2019 年 12 月 のアーカイブ

何事も“親しだい”なのは児童期まで

2019 年 12 月 27 日 金曜日

 今回の記事は、2019年の最終回です。このブログは2009年の秋ごろ始めましたので、およそ12年継続してきたことになりますが、累計のビュー数は190万件を超えました。

 ブログを始めた当初は、10年以上も続けるとは思ってもいませんでした。続けられたのは、多くのかたがお読みくださり、それを励みにできたからに他なりません(ビュー数にこだわらないようにしましたが、気にはなりますね)。ほんとうにありがとうございました。

 振り返ってみると、広報担当者として昭和の時代に入社して以来、長く鉛筆で原稿を書く仕事環境が続いた後、パソコンの進化や普及が急速に進み、いつの間にかデジタル原稿が当たり前のようになっていきました。アナログ人間の筆者もやむなくパソコン操作を覚え、フロッピーで原稿を出稿する段階を経て、インターネットを介した出稿や連絡、情報のやりとりへと変わっていきました。20~30年前には想像もしていなかった大きな変化でした。その間、様々な業種の企業がHPをもつようになり、情報発信の場として活用する時代がやってきました。

 そんななか、10数年前ごろからでしょうか。ブログが情報発信ツールとして注目を集めるようになり、「対面式の催しでは保護者との接点が限られる。また、冊子も読んでくださるかたの数はそう多くない。じゃ、今はやりのブログとやらを始めてみようか」と思い立って気楽に始めたのが本ブログです(ブログというより、コラムのような性格を強く帯びていますが)。まさかこんなに長く続き、7百数十編に及ぶ記事を書く(そのうち、20~30編は若手社員に勉強を兼ねて寄稿してもらいましたが…)なんて、そして何よりもこのように多くの方々にお読みいただくとは夢にも思いませんでした。

 令和元年が間もなく終わろうとしていますが、来年もより多くの保護者のみなさまに参考にしていただける記事を書くようがんばる所存ですので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 先日、現中1生の生徒さんの保護者(おかあさん)とお話しする機会がありました。「入試直前の正月には、近所に住んでいる家庭学の友達と一緒に『正月特訓をするんだ』と言って、一生懸命勉強したんですよ。あのときは親も必死で応援しました。月日が経つのはほんとうに早いですね」と、入試直前の様子を感慨深そうに語ってくださいました。

 お子さんは二人とも見事第一志望校に合格されたそうですが、今受験を目の前にしておられるご家庭においても、同じようにお子さんは希望と不安とがないまぜになった状態で勉強に精を出しておられることでしょう。保護者におかれてはわが子の努力が実ることを信じ、最後までしっかりとサポートをしてあげてください。特に今からは、勉強面では「何を最優先するか」を絞り込み、勉強が空回りしないようにすることが大切です。また、それ以上に大切なのは、メンタル面のサポートや体調の維持管理です。中学受験においては、こうした親のバックアップが欠かせません。何しろ受験生はまだ小学生の子どもなのですから。もうしばらくは気の抜けない日々か続きますが、お子さんの、そしてご家庭の願いが叶うよう、悔いの残らぬ応援をよろしくお願い申し上げます。

 毎年入試シーズンを迎え、受験生家庭の悲喜こもごもの入試結果を目の当たりにするにつけ、筆者が思いを致すのは「親というもののありがたさ」です。どんなときにも無条件に愛情を注いでくれ、うまくやれたときもやれなかったときもすべてを受け入れてくれる存在。それは親以外にありません。受験生活には紆余曲折がつきものですが、見守り応援する親の厳しい言葉も優しい言葉も、すべてわが子を思うが故のこと。子どもたちが困難に負けず受験生活を乗り切れるのは、おとうさんおかあさんの無償の愛に基づく見守りと応援あればこそなんですね。

