Archive for 7月, 2022

夏の講座をどう生かす? 保護者にお願いする視点

日曜日, 7月 24th, 2022

 2022年度の夏の講座が、7月21日の「6年部 中学受験夏期講習」を皮切りに始まりました。引き続き、23日(土)には、「4年部・5年部 夏期講座」が開講しています。低学年部門の夏の講座も、25日(月)に3年部、26日(火)に2年部、27日(水)に1年部が開講となります。

 通常の講座は、学校への通学と併行して行われるダブルスクールの形態をとっているため、元気盛りの子どもたちとは言え、肉体的な負担は少なくありません。しかし、夏休み期間は学校への通学がないため、塾での勉強に集中しやすい状況にあります。家庭で塾の勉強の予習(5・6年)や復習(4~6年)に取り組むにあたっても、通常講座の時期よりも時間や気持ちに余裕をもつことができます。したがって、夏休みは中学受験対策の勉強を始めるにあたっても、また、中学受験対策の勉強を軌道に乗せるうえでも、大変ふさわしい時期の一つです。このタイミングをうまく生かせば、学業面での飛躍が大いに期待できるでしょう。

 ただし、長期休暇には独特の開放感があります。また夏休みは年間で最も蒸し暑い時期です。そのために生活習慣が乱れたり、勉学に取り組む姿勢が崩れたりするケースもあります。それに加えて、いまだに沈静化しない新型コロナウィルスの感染問題もあります。保護者におかれては、健康管理と生活の規則性維持に向けて、十分に注意を払っていただきたいと存じます。この夏をどう過ごすかで、夏休み明けのお子さんは全く違った状態になる可能性があります。小学生は短期間で随分変わります。言い換えるなら、夏休みは先々の展望を明るいものにするビッグチャンスです。子どもの成長を引き出しましょう!

 なお、夏休みの学習に直接関わる事柄に関しては、校舎長および教科の指導担当者が責任をもってサポートいたします。筆者は家庭でお子さんを見守っておられる保護者に向けたフォローをするのが主な役割であり、それゆえ勉強に直接関わるお話はいたしませんのでご了承ください。

 今回は、夏の講座がスタートしたばかりですので、夏休み期間中に保護者の方々にお願いしたい、ご提案したいサポートに関する話題を取り上げてみました。具体的には、長い休暇でこれまで築いた学びの習慣や姿勢を維持するとともに、より学習成果が得られる状況を築くために、家庭でどういった点に配慮し、何をしたらよいかについてお伝えしようと思います。それは小学生のお子さんをおもちのご家庭にとって、実にシンプルかつ当たり前のことです。

 毎日の生活で絶えず繰り返されていることは、子どもの人間形成に多大な影響を及ぼすものです。朝の起床や夜の就寝などの基本的生活習慣や、遊びと勉強の切り替え(自己制御・自己管理)などがそれにあたるでしょう。これらは、能力として数値化できませんが、テスト学力を規定する重要要素として大変重要な役割を果たします。成績という「目に見える学力」を支える、「目に見えない学力」の要素です。これらは「非認知能力」と呼ばれ、近年世界中の学者や教育関係者に注目されています。

 たとえば、朝自分で起床することは、人間としての自立の根幹に関わる部分であり、これすら自立していない子どもが、次元の高い学問領域で成果をあげる人間になること、まして社会のリーダーとして活躍できる人間になることなど到底期待できないでしょう。そこで、基本的生活習慣の自立を、この夏の目標にすることをご提案します。実際のところ、大がかりな調査によると、小1から小6までの6年間に、大概の子どもが朝の起床を自分でやれるようになっているかというと、半数以上の子どもは高学年になっても自分で起きられない、もしくは、自分で起きたり親に起こしてもらったりをくり返している状態に留まります。この様相を変えるだけで、子どもは随分変わるのは疑いありません。

