましてやりましょう。癇癪を起して叱り飛ばしたり、業を煮やして親が勉強を取り仕切ったりしてしまうと、少しずつの成長が止まってしまいます。その少しずつは、1年で目に見えるすばらしい成長につながるのですから勿体ないというしかありません。

 

  さあ、勉学にスポーツに最適な秋が間もなくやってきます。「愛情深く、辛抱強く」を合言葉に、この秋からのわが子の成長を応援してまいりましょう!

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カテゴリー: 家庭学習研究社の特徴

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