 中学入試を終えると、間もなく子どもたちは思春期を迎えます。この成長の大きな節目は親子関係に劇的な変化をもたらします。そう、親の言うことをことごとく否定するかのような態度を取り始めるのです(ご存知のように、このことは子どもの自立にとって欠かせないもので、親離れは正常な成長の証しでもあります。もちろん、親にとっては子離れのタイミングです)。これから受験生活を始めるご家庭、再来年以降に受験を控えておられるご家庭におかれては、「中学受験は、そうしたわが子の大きな変化の直前にあるものなのだ」ということを念頭に置き、親として何をしてやるべきかを間違えないようサポートしてあげていただきたいですね。

 どういうことかというと、思春期が訪れると親の影響力は一気に後退してしまいます。ですから、中学受験の助走期は親がわが子に絶大な影響力を発揮できる最後のチャンスなのだといっても過言ではありません。受験生活を乗り切るプロセスで、親は何を期待し、どうフォローするか。このことは子どもの人間形成に多大な影響をもたらします。

 そこで筆者から保護者の方々にご提案したいのは、「受験までのプロセスで、わが子のどんな成長を引き出すか」という視点から、親としての見守りや応援のスタンスを定め直してみるということです。親が一定の方針の下でわが子の見守りや応援をし、常に揺るがぬ態度で接すれば、それは間違いなくお子さんに一定の価値観を授けることになるでしょう。勉強や生活において、わが子にどんな成長を望みますか? そのことに基づいて、ご家庭ごとに親の方針を絞り込んでみてはいかがでしょうか。

 ある年、こんなおとうさんがおられました。第一志望校の入試での付き添いを終えたその足で、筆者を訪ねて来られました。そして、こんなことをおっしゃいました。「先生にいろいろアドバイスをいただき、親として考えたことを息子に伝え励ましてきましたが、もう今の時点で十分満足のいく成長をしてくれたと思います。だから、入試の結果を見るまでもなく、受験をさせたことの成果は得ています。それで、受験を終えた今日のうちに一言お礼を申し上げようと思いまして」――このおとうさんの立派な挨拶に、筆者はただただ恐縮したことを思い出します。

 ちなみに、息子さんは第一志望校に合格されました。この第一志望校よりも難関の中学校に受かっておられましたが、意思は変わらず第一志望だった私学に入学されました。なんでも、その私学だからこそ経験できることがあるからだそうです。おとうさんも凄いけれども、息子さんのしっかりした考えにも感心しました。「こういうお子さんなら、おとうさんおかあさんの期待する(いや、期待以上の?)立派な人生を歩めることだろう」と、つくづく思ったしだいです。

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カテゴリー: ごあいさつ, アドバイス, 中学受験

これからの時代の中学受験のありかた その2

2019 年 12 月 20 日 金曜日

 前回は、「子どもの望ましい成長に資する学習指導を実践する」という、弊社の指導の根本理念をお伝えしたところで終わりました。

 「子どもの望ましい成長」というと、漠としたイメージしか湧かず、いささか具体性を欠いているかもしれません。健全な知的発達を促しながら受験対策が実現できるようサポートすることを意味しますが、弊社の内部では、「新たな知識を得ることに喜びを感じ、自ら学ぼうとする姿勢を携えた子どもたちを育成する」という表現をよく用いています。それが将来自分のなりたい職業に就き、有意義な人生を歩むうえでとても大きな作用を果たすと考えるからです。

 上記の方針は、「自学自習」という言葉で括ってもよいでしょう。自学自習をなぜ重んじるかというと、「中学高校での6年間の学習生活を充実させるためには何が必要か」を思い浮かべていただくとわかり易いと思います。中学生になると、一人前の人間として扱われますから、何事も自分で考え、自分で判断し、自分で行動することが求められます。大人に依存した勉強で受かってもあとで苦労することになりがちです。中学校入学後に、突然自立した勉強ができるようになるということは期待できません。