 もう一つ、「遊びと勉強の切り替え」ですが、中学受験生家庭の大部分がこの問題で悩んでおられます。テレビを観たり、ゲームをしたりした後、勉強の時間が来ているのに気づいても「もうちょっと」「あと少しだけ」と、なかなか重い腰がもち上がりません。たまりかねたおかあさんが、「いい加減にしなさい!」と大きな声を出して叱り、やっとしぶしぶ机に着くような有様の子どもが少なくありません。これでは勉強への切り替えがままならず、ダラダラと非効率的な取り組みをくり返すことになりがちです。これらは理屈に基づく行動ではありません。朝の起床にしろ、遊びから勉強への切り替えにしろ、「そうするのが当たり前」の状態になるまでの習慣づけが勝負です。そして一旦その域に達したなら、親の心配や苦労は一気に減ります。

 ここで、「じゃ、どうしたらやるのが当たり前になるの?」と困惑される保護者もおありかもしれません。それについては、前々回のブログ(おかあさんセミナー 実施報告2)で三つほどご提案していますので、よろしければそれを参考にしてください。基本として胸に留めていただきたいのは、「子どもの前向きさを目覚めさせる扱いや接しかたを心がけること」です。親はわが子が期待通りにしてくれないと腹を立て、我知らず子どもをコントロールしようとしがちです。それが子どもの反発を招きます。子どもも、自分が悪いのはわかっています。ですから子どものプライドを挫くのではなく、「本来はどうすべきか」を考えるゆとりを与え、子どもの「自分からそうしよう」という気持ちと行動を引き出すのです。愛情に基づく高等戦術を考えましょう。

 何につけそうですが、好循環の連鎖を引き出すには、大変な苦労や忍耐が伴います。ですが、壁を乗り越えて「自然と体が動くレベル」まで習慣化できたなら、状態は一変します。今はまだお子さんは親を頼りに生きています。そのときこそ、親の愛情や期待を発信し続け、「やれるよ」「やってごらん」と辛抱強く励ましてやりたいものです。そして、少しでも進歩が見られたら喜んでやりましょう。

 その際に重要なのは、日々のお子さんの生活を注意深く観察し、進歩の芽が出かけているタイミングを決して見逃さないことです。親に認められることほど、うれしいことはありません。しかも、具体的に行動を指摘されると、「おかあさんは見ていてくれたんだ!」と喜びも倍加しようというものです。結果で評価されるより、努力の様子をほめられるほうが、子どもの心に及ぼす影響ははるかに大きいものです。当面、成績は二の次でよいのです。前述したように、一旦行動の自律や自発性を獲得したなら、子どもはすばらしい勢いで成長を遂げていきます。

 この夏休みを、子どもの成長に向けた大いなる転換点にしようではありませんか!

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オンラインセミナー「公立一貫校の魅力とは?県広編」を開催しました!

金曜日, 7月 15th, 2022

 去る6月26日(日)、家庭学習研究社オンライン親子セミナー「公立中高一貫校の魅力とは?広島県立広島中学校編」を開催いたしました。多くの参加者の方々からご好評をいただいた第1回同セミナーの「広島市立中等教育学校編」に続き、第2回にあたる今回は、広島県立広島中学校(以下「県広」とさせていただきます)にお声掛けをし、快くご協力いただける運びとなりました。

 当日は東広島市にある同校にお邪魔し、司会進行役の当社スタッフが話題を投げかける形で同校の先生に話し手をお願いしました。当日はぜひ生徒さんにも加わっていただきたかったのですが、定期テスト直前の時期ということで、代わりにインタビュー形式で事前に収録したものを視聴していただく形でご参加いただきました。

 本来は会員生家庭限定の催しですが、ブログをご覧いただいている皆様にも少しだけご紹介させていただこうと思います。

1.併設型中高一貫校の良さについて

 公立校である県広では、先生方の定期的な異動もおありです。先生のご経験をもとに、前任の一般の中学校との比較による一貫校の良さや、完全中高一貫校と比較して、“併設型”一貫校であることのメリットなどについてお話しいただきました。単に高校受験をしなくてよいというだけではなく、高校受験に費やす時間を短期留学や検定学習等の自己向上のために使うことができる点が最も大きなメリットであるとお話しされました。また、“併設型”の利点として、高校進学時に県広中以外から約80名の生徒が新たに入学してくることにより、新たな出会いや人間関係が生まれ、学習や部活動においてもお互いに切磋琢磨する中で刺激を得ることができること等を挙げられています。

