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子どもの読書活動の活性化に向けて その2

木曜日, 11月 15th, 2018

 先週に引き続き、「子どもと読書」をテーマに掲げてみました。今回は、読書心理学を専門とする先生の著作の一部が目に留まり、それをご紹介しながら、読書のもつよさについて共に考えていただこうと思います。内容は、「同じ本を読んでも、子どもの年齢や成熟度によって『面白い』と感じる場面が異なる」というものです。

 「よい本は、年齢を問わず誰が読んでも面白い」とよく言われていますね。みなさんも、子どもの頃に読んだ本で、今でもお気に入りの本があるのではないでしょうか。あるいは、昔読んだ本が懐かしくなり、再び手に取って読まれたことのあるかたもおられることでしょう。ただし、同じ本でもそのどこを面白いと感じるかは、年齢や心の成熟とともに変わっていくようです。

 読書心理学の専門家として著名な東京大学の先生の著作に、同じ本のどこを面白いと子どもが感じているかを調査した結果が紹介されていました。調査研究に使用された本は、みなさんよくご存知の「ないた赤おに」(著者:浜田廣介)です。調査対象は、小学3年生93名と5年生93名の児童でした。学年の違う子どもたちそれぞれに同じ本を読んでもらい、提示されたあらすじのどの場面を面白いと感じたかを指摘してもらったところ、年齢によって面白さを感じた場面が異なるということがわかったそうです。

 上記の書物には、子どもたちの感想として次のようなものが紹介されていました。

 「さいごの場面がかわいそうだった」「やさしいお話でかわいそうなお話だった」「あおおにの気もちとあかおにの気もちがよくわかった」「二人はとてもなかよしなおにだとぼくは思いました。あと、しんせつでやさしいおにで、たすけるおにだと思いました」と、小三の子どもたちが読み終えた後の感想を書いてくれています。

 また、小五の子どもも次のような感想をあげています。

 「赤鬼はとくをしたけど、青鬼は自分がぎせいになってあげた。最後にぼくは赤おによりも青おにのほうがやさしいなと思いました。自分より先に友達のことを考えてあげるのはとてもよく、ぼくもこういう友達がいたらすごいだろうなと思いました。

 「おには人間には悪いものだと思われているが、作者はおににも心のやさしいおにがいるということをいいたのだと思う。赤おには立て札をたててまで人間と仲良くしたいというのはすごいと思う。青おには自分をぎせいにしてまで赤おにを人間と仲良くさせてあげたいというきもちはすごいと思う。

 紹介された子どもたちの感想を読むと、それぞれの学年の子どもなりに読んで感動したり面白さを感じ取ったりしている様子がうかがえます。この調査研究にあたった先生は、物語をあらすじごとにいくつかのブロックに分け、それぞれの学年の子どもたちがどこを面白いと思ったかを調べておられます。詳細については割愛させていただき、あらすじのおもな場面ごとの子どもたちの反応の様子をご紹介してみましょう。

 上記の調査研究をされた先生は、3年生と5年生の読み取りの違いとして、小3が第二部分を面白いと思っているのに対して、小5は第3部分を面白いとしている点を指摘されていました。また、おもしろかった箇所にある記述の特徴を面白さの広さと内容によって分類し、かなり詳しく両者の違いを分析説明されていました。ただし、ここでは筆者の目についた特徴的な違いのみについて触れておきます。

 上表をご覧になると、おもしろいと感じた場面はエピソード6と9に集中していることがわかります。二つの場面の違いはどんな点でしょうか? エピソード6は青鬼が暴れまわるシーンが印象的で、アクションが目に見えるようで躍動感があります。いっぽう、エピソード9はなんだかしんみりとした様子が描写されています。青鬼が自分(赤鬼)のために犠牲となり、旅に出るという趣旨の手紙を読んでいる場面です。

 小3・小5ともに面白いと思う場面に共通性はありますが、小5のほうがエピソード9のほうにより多く反応しています。上記研究者の先生は、年齢による面白さの違いについて、「おかしいとかスリルがあるというおもしろさだけではないおもしろさを味わい感じとっていることがわかる」と述べておられます。つまり、年齢が上がるほど読み取りの質が変わってくるということなのでしょう。

 試しに同じ物語を中1の生徒90名ほどに読ませてみたところ、やはり小5と同じように第三部分に対する反応が目立ったそうです。おもしろさについての言及に注目してみると、子どもたちは「じーんときた、泣けてきた、心温まった」といったような語で読後感を表現していました。やはり年齢があがると、同じ場面に共感した場合でも、自分の受け止めかたや気持ちをより細かく的確に表現できるようになっていることが伺えます。

 どうでしょう。子どもは読書活動の繰り返しを通じて、仮の体験をたくさんしていきます。このことが語彙の著しい増加をもたらしますが、それは同時に内面の成長にも影響を及ぼします。ですから、本の筋立てのなかで興味をもったり、共感したり、感動したりする部分が年齢とともに変化していくのは当然の流れだと言えるでしょう。さらには、読み味わって得た感想や共感を述べる場合にも、より詳細に、自分の微妙な感じ取りかたも伝えられるようになっていくのですね。

 一度、お子さんと同じ本を読んで、読後感を交換してみてはいかがでしょうか。わが子が、その本のどこに興味をもち、心を惹かれているのか。そのことを知ること自体が親にとって興味深いことですし、親が思ってもみなかった成長を発見されるかもしれません。おかあさんが「面白かった」と言った箇所について、お子さんがどういう反応を示すかも楽しみですね。

 ご承知のように、読書は実益を意識して行うものではありません。様々な本とのめぐり逢いを通じて、心の中の世界を広げ深めていける楽しさを味わうことこそ、読書の魅力と言えるでしょう。親子で本を楽しむことは、家族がある側面において価値観を共有する、家庭文化の形成にも少なからぬ貢献をしてくれるものです。前回は、本を全然読まない中学高校生が増えているという調査データをご紹介しましたが、今のうちにわが子を本好きにしておくことも、親からわが子へ授けられるすばらしい贈り物ではないでしょうか。

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Posted in アドバイス, 子どもの発達, 音読・読み聞かせ