 また、中学高校課程を終えた後には大学受験があります。大学への受験にあたっては学部や学科(専攻)を絞り込まねばなりませんが、その際には単なるあこがれや思いつきではなく、ある程度自分の適性や希望する方向を検討し、その可能性を見通したうえで目標を設定する必要があります。そのためには、中学高校の6年間をただ漫然と過ごすのではなく、「自分はどういう人間か」「自分は何をしたいのか、どんな仕事に向いているのか」などについて考えたり、そのために必要な情報を自分で収集したりすることが求められます。これは当たり前のことです。それなのに、この当たり前のことができていないために、社会への参入にあたって躓く若者が後を絶ちません。それどころか、大学へ入学して初めて学問選択の誤りに気づき、後悔する(退学する)学生も少なくないと言います。

 少し話が飛躍したかもしれません。そこで、「中学高校の6年間」に話題を戻そうと思います。中学高校時代の学びを充実させ、将来の進路選択に向けて選択肢を広げるには、どんな姿勢や能力が必要でしょうか。

 細かい点をあげるときりがありませんが、ざっとあげると上記のようになります。なお、7について若干補足説明をしておきます。何事もすべてを自分でやり遂げることは難しいものです。自分でどうしてもうまくやれないことは、他者の力を借りて解決する。これも自立した人間の一要素だと言われています。

 中学校では小学校とは比べ物にならないほど多くの刺激があり、新入生には一種のカルチャーショックが生じるものです。たとえば部活が始まり、友人関係も格段に広がっていきます。ふと気づくと、勉強がおざなりになっていることもあるでしょう。だからこそ、学びの土台がしっかりしているかどうか問われることになります。

 というのも、私立の中高一貫校の多くは、主要教科の中学課程のカリキュラムを圧縮し、2年間で終了します。3年生になると高校課程へと進みますから、ぼんやりしていると学習の高度化について行けなくなってしまいます。当たり前のことですが、中学校課程の学習内容は、小学校課程の学習内容が発展したものであり、高校課程の学習内容は中学校課程の学習内容を発展させたものです。中学校課程の学習が疎かになると、基礎ができていないために高校課程の学習に支障を来してしまいます。

 こうした状況を踏まえると、中学校進学にあたって欠かせない前提は何かということが見えてくると思います。それが「自学自習の姿勢」ではないでしょうか。ただし、難しいのはまだ心も体も成長途上の小学生の受験勉強ですから、中学生や高校生ほどの見識も自覚も期待できません。そこで弊社では、「小学生の自学自習を可能にするための学習システムと指導」を研究し、弊社の教室に通って受験勉強をする子どもたちの最大多数が一定の水準の成果をあげられるような学習指導の実践に努めています。

 弊社の学習システムを簡単に図式で示すと次のようになります。

 
 わかり易い図がつくれずもどかしいのですが、上図のように、弊社での受験対策は授業と家庭学習を交互に組み合わせた形式となっています。

 小学生の家庭学習が成立するには、「テキストのどこをどうやればよいのか」がわかり易く工夫されている必要があります。そのためにテキストを自社制作しています。あまり難度の高い課題を詰め込むと、子どもの意欲や自信を奪いかねないので、難易度配列には細心の注意を払っています。

 また、予習とは言っても、小学生にできるレベルにするため、テキストの導入部分を読んでくることを予習の原則としています。授業が終わったら、家庭でおさらいと発展的な問題への取り組みをします。

 2週目の後半の授業(授業5)では、授業4までの学習のおさらいをします。そして、その後の家庭学習でさらに2週間学んできたことのおさらいをして週末のテストに臨みます。

 授業と家庭学習、さらにはテストの繰り返しを通じて、子どもたちは少しずつ勉強の要領を身につけるとともに、毎日の学習を定着させていきます。そうして、最終的には決めた勉強をやらずにはいられないほどの、強固な学びの態勢を築いていくことをめざします。