 2.学校独自の教育活動や取組について

 県広では、「高い水準の授業づくり」を掲げられ、オリジナリティ溢れる教育活動を展開されています。中でも中学校の「ことば科」が有名ですが、その取り組みの内容やその他の県広ならではの教育活動をご紹介いただきました。中学校の3年間で計画的に言葉の力を育んでいけるよう、ディベート、プレゼンテーション、ディスカッション等の活動によって論理力を磨いているそうです。

3.英語教育について

 県広は「スーパーグローバルハイスクール(SGH)ネットワーク参加校」に認定されていることもあり、保護者や受験生の中には英語の指導に関心を持たれている方が多いようです。これを踏まえて、入学後の英語教育の特徴などについてもご説明いただきました。中学校卒業時までには英検3級以上の取得を目標に取り組まれているとのこと。コロナ禍前には希望者を対象にカナダへの語学留学を実施されていましたが、現在は東広島市内の施設にて留学生を招いて語学研修を行われているそうです。

 4.学習面のサポートについて

 「入学後、授業についていけなくなったらどうしよう」と不安に思われる方もいらっしゃると思います。この点に関して、習熟度別の取り組みや補習、その他学校でのサポート体制についてお話しいただきました。英語・数学に関しては習熟度別に展開されており、夏休み前の時期などは定期考査の結果を踏まえて対象者に補講も実施されているそうなので、「授業についていけない」という心配はしなくても大丈夫とのこと。

 あわせて、併設の広島高校への進学後、2年生時から「文科型」「理科型」に分かれ、さらに「グローバルクラス」「スタンダードクラス」という2つのコースにも分かれるとのこと。こちらの振り分けの基準や各コースの内容などについてもご説明いただきました。

 5.遠方からの通学および寄宿舎について

 遠方に住まわれている方は、「通いたいけど通学が心配で……」と気にされている方も少なくありません。また、学校の敷地内に寄宿舎が完備されているという点も県広の特徴の一つになっていますが、この「凌雲塾」と名づけられた寄宿舎についても、入寮の基準や生活の様子などについてご説明いただきました。現在、中学生の寮生47名のうち、広島市からの15名と呉市からの11名で半数以上を占めているとのこと。入寮の基準は、単純な距離の長短ではなく、自宅から学校までの通学時間等によって判断されるそうです。

 その他、県広における進路指導やキャリア教育に関するお話、県広生の卒業後の進路についてのお話や、入学に際しての適性検査対策に関するアドバイスなど、この限られたスペースではとても書き切れないほど、多くのお話をしていただきました。様々な話題についてお聞きしたにもかかわらず、先生には時間いっぱいまで一つひとつ詳しく丁寧にお答えいただきました。

 セミナー終了後の参加者アンケートでは、「県立広島の良さを知れて、県立広島の特徴や県立広島だけにしかない授業などを知ることができた」「先生から具体的な学校生活の話を伺うことができ、進学後のイメージを持てた」「(インタビューでの)生徒さんの話す力や伝える力が素晴らしく、どのように中学校生活を過ごされているのかがよくわかった」など、ご満足いただけた旨の感想を数多くいただきました。

 セミナー当日や事前インタビューにご出演いただいた先生と生徒さんには、休日や放課後の時間にもかかわらず快くご協力いただき、大変感謝しております。本当にありがとうございました。

 

 以上、家庭学習研究社オンライン親子セミナー「公立中高一貫校の魅力とは?広島県立広島中学校編」のご報告でした。

 今後も、公立一貫校に限らず、各私立中高一貫校のオンラインセミナーも開催していく予定です。詳細が決まり次第告知やご報告をさせていただきますので、こちらもぜひお楽しみに!

