子ども時代に浸透させておきたい考えかた

11月 6th, 2022

 前回は、「秋のおかあさんセミナー」の予告記事を掲載しました。毎年夏休み前に「夏のおかあさんセミナー」という催しを実施していますが、「秋の」と冠した保護者対象のセミナーは初めての実施です。これは、お子さんの知育に関する重要事項は1回きりの催しで到底網羅できるものではないため、可能であれば別の時期にもやってみようと考えたしだいです。無料ですが、わざわざ足を運んでいただくのですから、参加者に手応えを感じていただける催しにしたいと思っています。筆者は児童期の学習と子育ては連動すべきものだと考えています。学力形成と人間的成長をどうバランスさせるべきか。このことに興味をおもちの保護者はぜひご参加ください。

 さて、今回は児童期がものの考えかたや価値観の定まる時期であることを踏まえ、親がわが子にどのような視点に基づいて関わるべきかをお伝えしようと思います。弊社の教室に通って勉強している子どもたちは、ほぼ全員が中学受験をめざしています。つまり弊社はいわゆる「進学塾」の看板を掲げる学習塾ですが、この種の学習塾では必ず定期的にテストを実施します。学力の現状を把握するとともに、一定の範囲で学んだ事柄がどの程度身についたかを検証する必要があるからです。

 当然ながらテスト後に「成績」が提示されます。子どもの現在地を把握するための「順位」も知らされます。100点満点での得点のみが指標なら、全員が高得点を挙げていればもれなくハッピーになれますが、これでは合格への見通しは得られません。そこで相対的評価基準が必要になります。順位はそのためにお知らせする資料です。ただし、100人テストを受けたら1番から100番まで存在します。したがって、励みにもなればショックを受けることにもなります。弊社では2週間に1回の割合でテストが行われるので、その度に喜んだりがっかりしたりするお子さんもおられることでしょう。

 もしもあなたのお子さんが、思わぬ悪い点数や順位を取ってきたら、どのように対応されるでしょうか。現に、そういう経験を何度もされている保護者もおられるでしょう。成績や順位を突きつけられる経験は、中学受験後も数多く繰り返されます。よくないテスト結果をどう受け止めるかは、子どもたちの人生の歩みにも少なからぬ影響を及ぼしますから、大人が十分に配慮する必要があるでしょう。

 では、「自分が招いた結果」について、子どもの頃に浸透させておきたい考えかたとはどういうものでしょうか。よくない結果が続くと、大概の人間は「自分には能力がない」という悲観論者になりがちです。それは果たして妥当な考えかたでしょうか。問題は、やるべきことを準備していなかったからかもしれません。たとえばテストに出される問題は、きちんとした手順を踏んで学んでいればクリアできる水準のものです(すべての問題は無理としても)。重要なのは、テストに臨むまでのプロセスを振り返ることではないでしょうか。つねに最善を尽くすことではないでしょうか。心理学者による多くの実験で、「人間は手応えを得られないことが続くと、学習性無力観に陥る」という結論が導き出されています。しかし、そういう流れに抗い、自分を立て直す強さをもつべきでしょう。実際にそれを実践して、人生の目標を達成した人は多数います。

 アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワースは、自分にとってよくない状況を「どうにもならない」という固定思考でとらえると悪循環に陥ってしまうが、「いずれ何とかなるさ」という成長思考でととらえると、新しい試練が訪れても臆せずに立ち向かえるようになるため、更なる強さが培われると述べています。

 それを裏づける根拠があります。脳の発達に関する研究で、ミドルティーンやハイティーンの年齢の子どもでも、知能のスコアが向上することが確認されています。たとえば、数学の学力が伸びた生徒は、脳の中でも数学に関連する領域が強化されており、英語の学力が伸びた生徒は、言語に関する脳の領域が強化されていたと言います。また、新しい課題を克服しようとがんばっていると、脳はそれに応じて変化することも確認されています。さらに、脳は完全に「固定」してしまうことは一瞬もなく、生きている限り、神経細胞は互いに新しい結合を増やし、既存の結合を強化する能力をもっていると言います。つまり、人間の脳は常に進歩発展する可能性をもっているのです。こうした所与の能力を信じ、「やればいずれ何とかなる」という前向きで建設的な考えを子どもに授けてやりたいものですね。

 親は子どもが散々なテスト成績をもらったとき、つい「これはいったいどういうことなの!?」と怒鳴ったり問い詰めたりしたくなるものです。しかし、それが続くと子どもは意欲を根底から失ってしまったり、「自分はダメな人間だ」と自己卑下をしたりする人間になりかねません。「あれ?今回はやらかしてしまったね。うーん、残念だね。どうしてこうなったんだと思う?」などとフォローしたならどうでしょう。子どもはそんな親の対応に落ち着きを取り戻し、自分なりの振り返りをする心理的余裕をもつことができるでしょう。また、「つぎはがんばるからね!」と奮起するかもしれません。

 親は「きっとできる」という信念をもち、どんなときにもわが子の立ち直りを信じて励ましてやりましょう。いきなり変わることはできなくても、少しずつ向上することは間違いありません。そんな親のもとにいる子どもは幸せではないでしょうか。どんなときにも自分の味方であり、自分を信じている人がいる。しかもそれが自分の親なのですから!

 何度もお伝えした記憶がありますが、児童期は人生の原風景を築く時期です。「悲観論者になるか、楽観論者になるか」、「すぐにあきらめる人間になるか、粘り強く最後までやり遂げようとする人間になるか」も、児童期までの親子の関係性が少なからず影響するでしょう。親と一緒の時間は、他の誰と一緒にいる時間よりも長いのですから。逆境にへこたれない、強い人間にわが子を育てたいものですね。

 7月1日に実施した「夏のおかあさんセミナー」の結びとして、前出の心理学者の「大人になって成功や失敗をしたとき、その原因を自分の才能に結びつけるか、それとも努力に結びつけるかは、子どもの頃の『ほめられかた』で決まる確率が高い」という言葉を紹介しました。どうほめるかは、わが子の人間形成にとって少なからぬ影響を及ぼします。「秋のおかあさんセミナー」はそのことをテーマに掲げました。

 失敗を能力のせいにせず、自分の努力に帰する人間になることが、当面の中学入試突破につながるだけでなく、前向きな人生を送れる人間になるための重要なポイントでもあります。わが子が自分の可能性を信じる努力の人となるよう、ほめかたについて一緒に研究してまいりましょう。

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