 講座の進行とともに、個々の得意不得意がわかってきます。また、子ども自身が「勉強に足りないものは何か」を理解するようになります。それにしたがって、苦手対策の勉強を家庭で自主的にやるようになったり、先生に質問してわからないところの埋め合わせをしたり、友達に教えてもらって疑問を解決したりするなど、勉強の推進にあたって効果のある方法を段々と幅広く身につけるようになっていきます。

 どうでしょう。詳しく書けばきりがなくなるのですが、ここまでの説明と、先ほどお伝えした1~8の重要ポイントを照合してみてください。概ね意図をご理解いただけるのではないかと思います。

 以上からもおわかりいただけるかと思いますが、中学受験をめざすことの価値は「志望校への合格」だけでなく、「将来に向けた“伸びしろ”を築ける」ということにあるのではないでしょうか。そこが高校受験や大学受験との大きな違いであろうと思います。成長途上の子どもが受験するのですから、将来の大成に向けた備えを兼ね合わせることもできるのです。そのことに着目した受験指導なら害はありません。

 近年、「非認知能力」「GRIT(グリット)」などの言葉が教育・心理学系の書物にしばしば登場します。非認知能力とは、その言葉の通り認知できる能力(テスト学力やIQなど)に対して認知できない能力を指します。たとえば、忍耐力、継続力、実行力、リーダーシップ、他者を思いやる能力、などです。「グリット」は日本語で「やり抜く力」などと言われます。これも非認知能力の一要素でしょう。どんな困難な状況にもへこたれることなくものごとをやり抜いて行ける力を言います。これらの能力は、実社会でレベルの高い仕事をやり遂げるための推進力になるものです。学力を身につけることは当然必要なことですが、それだけに終わってしまった人間は、今日の社会では通用しません。

 子どもたちがこうした能力を携えた人間に成長するためにも、受験合格だけに偏重した勉強を小学生にやらせる(・・・・)のではなく、自ら(・・)学ぶ(・・)姿勢を身につけられる受験勉強を経験することが求められるのではないでしょうか。弊社はまだまだ力不足ですが、少なくともめざしている方向は間違っていないと確信しています。自学自習の姿勢を備えての入試突破は、21世紀を生き抜いて行ける人間になるための、古くて新しい最善の方法なのです。

 随分長い文章になってしまい申し訳ありません。以上のような弊社の中学受験指導にご賛同いただけたでしょうか。これからお子さんの受験が始まるご家庭におかれては、ぜひ弊社に貴家のお子さんを預からせていただきたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

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カテゴリー: アドバイス, 中学受験, 家庭での教育

これからの時代の中学受験のありかた その1

2019 年 12 月 11 日 水曜日

 今回は、お子さんの中学受験を視野に入れておられるご家庭に向けた情報をお届けします。主として「中学受験の役割や意義」、「これからの時代の受験勉強はどのようなものであるべきか」について、弊社の考えをお伝えしたいと思っています。もしも保護者の方々の方針やお考えと、弊社のそれとが一致するなら、ぜひ次年度講座への入会をご検討いただきたいと存じます。

 早速ですが、「中学受験を思い立たれたきっかけは?」とお尋ねすると、みなさんはどうお答えになりますか? おそらく様々な答えが返ってくることでしょう。一般的に言って、最も多いのは「周囲に中学受験の経験者がいたから」というものです。きょうだいが経験されたことや、親戚やお知り合いに中高一貫校に通うお子さんがおられたこと、近隣に私学通学生が多いなどですが、環境のもつ影響力には大きなものがありますね。

 次は塾選びについての話題です。近年は親自身が経験者であるケースも少なくありません。そのかたが家庭学出身であれば、迷うことなく「わが子も家庭学へ」になるのかと思いきや、なかなかシビアな目で塾選びをされているかたもおありです。わが子の将来に関わることですからしかたありません。

