夏の講座をどう生かす? 保護者にお願いする視点
日曜日, 7月 24th, 2022
2022年度の夏の講座が、7月21日の「6年部 中学受験夏期講習」を皮切りに始まりました。引き続き、23日(土)には、「4年部・5年部 夏期講座」が開講しています。低学年部門の夏の講座も、25日(月)に3年部、26日(火)に2年部、27日(水)に1年部が開講となります。
通常の講座は、学校への通学と併行して行われるダブルスクールの形態をとっているため、元気盛りの子どもたちとは言え、肉体的な負担は少なくありません。しかし、夏休み期間は学校への通学がないため、塾での勉強に集中しやすい状況にあります。家庭で塾の勉強の予習(5・6年)や復習(4~6年)に取り組むにあたっても、通常講座の時期よりも時間や気持ちに余裕をもつことができます。したがって、夏休みは中学受験対策の勉強を始めるにあたっても、また、中学受験対策の勉強を軌道に乗せるうえでも、大変ふさわしい時期の一つです。このタイミングをうまく生かせば、学業面での飛躍が大いに期待できるでしょう。
ただし、長期休暇には独特の開放感があります。また夏休みは年間で最も蒸し暑い時期です。そのために生活習慣が乱れたり、勉学に取り組む姿勢が崩れたりするケースもあります。それに加えて、いまだに沈静化しない新型コロナウィルスの感染問題もあります。保護者におかれては、健康管理と生活の規則性維持に向けて、十分に注意を払っていただきたいと存じます。この夏をどう過ごすかで、夏休み明けのお子さんは全く違った状態になる可能性があります。小学生は短期間で随分変わります。言い換えるなら、夏休みは先々の展望を明るいものにするビッグチャンスです。子どもの成長を引き出しましょう!
なお、夏休みの学習に直接関わる事柄に関しては、校舎長および教科の指導担当者が責任をもってサポートいたします。筆者は家庭でお子さんを見守っておられる保護者に向けたフォローをするのが主な役割であり、それゆえ勉強に直接関わるお話はいたしませんのでご了承ください。
今回は、夏の講座がスタートしたばかりですので、夏休み期間中に保護者の方々にお願いしたい、ご提案したいサポートに関する話題を取り上げてみました。具体的には、長い休暇でこれまで築いた学びの習慣や姿勢を維持するとともに、より学習成果が得られる状況を築くために、家庭でどういった点に配慮し、何をしたらよいかについてお伝えしようと思います。それは小学生のお子さんをおもちのご家庭にとって、実にシンプルかつ当たり前のことです。
毎日の生活で絶えず繰り返されていることは、子どもの人間形成に多大な影響を及ぼすものです。朝の起床や夜の就寝などの基本的生活習慣や、遊びと勉強の切り替え(自己制御・自己管理)などがそれにあたるでしょう。これらは、能力として数値化できませんが、テスト学力を規定する重要要素として大変重要な役割を果たします。成績という「目に見える学力」を支える、「目に見えない学力」の要素です。これらは「非認知能力」と呼ばれ、近年世界中の学者や教育関係者に注目されています。
たとえば、朝自分で起床することは、人間としての自立の根幹に関わる部分であり、これすら自立していない子どもが、次元の高い学問領域で成果をあげる人間になること、まして社会のリーダーとして活躍できる人間になることなど到底期待できないでしょう。そこで、基本的生活習慣の自立を、この夏の目標にすることをご提案します。実際のところ、大がかりな調査によると、小1から小6までの6年間に、大概の子どもが朝の起床を自分でやれるようになっているかというと、半数以上の子どもは高学年になっても自分で起きられない、もしくは、自分で起きたり親に起こしてもらったりをくり返している状態に留まります。この様相を変えるだけで、子どもは随分変わるのは疑いありません。
もう一つ、「遊びと勉強の切り替え」ですが、中学受験生家庭の大部分がこの問題で悩んでおられます。テレビを観たり、ゲームをしたりした後、勉強の時間が来ているのに気づいても「もうちょっと」「あと少しだけ」と、なかなか重い腰がもち上がりません。たまりかねたおかあさんが、「いい加減にしなさい!」と大きな声を出して叱り、やっとしぶしぶ机に着くような有様の子どもが少なくありません。これでは勉強への切り替えがままならず、ダラダラと非効率的な取り組みをくり返すことになりがちです。これらは理屈に基づく行動ではありません。朝の起床にしろ、遊びから勉強への切り替えにしろ、「そうするのが当たり前」の状態になるまでの習慣づけが勝負です。そして一旦その域に達したなら、親の心配や苦労は一気に減ります。
ここで、「じゃ、どうしたらやるのが当たり前になるの?」と困惑される保護者もおありかもしれません。それについては、前々回のブログ(おかあさんセミナー 実施報告2)で三つほどご提案していますので、よろしければそれを参考にしてください。基本として胸に留めていただきたいのは、「子どもの前向きさを目覚めさせる扱いや接しかたを心がけること」です。親はわが子が期待通りにしてくれないと腹を立て、我知らず子どもをコントロールしようとしがちです。それが子どもの反発を招きます。子どもも、自分が悪いのはわかっています。ですから子どものプライドを挫くのではなく、「本来はどうすべきか」を考えるゆとりを与え、子どもの「自分からそうしよう」という気持ちと行動を引き出すのです。愛情に基づく高等戦術を考えましょう。
何につけそうですが、好循環の連鎖を引き出すには、大変な苦労や忍耐が伴います。ですが、壁を乗り越えて「自然と体が動くレベル」まで習慣化できたなら、状態は一変します。今はまだお子さんは親を頼りに生きています。そのときこそ、親の愛情や期待を発信し続け、「やれるよ」「やってごらん」と辛抱強く励ましてやりたいものです。そして、少しでも進歩が見られたら喜んでやりましょう。
その際に重要なのは、日々のお子さんの生活を注意深く観察し、進歩の芽が出かけているタイミングを決して見逃さないことです。親に認められることほど、うれしいことはありません。しかも、具体的に行動を指摘されると、「おかあさんは見ていてくれたんだ!」と喜びも倍加しようというものです。結果で評価されるより、努力の様子をほめられるほうが、子どもの心に及ぼす影響ははるかに大きいものです。当面、成績は二の次でよいのです。前述したように、一旦行動の自律や自発性を獲得したなら、子どもはすばらしい勢いで成長を遂げていきます。
この夏休みを、子どもの成長に向けた大いなる転換点にしようではありませんか!