(Butsuen)

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夏のおかあさんセミナー2022 内容報告2

火曜日, 7月 12th, 2022

 前回に引き続き、7月1日(金)に実施した「夏のおかあさんセミナー」の内容をご報告しようと思います。このセミナーに参加くださった方々は、とても積極的でノリがよく、進行を担当した筆者自身がおかあさんがたの笑顔や熱心なメモ取りの様子を拝見して元気づけられる思いをしました。

 そもそも「おかあさんセミナー」という催しの呼称は、日本では子育てに関わる事柄の80数%をおかあさんが担っておられるという調査データがあり(外国、特に西欧とはずいぶん違っています)、「負担の多いおかあさんがたを支援したい」という思いで考えたものです。「母親」ではニュアンスが固いし、「保護者」とすると趣旨にそぐいません。おとうさんがたには申し訳ないとは思いつつ、対象をおかあさんに絞らせていただいたしだいです。実は、「おとうさんセミナー」というアイデアもあります。父親だからこそ担える子育ての側面もあるのではないでしょうか。「コーヒーを飲みながら」というスタイルも面白いかもしれませんね。

 では、セミナー後半の内容をご報告します。後半は、高い知力を携えるとともに、社会で活躍できる人間になるために欠かせない資質として、「自己制御能力」と「やり抜く力」を取り上げ、これらをいかに育てるかを共に考えてみました。

 

② 行動を適切に制御できる力、最後までやり抜く力を養う

 セミナー前半では、勉強の主体性や自律性をメインに取り上げました。非認知能力の根幹となる要素です。児童期の子どもは、大人に強制されても素直に従って勉強しますから、取り組みが主体的か、受動的かによる成果の違いはすぐには表面化しません。しかし、長いスパンで見ると大きな差をもたらします。この主体性を育むための大前提が「生活習慣の自立」です。毎日の家庭生活で絶え間なく繰り返される行動と深く関わります。そこで真っ先に取り上げました。続いてセミナー後半は、人間の知的活動を支える非認知能力のなかから「行動を制御する力」と「やり抜く力」を取り上げ、その重要性について一緒に考えていただきました。これらはいま世界中で脚光を浴びています。

 

1.我慢の利く子の将来は明るい!

 困難だがより多くの収穫が得られる道と、容易に得られる代わりに収穫の少ない道とがあります。大人なら、迷わず前者を選ぶでしょう。しかし、前者には我慢が求められます。この我慢する能力は、青年期に達する16歳頃までは未熟で、子どもは目先の僅かな利益に走ってしまいがちです。学業面で成果をあげるには、できるだけ早く子どもに我慢を身につけさせることが望ましいでしょう。実際、幼児期から我慢する力をが身につきつつある子どももいます。これを裏づける有名な心理学の実験をご紹介しました。

 幼児をテーブルの前に座らせます。目の前に、マシュマロやクッキーを一つ載せた皿を置きます。実験者は子どもに「今から私が帰ってくるまで待っていてほしいんだけど、このおやつを食べたければ食べていいよ。でも、もし私が帰ってくるまで食べるのを待てたら、一つじゃなく二つあげるからね」そういって部屋を去ります。

 さて、実験の結果はどうなったでしょうか。大半の子どもはお菓子を食べてしまいました。しかし、一部の子どもは、15分間の我慢の末、お菓子を二つ手に入れました。両手をお尻に当てて手を伸ばすのを堪えたり、両手で目隠しをしてお菓子を見えなくしたり、他のことを考えて気を逸らしたりするなど、年齢なりに我慢の手段を考えて誘惑に対抗したのです。

 この実験の被験者となった子どもたちの20年後、30年後を調べたところ、食べるのを我慢できた子どもは、長じても誘惑の数々に対応することができました。その結果、総じて高学歴で、高収入を得る傾向が強く、人生での成功の確率が高いということがわかりました。

 

2.子どもに我慢を教えよう!