 驚いたのは、「うちの子が生まれて以来、家庭学のチラシは全てファイルしています」というおかあさんがおられたことです。「指導方針がブレないか、一貫性が継続されているかどうかを確かめようとした」のだそうです。これには「ありがたい」と思うと同時に、冷や汗が出るような思いを禁じ得ませんでした。幸い、3年生の終了時点で「ブレなかった」と判断いただき、お子さんは晴れて家庭学に入会され、入試でも第一志望に合格されました。やれやれ。

 極端な例をご紹介しましたが、弊社にお子さんを預けてくださる理由でいちばん多いのは、前述のように「指導の方針が、親の考えと一致しているから」というものです。弊社が50年余りも世知辛い塾業界で生き残って来られたのは、「学習指導の方針が保護者に受け入れられたからだ」と、筆者は思っています。

 ご存じかも知れませんが、弊社のチラシは「メッセージ性」を重視しており、合格実績の表示は控えめにしています。それは、経営者の次のような指示によるものです。「私の考えるチラシの役割は、どのような方針で学習指導に当たる塾かを、わかり易く保護者にお伝えすることだ。合格実績に目を通さない保護者はいないのだから、大きなスペースを割く必要はない」――この考えは的を射たものだと、今でも筆者は思います(塾のイメージは地味になりますが)。また経営者は次のようにも言っています。「合格は子ども自身の努力によって得たものだ。学習塾は、その手伝いをしたに過ぎないのだから、自分の手柄のようにアピールすべきではない」と。これも確かにその通りだと思います(これまた、塾のイメージを地味にしてしまうんですね)。

 保護者は、それぞれ塾選びの目安にする“ふるい”をおもちだと思います。何を重要視されるか、何をふるいにかけるかはみなさん違います。ここまで筆者がお伝えしたことに、あまり価値を見出されないかたがおありでも、決して不思議ではありません。

 さて、次は中学受験の特殊性に話題を移します。中学受験の最大の特徴は、受験勉強のイニシアチブが大人にあるということです。受験生が大人のような知識や判断力をもち合わせていない小学生だからです。難関校への受験となると、求められる勉強は質量ともに半端なものではなくなります。そこで問題となるのは、勉強にかかる負荷の匙加減です。それを大人が適切に判断してやらないと、負担が過度になるだけでなく、子どもの健全な成長にも影を落とす危険性があります。

 どういうことかというと、受験準備にあたる時期の子どもは、ちょうど人間としての個性が形成される段階と重なります。この成長の節目において、子ども不在の過重な勉強を強いると、勉強への歪んだ考えを染みつかせてしまいかねないし、やらされ勉強を続けることで自律性を欠いた人間に育ってしまいかねません。弊社は、その危険を冒すほどの度を越した勉強で受験をすべきではないと考えています。「どんな受験勉強、どんな受験生活を経験したか」が、「どんな考えや行動様式をもった人間になるか」と、密接につながっているということを忘れないでいただきたいですね。

 無論、特別能力の高い子どもや、早熟タイプの子どもは、そういう過酷と言えるほどの勉強を難なくやりこなしてしまうケースもあります。しかし、皆が皆そういうわけにはいかないのも事実です(大切なわが子です。「うちの子は大丈夫」と決めつけないで、慎重に判断を)。

 次は、中学受験の真の目的について考えてみようと思います。「受験の目的とは何か」と問われたなら、みなさんはどうお答えになりますか? おそらく、「○〇中学にわが子を行かせるため」といった返事よりも、「よりよい学校環境を求めて」のことであり、「高いレベルの教育を受け、将来の人生設計における選択肢を幅広いものにするため」、あるいは「将来の夢を実現させるため」といったような将来的な視点に基づく返事をされるかたが多いのではないかと思います。少なくとも言えるのは、めざす中学に受かりさえすれば、後はどうでもよいと考える人など一人もいないということです。

