子どもの成長を促す環境や条件ってどんなの?

2023 年 7 月 13 日

 久々に少し時間がとれましたのでブログを書いてみようと思います。話題は二つで、一つは催しの実施報告、もう一つは内面の成長著しい児童期後半の時期の読書の重要性についてです。そして、二つの話題について書いた後に気づいたこともお伝えしてみようと思います。

 

 ① 広島学院の先生をゲストにお招きしてのイベント 《実施報告》

 6月23日(金)と30日(金)には、広島学院の校長先生や広報の先生をお招きして、「今こそ、未来的視点に立った受験を!」というタイトルのイベントを開催しました。

 この催しは、中学受験の状況の変化を踏まえ、これまでの中学受験のありかたを見直す必要があるのではないかということをお伝えするとともに、どのような受験が中高一貫校での望ましい成長につながるかを、保護者の方々とともに考えてみようという趣旨で開催したものです。

 この趣旨に叶った指針を得るには、当該の学校の先生からお話を聞くのがいちばんです。どうせなら、最難関私学の先生をお招きし、そこで伸び伸びと成長を遂げているのはどんな生徒かをお話しいただくとおもしろいのではないか考えました。また、せっかく入試を突破したのに、入学後学校環境に適応できない生徒がいるようです。その原因はどこにあるのかについても率直なところを語っていただいたなら、これも大いに参考になるでしょう。

 保護者が内心知りたいものの、正面切って聞けない事柄は数多くあります。そういう話題を取り上げ、お答えいただく形式で催しを進めていきました。難関私学でうまくいっている生徒と、うまくいかない生徒の決定的な違いはどこにあり、その違いはどのようにして生まれるのか。それがわかれば、これからの受験生活に生かすことができるでしょう。

 少子化が進む今日、大概の家庭は子どもが一人か二人です。子育てにも配慮が行き届く代わりに過保護の問題も生じがちです。おまけに保護者の学歴水準は昔より上がっており、勉強に過度に関わっておられるケースもあるようです。受験生活の途中までは親のサポートも必要ですが、どこかで手を放す必要があります。また、すべて塾任せの勉強で受験を乗り切り方法も子どもに同様の問題をもたらす危険性があります。いずれの場合も問題にすべきは、子どもの学びの姿勢に芯が入らないことです。これではカリキュラム消化が速く競争の厳しい私立一貫校の環境には適応できません。

 いっぽう、「1年間でどれだけやれるかがんばってみなさい」と親に言われ、6年生から塾通いを始めたお子さんが、広島学院に受かるケースを筆者は何度も見てきました。また、友達に誘われて塾に通い始めたら、一気に勉強に目覚め、難関校に合格したお子さんを数多く見てきました。これらの例を前述の問題と比較対照することで、重要なことが見えてくるのではないでしょうか。

 今日の社会で求められているのは、自分で物事を適切に判断し、取るべき行動を柔軟に修正していける人間です。たとえば、集団が問題に突き当たったときにはリーダーシップを発揮したり、自分だけでは解決できない状況に至ったときには他者のサポートを要請したりするなど、状況に応じた行動を迅速にできる人間が求められています。こうした人間を数多く輩出している一流の一貫校の先生に、上記のような事例をお伝えし、保護者の方々と共に見解を伺ってみたいという気持ちもありました。

 先生がたは筆者からの不躾な質問に対し、一つひとつ丁寧かつ誠実にお答えくださいました。機知に富んだ臨機応変な返答に、会場から笑顔で反応される保護者が多数おられました。その内容については、ここでご報告しませんが、保護者のほとんどは先生がたから発せられた言葉を通じて、「自立」や「自律的姿勢」という観点から子育てや受験生活を見直すことの必要性を感じ取られたようでした。それが土台にあってこそ、一流の教育環境での一層の成長が見込めるのですね。機会があれば女子私学の先生もお招きし、同趣旨の催しをやってみようと思っています。なお、二会場ともに多数の保護者の参加をいただきました。ありがとうございました。

 

 ② 忙しい中学受験生時代にこそ読書を!

 ある本を読んでいたら、「ほんとうの読書家は、いくらでも読書のできる恵まれた環境で暮らしていない。むしろ、読書などろくにできないような環境にいる人が多い。ハンディを乗り越え、読書欲を満足させるべく、わずかな時間をつくってはむさぼるように本を読んでいるんです。そういう人のなかに、すばらしい知識や教養を収めている人が多いんです」といったような記述がありました。

 これは頷ける話です。かつて筆者は息子にせがまれたわけでもないのに、たくさんの児童書を買い込み、リビングの書棚を飾ったのですが、それらの本の大半は息子の興味を引くことなく処分されてしまいました。いくらでも本を読んで構わない。いくらでも読むべき本がある。こんな環境は却ってよくないのかもしれませんね。

 いっぽう、ある有名な同時通訳者は、親の仕事で東ヨーロッパに赴き、そこで小・中学生時代を過ごしたそうですが、日本から親がもち込んだ文学全集を片っ端から読みまくり、飽くことなく読み返したために表紙が擦り切れるほどになったそうです。それでも「もったいない」と思い、帰国の際には後輩のためにそれらの本を譲ってあげたそうです。同時通訳者は、世の中のありとあらゆる分野の専門用語を短時間で学び、重要な会議で失敗や立ち往生などが許されない状況で外国語と日本語の橋渡しをする必要があります。大変な知識量や語学力、瞬時の判断力が求められる仕事ですが、ハンディの多い環境での読書が優れた同時通訳者に成長するうえで大いに寄与したのは疑いありません。

 これは、大の読書好きな弊社に通う女の子の話です。6年生になると勉強も大変になりますから、おかあさんに「好きな読書もままなりませんね」と申し上げたら、「とんでもない。暇さえあれば、わずかな時間でも読んでいます」とおっしゃいました。本を読むことなしに受験生活が成り立たないほどの本好きだったようです。それでいて、常にトップランクの成績を維持し、見事第一志望校に合格されました。とかく、「受験生なんだからしばらく読書は我慢しなさい」と親は言いたくなりますが、この女の子の場合、読書が生活の中心にあり、受験生活はそれをベースに成り立っていたのでしょう。

 読書はその人の人となりを築いてくれる貴重な存在の一つです。まして、児童期の中~後半は、語彙が飛躍的に増え、思考力が身についていく時期です。どんな本とどれだけ出合うかは、その人の知的能力や人格形成にも多大な影響を及ぼすことでしょう。息抜きの時間を利用して読書に勤しむこともお勧めしたいですね。

 

 以上のことを書いてから思ったことがあります。それはつぎのようなことです。

1.人間は至れり尽くせりの環境では大成しにくい。

2.時間や環境的な制約が、集中力や実行力を高めることがある。

3.受験をチャレンジの場ととらえ、伸び伸びと勉強させたほうが子どもの成長につながる。

4.大人がよかれと思ってしたことが、子どもにとってプレッシャーになることがある。

 どうでしょうか。中学受験は子どもの成長を引き出してこそのもの。中高一貫校への進学は、将来の展望と密接につながっています。そのことを起点に置いたなら、受験勉強のあるべき姿もおのずと見えてくるのではないでしょうか。

    

 

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カテゴリー: 家庭学習研究社の特徴, 行事レポート

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