 この実験の結果をご紹介した後、それぞれのテーブルのメンバーごとに、我慢、自己抑制のできる子どもにするために家庭で何ができるかを話し合っていただきました。すでにしていることがあれば披露していただきました。考えやすくなるよう、一つ例をご紹介しました。

<我慢を教える例>

 小学生にはいささか高額な遊び道具を子どもが欲しがりました。そこで、「誕生日(4か月後)まで欲しいものを我慢し、僅かずつでも貯金をしよう」と提案しました。そして、「足りない分は、おかあさんが払ってあげるからね」という約束をしました。

 我慢が効く子ども、自己抑制のできる子どもは、目先の楽しさに走らず、自分にとってより有益な道を選択することができます。また、計画性や実行力がある、粘り強い取り組みができる、遊びと勉強の切り替えが上手である、決めたことをやり抜くことができるなど、取り組みの成果を決定づける極めて重要な能力が備わります。長いスパンで見ると、圧倒的な差が生まれるのは間違いありません。

 

3.望ましい行動を選択する姿勢はどうしたら身につく?

 我慢できる子ども、自己抑制のできる子どもにすることの大切さは、これで十分おわかりいただけたことでしょう。問題は、どんな働きかけをすればこのような子どもにできるかということです。

 それを考えるうえで、有効と思われるヒントが三つあります。一つ目は、「児童期までは、親の価値観が子どものモチベーションに強い影響力をもつ」ということです。もう一つは、「よい選択を子ども自身がするよう上手に仕向ける」ということです。三つめは「きっとできると信じているよ」というサインを子どもに送ることです。これらをもとに、具体的な方法をご提案しました。

① 例のように努力の大切さを常に言って聞かせましょう。そして、何につけ努力したかどうかを基準に子どもを評価してやるのです。テストの成績がよくても悪くても、努力していたらほめるのです。時間はかかりますが、努力して伸びない人間はいません。努力の価値を知ったなら、中学受験の結果よりも子どもの人生にもたらすプラス効果はずっと大きなものになるでしょう。

② 親がどちらを選ぶべきかを先に言わず、子どもに判断させましょう。同じことをするのでも、親に言われて選ぶのと、自分で選ぶのとでは気持ちに大きな違いがあります。よいことをしているとき、子どもは「これは、自分が決めたのだ」と胸を張りたい気持ちになります。その気持ちを理解し、子どものプライドを尊重すれば、前向きな取り組みを引き出せます。また、子どもは自分が信頼されていると思ったなら、親の期待が何かを受け止め、その期待に沿った選択をするものです。

③ 親は子どものすることを黙ってみていられません。しかし、安易に手を貸さず、「きっとできるよ」と子どもを励まし信じてやりましょう。ちゃんとできないのが子どもですが、挑戦する過程で様々なことを学びます。この経験が子どもを成長させます。「やる気がないのか」、「ダメなやつ」などと子どもを否定するのはNG。ちゃんとやれなかったときは、「残念だったね。どうしてうまくいかなかったんだと思う?」などとフォローしてやりましょう。子どもは「今度こそ!」と奮起するに相違ありません。

 

 すでにお伝えしたように、子どもの自発性や行動の自律性は、生得的なものではありません。しつけや家庭教育を通して、子どもに浸透させていくべきものです。親がより善い方向へと導くプロセスには苦労が伴うものの、子どもの人生を大きく変えることになります。

 その働きかけの核となるのは「ほめる」ことです。アメリカの心理学者(アンジェラ・ダックワース)は、大人になって成功や失敗をしたとき、その原因を自分の才能に結びつけるか、それとも努力に結びつけるかは、子どものころの「ほめられかた」で決まる確率が高いと述べています。能力よりも努力を見てほめる。このことの繰り返しが子どもの生きかたとして浸透し、チャレンジ精神ややり抜く力となって子どもの人生の歩みを後押しすることになります。

 以上がおかあさんセミナーのおおよその内容です。児童期までの子どもに親がどう関わるか。それによって子どもの能力や生きかた、人間性も決まります。今こそ親は悔いのない子育てに邁進すべきときです。いずれ子どもが親の元から離れる時期がやってきます。そのときに、「わが子なりにやっていけるだろう」と信じて送り出せるようになりたいものですね。