 弊社の中学受験指導における基本理念は、「子どもの望ましい成長に資する学習指導を実践する」というものですが、これは前述のような大多数の保護者の願いを汲み取って生まれたものです。中学受験対策の勉強は、目先の合格だけにこだわってはいけない。子どもの将来の大成を視野に入れたものであるべきで、日々の勉強の積み重ねが子どもの血となり肉となって人間の器を大きくしていくものであるべきだ、という考えに基づきます。具体的にはどういった指導をするのかについては、本HPにある程度詳しくご説明しています。また、案内書をご請求いただいたなら、より詳しい情報を確認いただけますので、よろしくお願いいたします。

 さて、まだお伝えすべきことがたくさんあるのですが、だいぶ文字数が多くなってしまいましたので、今回はここで終わられていただきます。続きは次回お伝えしようと思いますので、よろしくお願いいたします。

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カテゴリー: 中学受験, 入塾について

学院と清心の先生をお招きしたイベント 実施報告 2

2019 年 12 月 2 日 月曜日

 前回に引き続き、11月15日(金)に実施したイベント、「学院と清心 素顔の魅力がここに!」の内容をご紹介します。

   本ブログはいつも文字数が多いのですが、今回のような催しの報告文を書くと一層長くなりがちです。「こんなに長いと読む人は少ないだろう」と思ったのですが、いざ掲載してみるといつもより多くの閲覧があり、「後半もがんばって書こう」という元気をいただきました。読んでくださったみなさま、ありがとうございます。

 今回は後半に割り当てていた二つのプログラムの内容をご紹介します。まずは、第3部の「学院・清心で過ごす6年間と未来」から。題目からおおよそプログラムの意図はご理解いただけると思います。広島学院とノートルダム清心で過ごす6年間の学校生活を通じて、生徒さんたちはどのように成長を遂げるのか。そして、この学校での成長は、未来に向けてどのような可能性をもたらすのだろうか。このことについて、先生がたに語っていただきました。以下は、広島学院の倉光先生、ノートルダム清心の神垣校長のお話を簡単にまとめたものです。

★広島学院

 入学したての頃の生徒は、自分のことに一生懸命です。「〇〇君を成績で負かしたい」といった具合です。「社会のため他者のため」という意識は未熟で、価値観に大きな隔たりがあります。そこから6年間かけて子どもは成長し変わっていきます。

 思春期が訪れ、母親を「クソババア!」と言って反発しながらも事なきを得て、高校生になった頃には随分大人になっている。そこが高校受験のない中高一貫校のよさの一つでしょうか。6年の間紆余曲折を繰り返しながら成長していくことができるんですね。

 最近、「発達障害」という言葉が流布しています。酷い言葉です。この病名にショックを受け、親が心配するケースが多いです。アスペルガーなどの言葉を突然言われると親は動転します。こういう病気に当てはまるかどうかを確かめるチェックリストがありますが、学院生にも結構当てはまります。個性とみるか、病気とみるか、その判断は簡単ではありません。「キモイ」と言われて病気扱いされることと、「すばらしい才能をもっている」と賞賛されることとが紙一重だったりもします。

 東京の有名私学の校長先生は、「男子校はオタクの楽園である」と述べておられます。学院生も自分たちのことを「変人の集まりだ」などと言って笑っていますが(筆者:優秀であるということは尖がっているという側面もあるんですね)、自分の好きなことや興味の対象にのめり込みながら、そうした活動を通じて自分の個性を伸ばしていけることが、男子校である広島学院のよさです。

 広島学院には各学年にILプログラムという授業があります。そこでの学びのテーマは、「どうやって人の役に立つことができるか」です。たとえば、高2のILには沖縄を歩くプログラムがあります。沖縄の人たちが沖縄戦で追いつめられていったプロセスを、実際に自分たちで歩いて確かめていきます。過酷なプログラムですが、そこまでやって初めて戦争の凄さを実感することができます。途上国のことを調べる。すると、貧しくても明るくニコニコしている人々が大勢いることに驚きと不思議を感じます。その理由は何だろうと考えることで、人間についてより深く学ぶことができます。

