2018 年 7 月 23 日 のアーカイブ

子どもの自己肯定感と自然体験・生活体験等の関係 その1

2018 年 7 月 23 日 月曜日

 この7月、西日本を中心に発生した集中豪雨により、多くの地域が大変な被害に見舞われました。わけても広島県は道路の崩落、河川の氾濫、土砂崩れなどによって、たくさんの尊い命が失われています。数多くの家屋が損壊し、ライフラインにも多大な影響が生じています。亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたしますとともに、被害を被った地域の方々が、一日でも早く以前の生活を取り戻せるよう念じるばかりです。

 このような折でもあり、当ブログの掲載をしばらく見合わせることを検討しておりましたが、過去の掲載記事を閲覧してくださるかたが多数おられ、迷った挙句掲載を再開することにいたしました。

 夏休みに入り、弊社では21日の「6年部 中学受験夏期講習」の開講を皮切りに、各学年の夏の講座が次々に始まりました。災害の起こった直後で心配しましたが、無事に開講することができ、とりあえずはほっと胸をなでおろしたしだいです。

夏休みは、年間を通じていちばん長い休暇ですから、中学受験をめざしている子どもたちにとっても、ただ受験勉強に時間を当てるだけでなく、普段経験できないことがらに挑戦し、人間としてより幅広い成長を遂げる絶好のチャンスにしていただきたいですね。

 

 今回は、自然体験や生活体験、家庭の手伝いなどと、子どもの自己肯定感の状態との関連性についての調査結果をお伝えしようと思います。まずは、次の資料をご覧ください。

 
① 自然体験の現状

※本調査は、国立青少年教育振興機構が平成27年2~3月に実施したものです。小学4年生3084人、5年生3152人、6年生3043人、中学2年生5140人、高校2年生5647人を対象に行われました。いずれも公立学校の児童・生徒です。
 
 この資料は、子どもの自然体験の現状について調べた結果を明らかにしたものです。時間や労力をさほど必要としない自然体験は、かなりの子どもたちが経験しているようですが、キャンプは連れていく大人に知識や経験が必要ですから、経験していない子どもも多いようです。また、自分の足で高い山に登る経験も、親が経験者であったりそういうことが好きであったりしないと、子どもも経験するチャンスが得られないようです。

 自分の家庭の話で恐縮ですが、筆者はキャンプが苦手で一度も息子をキャンプに連れて行った経験がありません(お恥ずかしいかぎりです)。ただし、キャンプの経験は必要だと思い、カブスカウトに入れたことを思い出します。また、山登りは3歳頃からかなりの回数を経験させました。山の植物を手に取り、図鑑で照合する楽しさを教えてやろうと思ったからです。何度も山へ行くうちに、目の前の植物の名前を親に教えてくれるようになりました。もう昔の話ですが、そういう思い出は懐かしいものですね。普段町中に住んでいると、自然体験はなかなかできないものです。みなさんのご家庭では、意図してお子さんに向けている自然体験はおありでしょうか。

 引き続き、生活体験の現状、家庭での手伝いの現状に関する資料をご覧ください。

 

② 生活体験の現状
  
③ 手伝いの現状
 

 赤ちゃんのおむつを換える経験などは、きょうだいの少ない今日では経験しようにもできない家庭も多いことでしょう。「他者のために何かをする」という意味では、電車やバスでお年寄りに席を譲った経験なども、同じように生活体験の括りに入れることができるでしょう。生活体験というと漠然としますが、「日常生活で、自分自身に関わることをどれだけ自分でしているか」や、「身近な地域社会や人との接触・関わりがどれだけあるか」「弱い立場にある人のために、何かしてあげようとかしたか」などは、いずれも生活体験の範疇に入ります。これらの観点から、ご家庭の現状を振り返ってみてください。

 手伝いに関しては、全般的に「必ずやる」という回答が少ないのが少し気になりました。しかしながら、全般的に多くの子どもたちが家で手伝いをしているようです。筆者は、「少子化が進み、便利で快適な生活が実現した昨今、昔なら子どもが当たり前にしていた手伝いが減少しているだろう」と勝手に決め込んでいたのですが、10年以上前の調査と比べると、子どもが家で手伝いをする傾向は以前よりも強くなっていました。「家族のために、自分でやれることをする」という経験は、家族間の信頼関係や、子どもの人としての成長にとって間違いなく必要なことです。「受験生だから必要なし」ということはありません。むしろ、行動の切り替え能力や実行力、ものごとに取り組む意欲などにプラスの影響をもたらすものです。ぜひわが子に手伝いをさせてやりましょう。

 さて、筆者が注目したのは、この調査において「子どもの自己肯定感」との関連性、それもプラスの関連性が明らかにされたということです。自然と触れ合う体験が多いことも、豊かな生活体験をしていることも、家庭で手伝いをたくさんしていることも、すべて子どもの自己肯定感を高める効果があるということがわかりました。当然ながら、このことは子どもの学業面での成果にも間違いなく影響を与えるでしょう。自分をOKであるという気持ちは、「為せば成る」という自信につながります。

 次回は、上記の3つの調査項目と、自己肯定感との関連性を示すデータをご紹介します。また、自然体験や生活体験、手伝いなどが、なぜ自己肯定感につながるのかについても、筆者なりに考えてみようと思います。なお、最後にひとつ申し上げておきたいこと、お願いしておきたいことがあります。日本では、子育てや親子の接触にかける時間がおかあさんに著しく偏っているという現実があります。夏休みの自然体験などは、おとうさんが活躍してお子さんの存在感を高める絶好の機会です。可能なかぎり時間を割き、お子さんと一緒にすごす機会を増やしていただきたいですね。ぜひがんばってください。

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カテゴリー: アドバイス, 子育てについて