※催しの実施にあたり、換気などのコロナ対策を十分に施された会場を使用しました。また、来場者の体温を確認し、座席間の距離(写真ではわかりにくいですが)も十分にとっています。

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夏のおかあさんセミナー2022 内容報告1

木曜日, 7月 7th, 2022

 今回と次回は、7月1日(金)に実施した「夏のおかあさんセミナー」の内容をご報告しようと思います。「催しに興味はあったが、都合がつかなかった」「家を空けるのが難しいので、参加できなかった」などの理由で、会場にお越しいただけなかったかたもおありでしょう。よろしければこのブログ記事をお読みいただき、参考にしていただけたら幸いです。

 なお、会場にいてこそ得られるものもあります。たとえば、保護者同士の交流(今回は、コロナの問題があって控えめにしました)。子どもに関する悩みは、同じ立場にいる者同士で交流すると、不思議と元気が出てくるものです。また、会場での話題のなかには、活字でご紹介するのが難しい事柄もあります。それは、概しておかあさんがたに元気を吹き込むことを意図した実例に基づく話であり、会場に笑顔が広がったり場の雰囲気が盛り上がったりするのはそういう話をしている場面です。いささか実力不足の筆者ですが、来場の方々と思い(子どもへの愛情)が通じ合うこの瞬間を大切に思い、気持ちを込めてお話ししています。次回、もしご都合がつけば会場に足をお運びいただきたいですね。一緒に楽しい時間を過ごしましょう。お待ちしています。

 このセミナーは実質1時間ほどです。直前になって欲張りすぎたことに気づき、予告の段階の内容を大分減らしました。今回ご紹介するのは前半の内容ですが、非認知能力を育てるうえで大前提となる家庭教育とはどういうものかを一緒に考えていただきました。

① 主体的な行動様式を備えた子どもにする

 何をするにも自主的かつ積極的に取り組む子どもは、見ていて気持ちがよいだけでなく、やったことの成果をより多く享受できます。端的な例が勉強です。自分のこととして主体的に取り組む子どもは、受け身で取り組む子どもよりはるかに多くの収穫を得ることができます。こういった姿勢の違いは、年齢が上がるにつれ個人の行動特性として定着しますから、人生の歩みに多大な影響を及ぼすことでしょう。ある私学の廊下の掲示板で見た光景をご紹介し、この問題への対処を共に考えていただきました。

 私学の中学高校生に、今更「生活習慣の自立」もないものだと思い、先生に意図を尋ねてみました。すると、「これが万事に影響するからです」といったようなことをおっしゃいました。たとえば朝自分で起きられず、母親に起こしてもらっている生徒がいるとします。そんな生徒は寝坊して遅刻をするとそれを母親のせいにしてしまいます。そんな生徒が自立した勉強を貫き、高い次元の人生目標を達成できるでしょうか。だから、「まずは生活上のことを自立しなさい」と促しておられたというわけです。

 今日の少子化社会では、子どもは万事に甘やかされて自立が遅れがちです。この現実に照らすと、「子どもの主体性は自然と備わるものではなく、親が子育てを通して意図的に育てていくべきものだ」と言えるでしょう。大家族の時代とは環境が違うのですね。まずは自分のことを自分でやるのが当たり前になる。それが、人間としての主体性や行動力の源になるのではないでしょうか。できるなら、小学生の今のうちに基本的生活習慣を確立しておきたいものですね。

 そこで、以下のチェック項目を使って現状を振り返ってもらいました(以前も同じものをご紹介したことがあります)。

 各自チェックしていただいたあと、テーブルに同席されているおかあさんがた同士で、現状をどう受け止めておられるか、わが子にどんなアプローチをしているかを披露し合っていただきました。うまくいかない項目があるかたには、他のおかあさんからアドバイスをしていただくこともお願いしました。