 以上は学院の6年間で学べることのごく一部ですが、こうした学びを通して己を知り他者に思いを致す人間へと成長していくことができます。そうして、自分の進むべき方向性を定めていってほしいですね。どこの大学かが6年間でめざす成果ではありません。

★ノートルダム清心

 一般に女子は男子よりも個性の開花が早いものです。中1で女子校に入ると、まずは自己の確立ということが成長のテーマになります。入学時に、「なでしこノート」と呼ばれるスケジュール帳を配布します。日々の活動の様子を自分の手で書き記すことで、段々と自分というものが見えてくるんですね。

 自己の確立にとって、友人や先輩との交流は大きな影響をもたらします。特に、クラブ活動や学校行事などで経験するお姉さん(清心では先輩のことをこう呼びます)との交流は、めざすべき自分のロールモデルになります。たとえば、学園祭の準備をする際に、運営にあたる先輩の様子を見て多くのことを学んでいきます。まだ子どもの中学生の段階で、大人のような高校生のお姉さんと交流できる。中高一貫校のよさはこういうところにもあるんですね。

 今、清心では校舎を改装し図書館の設備を充実させています。1フロアが全て図書館として利用されます。より多くの生徒が自由に図書館を利用できる環境を用意することで、自分が興味をもてるものとの出合いが増えることを期待しています。

 先ほど述べましたように、入学してからの当面の目標は自己の確立であり、まだ自分自身のことに意識が向いているのが普通です。しかし、勉学に勤しむ日々の積み重ね、友人やクラスメート、先輩との交流、キリストの教えについての学び、興味をもった書物などを通して少しずつ成長し、「~のために」という他者への思いや、自分の進むべき未来に向けた志を育ててほしいと願っています。女子のみの私学ですから、自分の素が出せる環境にあります。そのことも、一人ひとりが学問に打ち込んだり、人となりを磨いたりするうえで貢献していると思います。    (  中 略  )

 清心で過ごす6年間においては、「人の中に入り、人に仕える」という心もちを大切にし、そのなかで将来の方向性を見つけてほしいと願っています。

※お詫び:第3部においては、行事進行上の都合でしばらく退席をいたしました。神垣校長のお話の終盤を割愛しております。ご容赦ください。


 第4部は、「学院・清心アラカルト」と題するプログラムを用意しました。広島学院と清心について、保護者がお知りになりたいのではないかと想像することを、弊社から先生がたに質問という形で投げかけ、その場で答えていただくという趣向のコーナーです。たくさんの質問を用意し、先生がたにテンポよく答えていただくことで、保護者に「知りたかったことがたくさん聞けた」と満足していただける、楽しい時間にしたいと考えて企画しました。

 しかしながら、時間的なしわ寄せが最終プログラムにはつきものです。今回も開始の段階で予定していた時間の半分も残っておらず、質問はわずか2つしかできませんでした(誠に申し訳ありません)。それでも、先生がたは心のこもった回答をしてくださり、保護者も聞き入っておられました。

回答(学院・倉光先生) 一説によると、入試が終了して一週間後にもう一度入試をしたら、合格者の三分の一は入れ替わるそうです。入試とはそれだけ厳しいものです。保護者におかれては、そういうこともご理解いただき、受験を生かすも殺すも親の対応次第なのだということを肝に銘じていただきたいですね。結果が全てではなく、入試の経験を次にどう生かすかで人生は随分変わっていきます。子どもの心に傷が残らぬよう配慮することが何よりも大切です。

