2019 年 5 月 20 日 のアーカイブ

受験生活開始にあたってめざすべきもの

2019 年 5 月 20 日 月曜日

 ゴールデンウィークが明けたのも束の間、いつのまにか5月も余すところあと三分の一ほどになりました。朝夕は涼しいものの、日中の暑さは夏の訪れが近いことを感じさせるこの頃です。

 毎年6月になると弊社では夏の講座の募集が始まります。この夏の講座への参加から、お子さんが中学受験対策の勉強を始めるご家庭も多数おありだろうと思います。そこで今回と次回は、塾通いを始めてから受験勉強が軌道に乗るまで、親はどのような視点からわが子を見守ったらよいかについて、弊社の考えをお伝えしようと思います。参考にしていただければ幸いです。

 突然ですが、おたくのお子さんは勉強が大好きでしょうか。これはいささか愚問かもしれません。というのも、「勉強が好きでたまらない」という子どもは、ほとんど見当たらないからです。むしろ、親に毎日のように「勉強しなさい」と言われて辟易している子どものほうが圧倒的に多いことでしょう。

 また、昭和の時代までは「勉強すれば豊かな生活が送れる」ということが勉強のモチベーションになりましたが、贅沢な遊びや食に恵まれた生活を送っている今日の子どもは、勉強すること自体に価値を見いだすことが難しくなっています。「勉強しなさい」と言うと、「なんで?」と切り返してくる子どもも少なくありません(貧しい国の子どもは、勉強したくてもさせてもらえないというのに)。

 しかしながら、子どもは親に命じられてする勉強は嫌いでも、新規な知識を得ることや、不思議を解決することは本来大好きです。そういう子どもの特性を踏まえ、勉強の面白さや、問題を解決したときの喜びを味わう経験を通して、少しずつ一人前の受験生に成長していく流れを築くことが肝要だと思います。というのも、勉強とは到達点が永遠に見えない奥深いものです。そのもつ魅力に気づき、一生学び続ける人間に成長することこそ、中学受験によって得られる一番の収穫だと思うからです。

 日本では長い間「学歴社会」が続いていましたが、今日では様変わりし、学歴に見合う本物の知性を携えていない人間は評価されなくなっています。せっかく苦労して難関校に受かっても、受かることだけを目当てにした勉強をした者は、厳しい社会で生き残る術をもち得ません。このような時代において問われるのは、「学問を修めることが、本物の学力や知性を携えた人間への成長につながるかどうか」です。受験や進学もこの原則を見失ってしまうと、本末転倒の事態を招きかねません。

 以上を踏まえ、この夏から中学受験をめざした勉強をスタートされるご家庭におかれては、「どのような受験勉強で中学入試を乗り越えるべきか」という視点をしっかりと定めたうえで、お子さんを弊社の教室に送り出していただくようお願いするしだいです。

 さきほど、「おたくのお子さんは勉強が大好きでしょうか」という問いかけをしました。それは、勉強の成果をあげるうえで最も大切な要素がそこにあるからです。ご存知かと思いますが、勉強の動機づけ(モチベーション)として最も大きなものは、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」です。まずは両者の特徴を簡単に見てみましょう。

 これをご覧になると、内発的動機づけと外発的な動機づけとは対照的な関係にあることがわかります。単純に言えば、「自律」と「他律」という違いでしょうか。自らの知的欲求や好奇心に突き動かされて勉強に取り組むのと、他からの働きかけや圧力で勉強に取り組むのとでは、結果にどのような違いがもたらされるのでしょうか。

 その最たるものは、上表の「付随するもの」の欄に見て取れるでしょう。本物の知性や創造性を養えるのは、明らかに「内発的動機づけ」にもとづく勉強です。今日の高度化された社会において有意な活動を可能にするのは、「内発的動機づけ」に基づく学習だと言えるでしょう。

 中学受験専門塾として50年余りの歴史をもつ弊社ですが、昭和42年創設以来一貫して私たちは「子どもの望ましい成長に資する学習塾であれ」を旗印に、子どもの「学びの自立」を支援し、子どもが主役の勉強によって「合格」の夢を叶えることをめざして活動してまいりました。すなわち、弊社は「内発的動機づけ」を背景とした学びを支援する学習塾であると自任しています。このような方針を掲げたのは、「成長途上の子どもの受験は、将来の大成につながるものでなければならない」と、設立当初から経営者が考えていたからです。

 さて、「内発的動機づけに基づく学習を実践し、それによって受験合格をめざします」と、言葉ではお伝えしても、今一つピンとこないかたもおられると思います。前述のように、「勉強が好きでたまらない」という子どもはそういるものではありませんし、そればかりか「勉強しなさい」という大人の言葉にうんざりしている子どものほうが圧倒的に多いのですから。そういう子どもが自ら学ぶ学習者に育ち、さらには難関と言われる中高一貫校への合格の夢を実現するには、どうしたらよいのでしょう。

 心配には及びません。子どもは元来好奇心の塊です。ものを知ることや新たな発見をすることが大好きなのです。この子どもの本質を踏まえ、上手に導いてやればよいのです。無論、弊社の教室に通ったなら、すぐに子どもの勉強ぶりが変わるわけではありません。ですが、教室での指導と家庭勉強を繰り返すプロセスにおいて、勉強の面白さや醍醐味に触れる体験をさせていけば、自ら積極的に学ぶ姿勢を育てることはできるのです。

 また、先ほどの表によると、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」は水と油のような関係のように見えますが、実はそうではありません。多くの場合、子どもの受験勉強は親の勧め(外発)によって始まるものですが、いくつかの段階を経て、子ども自身のもの(内発)へと変わっていくのです。

 次回は、このことについてもう少し詳しくお伝えしようと思います。塾への通学開始から、すっかり受験生らしくなるまでのステップを概観するうえで、参考にしていただけると思います。よろしくお願いいたします。

※動機づけに関する表は、「CLEVERLANS」(ルーシー・クレハン著)より引用しました。

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カテゴリー: アドバイス, 勉強について, 子どもの発達