 つぎにこんな話もご紹介しました。家庭学習研究社の5年部で優秀な成績をあげているお子さんのおかあさんに、「どういう勉強で、こんなによい成績をあげておられるんでしょうか。親は何かされていますか?」尋ねてみました。すると、「何もしていません。はじめは苦労したみたいですが、だんだん塾の勉強になじみ、今は家での勉強も『やるのが当たり前』と思ってやっているみたいです」という返事が返ってきました。やるのが当たり前になる。この流れも、生活習慣の自立あってこそのことではないでしょうか。

 さて、今度はおかあさんがたにクイズのような質問をしました。

行動の主体性・意欲を育てるうえで、どっちが有効?

 おかあさんがたのほとんどは、Bとお答えになりました。この結果を受け、「実は、どちらも有効で大切です」とお伝えした後、「小学生、特に低~中学年まではAのほうが有効です」と申し上げ、その理由をご説明しました。望ましいのは、本来はBのほうです。しかし、児童期前半までの子どもは、自己評価よりも親の評価を優先します。親にほめてもらいたいという気持ちのほうが、自己充足感よりもモチベーションの原動力になる年齢期なのです。親にほめられたくてがんばる経験を繰り返しながら、徐々に内面の成長とともに自分の気持ちの充足を支えにして学ぶようになるんですね。

 もう一つ大切なことがあります。成績がよければほめるというのは教育的とは言えません。以前もお伝えしましたが、成績と引き換えにほめるのでは、交換条件のようで、子どもの心に響きません。子どもは、結果に関わらずがんばりを見てほしいのです。「おかあさんは、成績さえよければご機嫌なんだ」と思わせてはなりません。がんばったのに成績が伴わず落ち込んでいるとき、親はがんばっていたことをちゃんと見てくれていて、それをほめてくれたならどうでしょう。そして一緒に悔しがってくれたならどうでしょう。子どもの気持ちは「今度こそ!」と奮い立つに相違ありません。ほめられた事柄に一貫性があり、筋が通っていれば子どもは納得します。そして、心からおかあさんを信頼し、尊敬する気持ちになることでしょう。

 なかには、「ずっと叱ってやらせてきたので、今更どうすればいいの?」と困惑するおかあさんもおられるかもしれません。そこで、「他律から自律へ」「外発から内発へ」と移行することも可能であるということをお伝えしました。ここでも、ポイントは親がほめるということです。勉強だけでなく、どんなことでも構いません。子どもに少しでも前向きな様子が感じられたら、それを取り上げてほめるのです。親に自分を認めてもらえたことがうれしくない子どもなんていません。「どういう行動を親が喜びほめてくれるのかを身をもって学んだ子どもは、少しずつそれを自分からやろうとし始めます。それをまた親は喜びほめるのです。やがて子どもの行動の自発性は内面化し、子ども自身の行動様式へと変化していくことでしょう。

 このことでもわかりますが、子どもを親が望む方向へと成長させるには、「親が何を期待しているのか」をはっきりと伝え、評価の軸を一貫させ、辛抱強く子どもを見守り、ほめるべきときにしっかりとほめることが必要です。大変忍耐の要ることですが、それが子どもの人間形成に強い影響を及ぼすのですから、今親ががんばらないでいつがんばるのかと言ってよいほど重要な局面にいることを思い起こすべきでしょう。

 筆者は多くのことを一気にしゃべる人間ですので、お話ししたことの全てはとてもご報告できません。とりあえず、前半の内容をかいつまんで書いてみました。近日中に後半を書こうと思います。よろしければ目を通してください。なお、セミナーに参加いただいたおかあさんがたには、当日の内容を思い出すためにお読みくださったらうれしいです。

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夏のおかあさんセミナー、盛況でした!