 合格の掲示をしていた15年位前のことです(現在は、ネットで合否はわかります)。誰もいなくなった時間に掲示を見に来られた親子が目に入りました。先に掲示を見たお子さんが、おとうさんに両手でバツ印の信号を送っていました。残念な結果に終わったようでした。その後、思いがけない光景を目にしました。受験生の子どもとおとうさんが並んで、校舎のほうに向かって一礼して立ち去ったのです。こういう親子なら、受験の結果がどうであろうと心配要りません。きっと、また努力を続けてよい人生を歩んでいけるでしょう。

 学院の入試で合否の決め手になるのは何かというと、第一は算数で、次に国語だと考えられます(配点も算国重視)。算数Ⅰは「すばしっこさ(頭の回転)」をみます。算数Ⅱは、「じっくり考えて解を引き出せる力」をみます。両方をバランスよく鍛えておきましょう。

 なお、学院入学後、高2で文理選択をしますが、理系が130名、文系が50名ほどです。半々ぐらいが望ましいと思うのですが(筆者:先生からはおっしゃいませんが、医学部志向が強い学校なので、先々もあまり変わらないように思います。前回掲載したアンケートを参照ください)。

回答(学院・倉光先生) 学院の敵はスマホだと思っています。生活の乱れや授業で眠るなどの原因はほとんどがスマホです。合格のご褒美として渡したりすると、たちまち手放せなくなります。思春期になるとのめり込み、堪らずに取り上げようとすると、狂ったように反抗します。「入ったら遊べる」などのインセンティブを与えると、優秀な成績で入った子どももダメになってしまいます。入学式がゴールになった子どもは、後の指導が大変になります。

 「塾辞めたら?」「受験なんてやめたら?」――こんなふうにおかあさんに言われたら、子どものやる気を喪失させてしまいます。先々もよい親子関係の下で伸び伸びと学ぶことができません。おかあさんの禁句は次の3つです。

・命令文…「しなさい!」
・疑問文…「勉強終わった?」
・付加疑問文…「勉強終わったよね?」

 3つ目がなぜ禁句かというと、この言葉に皮肉が感じられるからです。子どもはちゃんと感づいてしまいます。「あなたならちゃんとやれるよ!」と、子どもを信じて励ましてあげてほしいですね。そうすれば中学校に入ってからも大丈夫です。

回答(清心・神垣校長) おとうさんおかあさんが、受験生活を送っている今を大切にしてほしいですね。ただ「勉強がんばって!」だけではなく、受験生活を送っている毎日も親子関係を通して子どもは様々なことを学んでいます。毎日の生活を大切にする親の姿勢は、子どもにとっては「親が大好き」につながります。それが中学生になって、新しい世界にとけこみ馴染みながら成長していくための糧になるのだと思います。おとうさんおかあさんにおかれては、「今、子どもを育てているときこそ、かけがえのない時間なのだ」ということを心に留めていただきたいです。

 

 以上で、広島学院・ノートルダム清心の先生がたをお招きして開催したイベントの報告を終わります。簡単なメモをもとに書き起こしたので、聞き漏らしたことや、記憶があやふやだったり、理解不足だったりしたことが原因で、適切でない表現をしている箇所があるかもしれませんが、「誠意をもってご報告しよう」という趣旨に免じてお許しください。

 なお、質問1での神垣校長の回答は省略させていただきましたが、「受験生活においては、勉強一辺倒に偏らず、“学習習慣”や“生活習慣”といった点も大切にしてほしい」と言われていたことを、ここで申し添えておきます。このことは、2つ目の質問の回答にもつながるでしょう。よい習慣こそ、新たな学習環境、より高度な学びの領域に適応し、努力を継続して成果をあげるうえで必須となるものだからです。

 先週・今週の記事が、広島学院と清心を理解するうえで参考になったなら幸いです。最後になりますが、広島学院の倉光先生、ノートルダム清心の神垣校長、ありがとうございました。

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カテゴリー: 中学受験, 家庭学習研究社の特徴, 私学について, 行事レポート