金曜日, 7月 1st, 2022

 本日、夏のおかあさんセミナーを実施し、盛況のうちに終了することができました。参加者のみなさま、ほんとうにありがとうございました。催しの最中に、何度か同じテーブルを囲んだおかあさん同士で、テーマに沿った話を自由にしていただく趣向を採り入れましたが、たちまち部屋中におかあさんがたの声が元気よく響き渡りました。「みんな、同じように苦労されているんだな」と実感されたかたが多かったようです。また、「お話が具体的でわかり易かった」という反応を数多くいただき、企画実施者として報われた気持ちにもなりました。ありがとうございました。

 なお、申し込みを受け付けて僅か2~3日のうちの定員に達したため、参加いただけなかったかたもおられたようです。申し訳ありませんでした。そこで、お詫びに本日お話しした内容の初めの部分をご紹介することにしました。

 このセミナーの企画は筆者が担当しました。また、会場での進行役もいたしました。以下は、弊社の後継スタッフのために筆者が何をお伝えするつもりかを書き留めていたものです。実際とあまり違わないと思いますので、よろしければ目を通してみていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。なお、この催しではビジネスに関わる話は一切しませんでした。ただただ「おかあさんがたを支援したい」という思いで行った催しだからです。

 国立遺伝研究所の所長の著書に、「文明から取り残されたアフリカの奥地で生まれた人のなかにも、ノーベル賞級の才能を秘めた人はいる。しかし、ほぼ100パセントの人はその才能に気づかないまま人生を終えている」というくだりがありました。これが意味するのはどういうことでしょうか。才能が芽吹いて育つには、それを可能にする環境や刺激が欠かせないということです。

 かつて、人間の能力は遺伝で決まるのか環境で決まるのかという論争がありましたが、現在では両者の相互作用で決まるという考えが主流です。遺伝について言えば、特別な専門領域の才能を除けば、誰でも高等教育に順応して社会で活躍できる潜在能力をもっています。ですから、「いかにして能力開花の流れを築ける環境を整えるか」が非常に重要なカギを握っているのではないでしょうか。

 日本という国はその点で恵まれています。誰でも優れた高等教育を受けるチャンスがあります。問題は、そこへ至る流れを誤らないことです。そのためにぜひとも重要視していただきたいのが家庭教育です。家庭教育で育まれるもののなかに、能力開花に必須の要素がたくさんあるからです。

学力の裾野に何があるか

 学力の話をすると、「何をどう勉強したら力がつくのか」ということにのみ目が向きがちです。しかし、その前に目を向けるべきものがあります。たとえば、学習成果を左右する目に見えない知力(非認知能力)です。非認知能力のほとんどは、主として児童期までに形成されます。そのことを踏まえるなら、この目に見えない知力の成長を引き出しながら受験勉強を進めていくことが、大変重要になってきます。非認知能力を磨けば、自ずと学習の成果も高まります。さらには、中学進学後の学習の発展への備えをしていくことにもなるでしょう。

 上図を見てください。テストで測れる学力は、本来は非認知能力と呼ばれる要素と連動させながら培っていくべきものです。したがって、家庭教育の関与が不可欠と言えるでしょう。いっぽう、大人の強制や覚え込み、訓練型の指導でもテストでの得点力をあげることができます。こちらは家庭教育の関与は必須でないうえ、手っ取り早くて即効性があるため、この方法を採る人がたくさんいます。しかし、そのやりかたで得た学力は中学、高校、大学へと進むほどに剥がれ落ちてしまいます。

 子どもの将来まで見通したなら、家庭教育と受験対策を切り離す方法はあり得ないのではないでしょうか。毎日の家庭での親の関わりや生活、学びを通して非認知能力を磨き、自らの行動を自ら適切に律する姿勢を身につけ、それを学習活動に反映させるべきです。一見学力と無関係に思える非認知能力ですが、これらの力なくして高度な学問を修めることはできないし、実社会で活躍できる人間にはなれません。

 受験勉強が佳境に入る前に、親が施すべき家庭教育とはどのようなものかを考え、一貫してそれを実践していく必要があります。

 

 以上のようなお話をしたうえで、この催しの具体的な内容に入りました。次週、可能な範囲でそれをご紹介しようと思います。よろしければお読みください。

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